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日々の徒然

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父の介護のこと、亡くなってからのこと、わたしのこと。末期がんの父を自宅で介護していた日々を綴っています。
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#余命宣告

味覚ブルース

味覚ブルース

味が落ちたのか
俺の舌が落ちたのか──

うなぎを食べて、そう呟く父の背中には哀愁が漂っていた。

今日はただそれだけの話。

あおがく優勝だってよ!

あおがく優勝だってよ!

父と箱根駅伝を見に行くのは、ここ数年、正月の恒例行事になっていた。

わたしはスポーツはあまり興味がないし、得意な方でもない。だから、父と野球の中継を見たり、サッカーの話題をするのはいつも姉の役割だった。

それでも、駅伝だけは違った。

駅伝のコースの近くに住んでいるから──

そんな理由ではあるが、唯一、箱根駅伝がわたしのスポーツとの接点であり、一緒に見に行くのが親孝行になって(少なくともわた

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【末期がん】残された時間、家族は

【末期がん】残された時間、家族は

昼ごはんに合わせて実家へ行って、昼ごはん、夜ごはん、次の日の朝ごはんを用意する。

父が退院してからのわたしの生活はそんな感じだった。

しかし、退院して2ヶ月になる頃、急激に食欲が落ちて、果物をときどき食べるくらいになった。

目を覚ますことも少なくなってしまった。

洗濯が終わると、特にすることはない。できることと言ったらときどき父の体の向きを変えて、床ずれができないようにするだけ。

──こ

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