
見つけたい5
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「ヒデです!こんにちは!!今回のお話は、だいぶ前ですね・・、まだ俺たちが生まれてない頃・・よっちゃんとトシ君が二人だけのメンバーしか残らなくなってしまったX JAPAN・・でのお話です。」
「これまで本編では、軽くね・・ホントにかるくだけ触れていたんだけど、実際には・・掘り下げてお話できてなかったお話を披露するということで。・・どういう流れでこうなるん?」
「・・恐ろしいことに突然始まるの。」
「・・・いつも通りな気がするわ。」
「・・まぁそのために俺たちいるようなものよ?ほんとに。」
「まぁ冒頭でこういう説明しとかんと・・いきなり本編読んで、どこ喉の話か分からんって・・絶対なるからねぇ~・・」
「そうそう。これはまだね・・二人の気持ちが寄り添いもせず、本当に目まぐるしく忙しかった時の話だけに、”気が付かない”って事が元凶で、まぁ色々”撒き盛られる”のんだって。」
「・・巻き込まれる・・な?言い間違いが凄いのよ・・相変わらず。」
「ではどうぞ~!」
side:Yoshiki
LAに居ながらにして、息子二人がいないこの状況にまだ慣れないボク。
トシは、もう慣れてるのか、ソファに打つ伏せて本を読んでた。
相変わらずあの小説か二人の作品が好きらしく、かなり読み込んでいるようで、この時は、全くこちらのことなどお構いなしだ。
トシがこの家に始めてきたときは、僕の機嫌をうかがってばかりいたというか・・預かり猫のようなような状態だったというのに。
でも‥そうさせたのは・・・ボクなんだ。
あの頃・・本当にまだ若すぎて、この芸能界の事なんて全く分かってなかった。
そのせいで苦しんだのがトシだった。
トシの人の好さ、まじめさ、そして屈託のない明るさ。
それに反して、慎重で警戒心が強いから、滲め出てしまう疲労。
それを曝け出させたのがボクだった。
読書に夢中になっているトシの背中を見て思い出した20年以上前の記憶・・
あの頃は5人のメンバーで動いていた。
それでいいのかどうかは、さておき、目指す場所は付出に決めているからこそ、その準備はどうしてもしておきたくて、俺は・・時折LAに足を運ぶようになった。
都内の事務所だってまだ小さく、人手が少ない。
それでも外国人スタッフは何とか用意できている。
向こうでも伝手もできたので、動くのはさほど問題はなかった。
後は現地で探せばいい。
この時の俺は、正直言って、X JAPANの活動よりもそっちに意識を向けていて、全く自分のメンバーの事なんて気にもしていなかったんだ。
LAでの話が具体的になればなるほど、話を詰めないといけないことも多くなり、いちいち帰国するのも面倒になった為、それぞれソロ活動という名の自主活動で動いてもらっていた。
話によると、このころトシも自分の事務所を構える準備ができたので動き出していたし、表立った活動はお互いできそうになかったこともあったから。
これまではレコード会社も外注で出して、レコーディングもスタジオを借りていたが、金額がかさんだんで、まずはスタジオは都内に用意した。
今回LAでは、レコード会社も一緒に準備することにしている。
音源を出すのに、機嫌をいちいち決められて、順位まで期待をかけられていたんでは、はっきり言って仕事の邪魔になる。
自分で決めて動けるのがどれだけ大変でも、仕事は好きしたい一心でそう決めた。
そうなると、元あった場所を買い取るのもいいけど・・新しく土地を買って一から創り上げる方がいいだろうってことで、その土地探しをするっことから始まることになった。
この辺りの話は国内にいても話は進んでいくんで、土地を見に来るだけでよかたんだ。ただここから先は、突然の打ち合わせが入ったり、急な変更が出てたりしてどうしても顔を合わせて話さないとって事も多くなった。
なんせ・・まだまだ不便な世の中だったから。
国際電話を2時間もしようものなら飛行機飛ばした方が安上りというほどの時代だった気がする。
なので、家も決めて、そこに住まうことに決めた。
ある時どうしても、トシにはこっちで生活できるだけの準備はしてもらおうと連絡を取ってきてもらうことにしたが、一行に繋がらないということが起きた。
