見出し画像

これでいいのだ、我が家のご仏前スタイル

チーーンして、

ナムナムして、

ちぃーーーッス。


これが我が家のご仏前スタイルだ。


早いもので父の介護生活の卒業を迎えてから2ヶ月が経った。コロナ禍のおり、葬儀の日程はスムーズに取り決めることができず、約10日程の時間を置いて父は荼毘に伏された。

だから、まだ何となく2ヶ月という月日が経ったようには思えない。それでもリビングに鎮座するお骨は、まるで昔からあったようにそこに馴染んでいる。左手にフィギュア、右手に観葉植物を抱えて。


お骨には、骨壺を覆う桐箱の、そのまたカバーがある。納骨までしか使わないものだが、カタログを見せられて「プラス○○ 円ですと、ホニャララ織りの…」なんて言われたら、それが良いように思えてくる。葬儀屋に言われるがままに、水色の抽象的なホニャララ織りのカバーを選んだ。

初めのうちこそ、父親のお骨の圧倒的存在感に居心地の悪さを感じたものの、カバーの明るい雰囲気も相まって、リビングに置いてもさほど違和感を覚えることはなくなった。

そんなある日、友人Mが我が家にやってきた。若い時からの付き合いで、月に1回はキャンプに行く仲間だ。

お骨が鎮座していることなどすっかり忘れていたが、友人Mに「あ、これ親父さんのお骨?」と問われて、思い出す。まだお墓も決まっていないときだったので、少々のうしろめたさを感じながら『あ、そうそう』と頷く。しかし、さすがは若い時からの付き合いだ。お骨を前にしても、湿っぽい空気にはならない。

友人は持参したビールをテーブルに置くと、遺影に向かって

「ち~~~ッス」

リビングのインテリアと化した父のお骨。ビールを片手にテーブルを囲むわたしたちを、今日も見守ってくれている。葬儀屋がおすすめしてくれたホニャララ織りのカバーも、悪くない。

いいなと思ったら応援しよう!