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ニンニク喰わして父、何思ふ

両親が離婚したあとの父との2人暮らし。夕飯は、飲食店のアルバイトでまかないを食べることがほとんどだった。とは言っても料理好きの父のこと。気が向けば料理を振る舞ってくれた。

ある日の晩。酒呑みの父はご機嫌でニンニクの素揚げを作り始めた。部屋に漂う香ばしい香りに、うら若きわたしはついつい誘われた。

素揚げしたニンニクは、まるでじゃがいものようにホクホクとして美味しい。甘辛い味噌を付けると、尚美味しい。

──その夜、うら若きわたしはデートの約束があった。

待ち合わせの時間になり、彼が車でやってきた。車に乗り込むと、彼はこう言った。

『降りろ!』

そりゃそうだろう。
ニンニクの素揚げを、丸ごと1個食べたのだから。

早々にデートから帰ってきた娘を父はどう思っただろうか。もしかすると、『してやったり!』だったかもしれない。


──飲み屋街を歩いていると漂ってくるニンニクの香り。うら若きわたしの苦い思い出がよみがえる。


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