誰がいつ連絡しても連絡がつながらず、仕方なく都内のスタッフに直接トシの会社に出向かせた。
それで漸くトシと連絡が付いた。
今のボクだと、ここで何か変だと気が付くはずが、あの時は本当に自分のことだけで精一杯だったんだろう。
目的がすぐに達成しない事が兎に角腹立たしく、”すぐに来い”とだけ言って電話を切った。
・・これなら出向いた奴に伝えれば済む話だったのに・・
来米したトシと会うなりすぐに、ここでの住処を決めるようにと、課題を出して俺はすぐに別の場所へ移動した。
それから半年の月日で、最低限必要な場所は、準備できたんで、レコーディングを・・と思ったが、ここでまた問題が浮上。
漸くトシもと、まともに話ができるだけの気持ちの余裕ができたボクは、トシに、メンバーを集めるようにと指示を出すと・・トシがボクの会社の電話を使って連絡をしに行って戻ってきた。
そしたら、集まれるのは3人。
他の二人は・・来れないという返事が返ってきた。
どういうことかというと、他のソロの仕事を入れたからと。
なんとなく嫌な予感はしていた。
このメンバーで国内で有名になることはできたとしても、世界を相手にできるかどうかは疑問だったからだ。
とりあえず来れるという3人だけを呼んできてもらうことにした。
5人いて、3人が来る・・・つまりいなくなったのは?
「トシ君・・3人くれば全員いるんじゃないの?」
「・・マネージャも含めた人数。それと俺らも含めて。」
・・・どういう考えをしてそういうのか全く理解できない・・
あのときはその腑抜けた回答に頭にも来たんだけど、余りにも平然と言うから、怒りの言葉も出なかった。
ただ・・今だからこそわかる・・あのときすでにトシは、可笑しくなっていた。
天真爛漫で、凄く穏やかなトシ。
器用そうに見えず、実は、物凄く頭の回転が良く判断力も優れている。
それがそうなってなかったんだ・・・
判断力が乱れ、凡ミスが・・ああいう形で現れる。
それを知ったのは・・実はあの時が初めてだった。
つまり、あの時の俺は、知らなかったんだ。
トシにそういう一面があるなんて。
マネージャはこの時、付いていた。
ただ・・会社が変われば、そのマネージャも必要なくなる。
呼び出す必要があったのかどうか・・・その話を俺はトシにしていなかったから、必要だと思いよびだすことにしたんだろうな。
そういう手回しはできていたから、何も不思議には思わなかった。
なんだかんだ在りながらも、ギリギリでこのメンバーで何とか出来ていた。
楽器隊は一人だけやってきた。
これでレコーディング・・まぁ・・あとの連中のは別にして音と、入れするしかないと決めて取り掛かることにした。
出来上がったばかりのスタジオだけに、どういう音響になるか・・分からないってこともあったから。
計算しつくされて作られたものの、やはり実際に使ってみて、微調整も必要だろうという覚悟はできていた。
因みにこのスタジオも会社も完成してるわけではなく、どうしても先に必要なところだけ、早めに仕上げさせた。
だから、一階から三階まであるこのスタジオだけど、二階のスタジオだけ先に作らせて、後はまだ作業中。
完全防音の扉が付いているから工事中でも響いてこない。
そこは完璧だわ。
少しでも音が漏れようものなら、取り換えるように指示を出そうと思っていたんだけど。
「・・ヨシキ・・この扉・・超セキュリティー付きの金庫用扉じゃないよね・・ここまで重たいのは・・。」
そう感じるほどのものなんだよな・・・実は。
俺も重いと思ったもん。
「それで、工事中の音漏れがするようなら違うものと変えろっていうけど、音漏れてこないでしょ?それでいいよ。」
「・・・」
無言で自分の席に向かうトシ。
今はミーティングルームもまだできてないから、打ち合わせも何もかも、ここだった。
「・・・あれ・・他の人は?」
「帰ったよ。音入れ終わらせたらすぐに。」
「日帰りで来たの?」
「ホテル。明日帰国じゃないか?もう全部終わったし。あいつのは。」
「はやっ・・」
こだわりたいのは、ボーカルだから、楽器隊はそれに合わせればそれ良い。
それ以上求めるのは、正直無理があると感じた。
はっきり言って、このメンバーでの世界進出は限界が見えている。
「それでさ・・トシ・・あいつに話したんだけど、脱退をした貰うことにした。」
「!!?」
