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ho2y
あおがく優勝だってよ!
父と箱根駅伝を見に行くのは、ここ数年、正月の恒例行事になっていた。
わたしはスポーツはあまり興味がないし、得意な方でもない。だから、父と野球の中継を見たり、サッカーの話題をするのはいつも姉の役割だった。
それでも、駅伝だけは違った。
駅伝のコースの近くに住んでいるから──
そんな理由ではあるが、唯一、箱根駅伝がわたしのスポーツとの接点であり、一緒に見に行くのが親孝行になって(少なくともわたしはそう思って)いた。
そういうわけで、箱根駅伝には思い入れがある。年を越せるかどうかという様子の父に、どうしても箱根駅伝を見せてあげたかった。それなのに、今日はずっと目を瞑ったままだ。
中継を見ながら順位を告げても、まるで興味がないかのように寝ている。
ほんの一年前は沿道で手を振って、スマホで中継を見ながら応援したじゃないか。目の前を選手が走り去った後は、決まり事のように飲みに行き、続きを呑み屋のテレビで食い入るように見ていたというのに、今日は目すら開けない。
仕方がないから、耳元で叫ぶ。
『あおがく優勝だってよ!!!!!』
フゴッと大きく呼吸をすると、父は再び眠りについた。