#訪問介護
柿の実のなる頃に【介護回顧録】
高級フルーツ店の柿は
思っていたよりも美味しくなかった。
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去年の今頃、わたしは父の介護に奮闘していた。
奮闘といっても
食欲旺盛な末期がんの父に食事を作るのが
主な役割だった。
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投薬のせいか、父の味覚は鈍化しているようだった。
手の込んだ料理を作っても
「まぁまぁ」と言う。
旬のものを食べさせても
「おいしくない」と言う。
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そしてついに出会った。
赤々と熟れた
父と食べた寿司の味。一人で食べる寿司の味。【介護回顧録】
生前、父とはよく寿司を食べた。味にうるさい父のこと。高級店とまではいかなくとも、足を運ぶのはいつもそこそこの高級店だった。注釈をつけるなら、”回転ずしに行ったこともあったが、手を付けるのはビールと茶碗蒸しだけ”であった。一緒に行ったこちらの身にもなってほしいものだ。
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父が亡くなって5カ月。わたしは寿司を食べた。あぁ、もう5か月かという思いと、まだ半年も経っていないんだという不思議な