なにかに集中していたようで、机に向かっていたが、この言葉で顔を向けてきたトシ。
相変わらず表情は変わっていない。
「そう。」
それだけ言ってまた手許に目を伏せた。
「・・聞かないの?なんでって・・」
「・・世界進出できるだけの実力があるわけじゃないと分かったから。あとは・・他のメンバーとのコラボもしていて、音がぶれまくっているから。」
見抜いてたの・・・。
「ただ・・あれだけの顔の広さがある人だから、メンバーにしておいても悪くないと思ってたんでしょ?先輩にも顔が聞くし、うまく取り繕うことができる能力もある。国内制覇するには彼のキャラクターは申し分がなかった。それにテクニックだって国内では間違いなく認められるギタリストだよ、彼は。ただ・・世界を目指すには、限界があったから切った。」
「そういうことだよ・・・よくわかったな。」
「・・切っておいてよかったかもしてないな・・」
まさかその言葉が、今後につながる深い意味を持つことになってるなんて知りもしなかった。
side:Yoshki
ボーカル撮りじゃないんだから
トシを呼ぶことはさせないつもりでいたんだけど、都合が付いた残りの楽器隊二人が来米したその日・・すでに3か月たってたけど、音入れに来させた。
その日、2階の別の部屋、数部屋にピアノが入ることになっていて、その調律をトシに頼んでいた。
別に見世物するつもりがないピアノたちなので、中古だ。
スタンドのものもあれば、小型グランドピアノもある。
一階にも置いておくものもあるが、そこの配置などは・・スタッフに任せることにした。
歩くのに邪魔にならないところなら通路に置いて注文をしているだけに留めた。
それで、今はそのレコーディング中なんだけど・・。
集中できない俺・・・。
原因は分かってた。
「お前ら!やる気あんのかよ?!」
こいつ等・・音めちゃくちゃになっていたからだ。
手を抜いた演奏というにしても勿体ないくらいの出来の悪さ。
音響の問題ではなく、聞くに堪えないレベルになっていて、集中が切れた!
「!!!?」
そこに運悪く入ってきたのがトシ。
投げつけたのは、俺が持っていたペン。
運悪くトシの方に向かって行ってしまって、瞬時に避けてくれた。
・・ごめん・・・
言葉にはならなかった。
工具を使っていたらしく、不要なものは、機械室に置いて行っていたからそれを取りに来ただけのトシが、不運にも餌食に・・・。
「・・・ヨシキ・・今日は、この後、光樹社長が話しあるって呼ばれてるから会社にもいくの。それまでに二台は完了しそうだから、それだけしたら行ってくるね。荷物このままにしておいていい?また戻ってくるから。」
「ああ・・分かった。」
・・今のこの状況については・・何も言わずに、機械室から出て行った。
・・・見えてなかったわけではないよな・・さすがに。
それで、スタジオにいる、二人に目を向けて、話を続けることにした。
トシが戻ってきた。
静かに、機械室の扉を開けて、顔を先に覗かせてから、そうっと。
それで、スタジオの椅子に腰かけた。
「・・・・」
・・・
「・・・」
・・・
「あれ・・・みんなは?」
何も話すことがなく、俺も自分の作業に集中していた。
そこへ・・静かに呟いたトシの声を俺の耳が拾った。
・・待ってたのかよ・・皆が戻ってくるの・・
この階の中では一番広く作らせたこのスタジオ。
そこに仮眠もできるロングソファを置かせた。
そこにトシが移動して座ったかと思ったら、横になった。
・・かなりリラックスしているな・・
本当はそうじゃなかったんだ・・・あの時・・トシは相当疲れ果てていて、まるでLAに逃げ場を求めてやってきたような・・そんな感じだったんだ。
ただ・・あの時は、全然知りもしなった。
そして、ただただ・・トシが横になって寝入ってしまったのを見ているのが僕にとっても至福だったんだ。
横たわったトシに目をやると、目を閉じていた。
ただ目を閉じているだけなのかどうか見に行ってやろうって・・ただのいたずら心で近づいて行くと・・いつまでたっても目を開けなかったトシ。
遂には、ソファーの際までたどり着いてしまって、床に座ると、トシの寝息が静かに聞こえる距離に。
ホントに寝てる・・・
人前では・・布団がないと寝れないのに。
俺が歩いてきても、足音で起きる筈なのに・・。
よく見ると・・目の下にクマ・・??
