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ハンチング帽に見る父の亡霊。


年明けに父が亡くなって、何かにつけて父のことを思い出してしまう。

駅の改札を出たところで、父とはよく待ち合わせをした。年のわりにお洒落だった父は、会うたびに違うハンチング帽をかぶり、真っ赤なブルゾンを好んで着ていた。いつかの誕生日プレゼントも、ハンチング帽だった。

だから、電車を降りて、ハンチング帽にブルゾンを着た老人を見かけると、ハッとしてしまう。

そして、ちょっと思ったのだけど、似たような恰好の老人が結構いる。わんさこいる。あの老人も、こちらの老人もみなハンチング帽。

──流行っているのか…?


老人のトレンドはどうであれ、とにかく、ハンチング帽を見ただけで今のわたしは、時間が止まったようになってしまうのだ。

「あぁ、ちょっと前まで元気だったのに…」

そんなことを思いながら、今日もすれ違うハンチング帽の老人を見送る。

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