痣のようにも見えなくはない・・一体どれほど寝てなかったの?
「兄貴!?」
機械室からこもった声が。
あっぶねぇ~~・・
スタジオがから入ってきてたら、この声でトシが起きるところだった。
後期にそこで待てと、軽く手を上げて、待たせ、俺が機械室へ急いだ。
「なに?寝てるから静かにしてやれよ。」
「・・!!ああ‥そのトシのことでなんだけど、しばらくLAで仕事させる。」
「なに?」
「仕事なら色々あるんだよ。これからこっちで活動も考えるなら、トシが先頭切って動いてくれた方がいいだろう。」
「・・それって・・」
「まぁ・・トシの度胸試しかな。世界のステージでセンター切ってくんだから、トシには慣れてもらわないと。な!?」
それだけ言って肩をバシッと叩いて出て行った光樹。
あいつ・・社長業するのはいいけど・・学校行ってのか?
大学へ通いながら社長業している学生は、この国じゃもう当たり前。
光樹もその一人だ。
「・・う・・~ん・・・はぁ・・」
??ガラスの向こう側を見ると・・寝そべったまま、ゆっくりと伸びをしたあと、腕を天井に伸ばして手首を回しているのが見えた。
起きたのか・・あれは・・・
俺ならそのままもう一度寝たりもするが。
トシは、そのまま体を起こして、もう一度腰を伸ばしていた。
見るからに気持ちよさそうな寝起きだな・・
そのあと小さくため息吐いたのが・・俺がスタジオの空間に入ったと同時。
・・俺が入っちゃいけなかったの?
そう思わせるようなタイミングだった。
「・・あれ・・皆は?」
・・・待ってたんだ・・・寝ることが目的じゃなくて待っている間に寝てたわけか。
・・それでまた、置いてけぼりにされたような、寂しそうというのか‥表情がない感じで。
「待っても来ないよ。全員辞めさせたんだから。」
「・・・皆?今日来た二人の事?」
「そう・・それと前回の。」
「そうなんだぁ・・そっか。」
それだけ言って、トシは立ち上がった。
「じゃ・・俺も帰ろう。」
「まった!どこに?」
「え?新しく家を決めたの。そこに。まだ何もないんだけど。明日買い物行こうかなと。それで・・ラジオの仕事もあったり色々光ちゃんが決めてくれて、暫くこっちで慣れろって。」
「お前・・ソロの仕事はどうした?」
「・・・あ・・それは・・」
??
「今は・・こっちに慣れたくてさ?それで・・お休みしているの。このことは光ちゃんにも話してあるんだよ。だから仕事を決めてもらってるの。心配しないで。じゃぁまたね。何かあれば連絡して。明日夜にまた調律しに来るから。」
「だったら・・おいてったら?その工具。」
「・・邪魔でしょ?持って帰るよ。」
「置き場所なら、あるから、心配するな。明日来たら教えるから。」
「そうなの?・・じゃ・・お言葉に甘えるね。ありがと。じゃぁね。」
・・・いつものトシだ・・・
なにもおかしくない筈なのに、なんか気になった。
それで光樹に連絡したが、何も答えなかった。
ただ・・メンバーが去っていったから・・それもトシには会うこともなく。
それが・・原因だったんじゃないかということは行ってくれた。
それでつながらなかった俺。
今思うと光樹は、本当に社長業が向いていたのかもしれない。
トシの才能に気が付き、”何かあった”という異変にも気が付いていたから手を打っていたんだ。
ただ、あの時、光樹だって知らなかった。
トシの身に起きている事なんて。
それでも、光樹は、その時に必要な最善を尽くしていた。
トシはカリフォルニア州の地域での仕事が兎に角増えて行った。
LAではラジオが中心の仕事をしながらそれが話題になり地方番組に呼ばれるようになった。
「ここまで人気が出るとは思ってなかったよ。トシ凄いなぁ。」
「でも・・まだ通訳ありきで・・」
「これから何とでもなるって。」
・・・
・・・
トシと光樹のやり取りを俺は、会社の中で聞いていた。
それで何故か不機嫌になった。
「通訳ありきじゃ困る!今すぐに英語に慣れてもらうからな!!」
「え?!」
これがトシを追い詰める発端になった。
英語が必要なのは当然だった。だけど・・俺は・・やりすぎていた。
あのときはそれに気が付かなった。
番組にもラジオにも出られるのに、通訳通してって・・あり得ねぇだろう。
トシ自身を売りに出してほしいのに、通訳売りにしてどうするんだよ。
そんな思いと・・そして・・光樹がトシに対する期待感がうっとおしく感じたからか・・”トシを商品化”することが目的なっていた、あの頃だった。。
まだまだ完成までには時間がかかるスタジオだけど、少しづつでき上って来ていて、使える部屋が多くなってきたことで、スタッフたちに会かき集めてもらった優秀な英語教育のスペシャリストを10人以上集めた。
本来スタジオですることと言えば歌のレッスン位だが、ここでは英語も特訓させた。
更には、俺が首にした連中が音入れをした、ボーカル撮りも、音楽の特訓ってことで、混ぜ込んで、日永中スタジオにこもらせるという手段に出た。
・・・あの時のトシは・・正直言って・・芸能界に親しい仲間がいなかったんだ・・まだ。
総て”仕事”の結びつきで、友人とは言えない関係性でしかなかった。
そんなトシを、スタジオに閉じ込めて、常にだれかが付いてレッスンばかりに時間を奪われる状況にさせて・・精神的に追い詰められることくらい分かり切っていた筈なのに、俺はそのやり方が間違えているなんて思いもしなかった。
スタジオから抜け出せるのは、仕事の時だけ。
それも迎えの車付きで、誰かが必ず傍に居る毎日だったトシ。
そんな中で、トシに日本から連絡が入った。
一度帰国しろという、トシの長兄からだった。
彼が今の社長だから、聞かないわけにはいかず、仕事は休みということで連絡を入れた光樹。
人気があって仕事が入っているが総てゲスト扱いになっているから、大した支障は出なかった。
ただ・・この帰国がきっかけで、トシとは連絡が付かなくなってしまったのだ。
side:Yoshiki
「光樹!!」
「佳樹?!」
「いつ戻ってくるの?連絡ないの?なんで?」
「まったぁ~!」
!!
「連絡はしているよ。だけど出ないんだ。あいつの会社。」
「え?!」
スタジオで仕事していたり、まだほかにもやること沢山で外に出たりもしていたが、何をしていても、手に付かず、少しでも時間ができれば、コイツに八つ当たりをしに来ていた俺。
「なんで出ないんだよ!誰かいるだろう?話通しせないのかよ?」
「誰も出ないから話もできないんだよ。」
「いったいどうなってんだ?」
「都内のスッタフに頼んで様子を見に行ってもらったが、もぬけの殻の様に、鍵が閉まっていて、明かりもついていなかったんだと。」
「何それ!?」
一体どういうことだよ?
急に父さんなんてありえねぇだろ?
大元の管轄はここなんだって。
幾ら個人事務所とはいえ、あいつは、”X Toshi ”って名乗っている。
であれば、こっちに必ず何かしらの情報提供はしてくることになるっていうのに、それが一切ないって。
「解散したんでもないんだ!ただのソロ活動でなんで?!おかしいだろが?」
「そうはいっても、向こうさんがあれじゃ何も手立てがない。ただ・・来米してからのトシの様子・・絶対おかしかった。」
「は?」
「トシ・・いや・・ミツ兄は、あんなへまをするような奴じゃないんだって。ピアノ調律しておわったピアノをまた調律しようとしたり、トイレの場所が分からなくなって何度も訊いてきたりさ・・絶対なんかあるってそう思ってたんだよ。」
・・・知らない・・・そんなの・・・
「何時から・・?」
「来米してきてからだよ。特にひどかったのは、辞めさせたメンバー全員お名前が出てこなかったんだ。あの人だれだっけ・・って・・なんで来ないのって・・兄貴が辞めさせたことは聞いてからだぜ?おかしいだろ?」
・・・・そんなひどかったのに・・気が付かなった。
「それに気が付いていたから、スタジオ閉じ込めてたんじゃないの?兄貴。」
違う・・・少しでも早く・・英語をマスターさせようと思って。
曲を練習させてたのは・・声出しは・・基本だったから・・・
ただそれだけ。
まさかそんなことになってるなんて知らない。
「どこにいるの?トシ。」
「だから分からないっての!」
「探せよ!!早く。」
まともじゃない・・トシ・・そこまでになってるなんて絶対おかしい。
気が付いてあげられなかった。
ずっといたのに・・傍に居たのに。
なんで・・・?
メンバー辞めさせたこと・・トシはちゃんと理解してくれた。
受け入れてくれたのに・・俺は・・ちっとも異変に付いてやれなかった。
スタジオに戻って一人で機械室からスタジオの中を見てた。
トシがねっそべっていた・・あのソファ・・をずっと。
戻ってこなかったら・・・
突然目の前に見えてきた・・・瓦礫にぶつかって潰れた車の映像。
・・子供のころに寒い真冬の夜・・見た光景だ。
そして・・・一人で白い布に覆われて横たわる父の姿・・・
もう戻ってこなかったら・・・
「・・兄貴?今使える業者全部使って、トシを探してもらえるように手配しているから暫く待って?ただ・・それで予算が・・」
「・・ってくるか?」
「え?!なに?」
俺も・・自分で何を言ったのか・・はっきりとは分からなかった。
「戻ってくるかな・・トシ・・・」
かってに口が動き出す。
思いたくないことが勝手に頭に浮かんできて暗闇が命一杯支配していく。
「兄貴!目を覚ませ!」
「アイツが生きているって言える?これだけ連絡ないんだよ?会社だって誰もいないっていうし。ずっと何も言ってこない。何かあればアイツから連絡する、なのにない!それって・・それってさ?」
「馬鹿なの?!生きてるって信じてやれよ。無事にしてるって!なんでそう悪い事ばっかり考えんだよ?」
「そうなるだろ?急にいなくなるじゃない・・・いなくなったじゃない・・お父さんは・・。」
「・・兄貴・・それでも・・信じてやりなよ。みんなうごいてくれた。絶対見つかるって。」
既にもう4か月近くなる・・つまり一月も音沙汰がない。
誰もトシの会社を見に行かなかったら・・気が付かなかったんだ・・・
「俺の・・せいかもしれない・・」
「はぁ?」
スタジオにこもりきりになっていると何を考えるかわからないからと、無理やりに会社に連れ戻された俺。
今は社長室に閉じ込められている。
光樹と一緒に。
まだ仕事が残っている光樹の傍で飲み物を出された。
これを飲んで待っていろと。
「突然何を言うの?また・・」
「俺が・・トシを・・追い詰めたから。」
「・・・たぶんさ・・トシ・・最初から煮詰まってたんじゃないの?」
「え?」
「・・ここまで出ている資料だと・・これ・・相当経営が難航してるって。正直言って・・トシありきで、やってこれたようなもんよ?其れじゃ逃げたくなるのも無理はないっての。」
・・・
話を聞けば、トシの社長は、社長業務を怠り、とにかく稼ぎがよさそうな仕事ばかりを受けていたという。
通常社長なら、その仕事に出るアーティストを守ろうと、その背景をしっかりと調べるものだけど、そういうのは一切していなかったから、信用問題が大きく広まっていた状況にあったらしい。
「これじゃ・・トシの評判は悪くなる一方だろう・・それに・・兄貴が委員会を立ち上げたばかりだったんで良かったよ。ガイドラインにひっかったわ。」
「?!何?」
「あの会社・・・経営難になっているのを隠そうと、これまでのメンバーの情報まで漏らしやがった。」
!!?
「アイツらの中にはすでに一般時もいる!」
「そう・・その彼らがトシの友人なのも調べはついている。それを売ったんだ!」
え・・・?!
それって・・・
今でも・・彼らとトシは繋がりがあったって事だ。
メンバーの入れ替えが目まぐるしくて、最近はテレビにも出るような仕事はしてなくて・・交流って言っても・・友人とではなく仕事でしか人と話せなくなってるって・・そう思ってたのに・・・
アイツの友達がちゃんといた。
なのに・・・それさえ・・・奪われた?・・兄貴が?
「嘘だ・・」
「俺もそう信じたいよ・・でも・・これは事実。だからこそなんだよ!!兄貴だけは、守ってやれよ。信じてやれよ!必ず戻ってくるって。」
「・・・てを・・貸してくれたって・・人たちは・・?」
「これがまた凄いよ!!どこでこんなパイプラインを作ったのか・・・いや・・トシの兄貴のヘマが、トシの信頼に結び付いたらしくて、音楽業界の先輩方!事務所専属の調査事務所ってのがあるんだよね?そこにお願いしているみたい。」
そう・・普通はそうやって、依頼された仕事の信用問を探るようになるんだって。
大きな会社であればあるほど、そういう機関との連携はしっかりとできているものだ。
「トシの会社には・・・無いの?」
「あの会社・・・無いね!それだけの資金源はさすがにないみたいよ?」
「嘘!?」
「ほんと・・残念だけど。」
「だって・・稼ぎなら出てた筈。」
「そう・・出てたんだよ。言うなら、ヨシキ以上に出てたの。」
そう・・じゃないと、こっちに資金源を入れるなんてことはしないんだから。
ある一定の利益を超えた場合は、その何割かを支払うってことになってる契約。
それを下回ればこちらにそのお金を入れることはない。
でも・・これまで入ってきている。
詰まり利益が出ている。
「たださ・・・この条件を変えろって言ってきたことあるんだよね・・個人事務所になってから。」
「はぁ?聞いてないそんな話。」
「言ってないもん。」
「あの社長・・・マジで大丈夫かって、あの時思ったんだよな。」
「それいつの話だよ?」
「去年か・・・?」
まだ日が浅い・・
「検討してみますってことで伝えたけど、それで・・この信用問題の浮上・・なぁ・・おかしいと思わない?まるでトシを人質にしてる気がしない?」
・・・!!!
「お前!?信じろって言ったくせに!!」
「信じろとは言ったよ!生きてるって。ちゃんと戻っても来るって!ただいまあるデータをもとにしたら、会社はトシを人質にしているってなんか見えてくんだって!」
会社が人質・・トシを・・・??
だって・・
「社長は・・トシの兄貴だよ・・・」
「そう!でもさ・・わかんないじゃないの・・うちは家族に恵まれたけど、家族運に恵まれたない人たちもたくさんいるし、急に人間が変わるってこともあるんだから。」
「・・トシ・・も・・?」
「あれは・・変わらないだろうな。」
「なんで?」
言い切れるのかよ?それ・・
「アイツ・・必死に駆けずり回って、ちゃんと謝りにいてたんだ。番組でお世話になった先輩とか、テレビ局とか・・色んな所に頭下げて回ってたんだ。勿論うちにも来てた。今回LAに来るのだって本当は俺と顔を合わせずらかったはず。でも・・ちゃんと来てたでしょ?俺もそれで根負けしたから許した。他の方々も、それで手を貸してくれたんだって。メディアにも公表しないように手を打ってる。これで漏らされたら、この業界に通じている奴らの仕業かも。そうなれば一番手が打ちやすいけど・・・」
確かに、トシが誘拐か、人質か・・って話ならいくら仕組まれたゴシップだとしても話題性はある。
見つかるのも早いかもしれないない。
「ただ・・能ある鷹は爪を隠すともいうし・・口を軽く割らない輩もいるから・・どう出るかわかないの。」
・・・!!!
希望の光が・・遠のいた・・・
side:Yoshiki
トシの情報は2か月たっても依然として何もなかった。
途方に暮れていた俺は、遂に仕事の手が止まってしまっていた。
そんな中で、光樹がうちに来た。
「兄貴・・小室哲哉さん知ってる?」
あの有名な・・TMNのリーダーだ。
あったことはないが知っている。
トシが凄く好きって・・・今頃トシ・・何してんだろうか・・
「・・・にぃさ~ん・・・」
・・・
「あ‥その方が!一緒に話たいんだって。話来てる。事務所通して。」
事務所の依頼・・・仕事か・・
「・・・したくない・・」
「・・兄貴!これ‥チャンスだと思うよ?すでにあの人は兄貴の一歩先を歩いてる。海外に進出したんだ!つまり!あの人と組めば、トシを探す手がかりがつかめるかもしれない!」
・・・??!
何を言い出してんだ・・
頭が全くついていけなかった。
「これだけ調査を進めても見つからないってことは、もしかしたら、トシは海外かもしれない!残念ながら、日本の調査隊は、海外までは進出できない。海外で探す方が手っ取り早いんだよ!そのコネクトする人物が現れた!それが・・」
「小室さん・・?」
「そう!何とかしてすぐにでも動かせるように話を付けるしかない!」
・・・
「公にして探すの?トシを?」
「違う!その伝手を探すんだよ!顔を売ればそれなりの大物を守る団体に結び付くはず!それを目当てに活動してきて!!」
・・・
「今は・・仕事する気には・・」
「それでいい!小室さんにプロデュースしてもらえ!金額はこっちで交渉するから。トシが戻って来たらがっつり返してもらう!兄貴はミツ兄探しても取り戻して来い!」
・・・そういう流れがすぐにできるのか不安だった。
話がしたいって事だろうが・・何の内容かもわからないのに・・・。
不安だって閉じこもったり言い訳するのは簡単だ。
光樹が言うように、何かしないと手に入らないんだから、利用できるものは利用して絶対に取り戻してやる!
音楽はする気はなかった。
トシとじゃなきゃ・・でも・・そのトシがいないんじゃ・・音楽で引き釣り出すしかない!
そう考えた。
「こちら・・ヨシキさん・・で、こちらが小室さんです。」
「どうも・・初めまして・・」
「小室さん!お願いがあります!」
「ひゃっ?!」
「俺をプロデュースしてください!」
「・・・へぁ?!」
紹介されてすぐにこれ言われたら・・普通は驚くどころか・・話通じない相手にされるところだな。
ただ・・この人・・小室哲哉って人は・・どういうわけかそうじゃなかった。
「・・場所変えない?ゆっくり話聞きたい。」
そういって、連れてこられた場所が、その店の別室・・ではなく何故か自宅だった。
迎えの車で、俺はあの店に行ったから、自分の車はなかったんで良かったけど。
・・今思い出したけど・・うちの子供より・・8歳は上なんだよな・・
だったら・・いたんじゃないか・・あの人の子どもたちも・・あそこに。
あっていなかったけど・・あの時は。
「・・ヨシキくん・・って呼んでいい?」
「はい。」
「どういう活動したいの?」
・・・それを今訊くのか・・まぁそうか・・プロデュース頼んだんだからそうなるよな。
「それは・・任せます。できたら広い範囲で活動で来たらなんでも。できるだけ早く知られれば!」
言ってることは滅茶苦茶だって分かる。
他力本願でしかないんだから。
それでもそうするしか居間の俺には何もできない。
こんな非力だなんて思いもしなかった。
「そう・・売れたら何でもいいの・・」
「はい。」
「分かった。でもね・・そこにヨシキらしさはないかもしれないんだよ?」
「別に構いません。欲しいものが手に入れば。」
「・・・・」
時間がない・・・何が起きてるかも本当にわからない。
「目指す場所は?」
「海外。」
「・・あ・・ヨーロッパとか・・アメリカとか・・なんかあるでしょ・・」
「世界中。」
「・・(あ)・・・」
声には出てないけど、奇麗に口を開けた小室さん。
「・・分かった・・じゃぁさ・・ヨシキのこと色々教えて?」
「そんなことしている場合じゃ・・」
「そういう場合なんだよ。これも大事なことなの。」
全然分かってないだろ!こっちの状況なんて知りもしないくせに!!
言えないから黙ってるけど、そこまで大人しくしてられねぇって!
「一人でじたばたするよりも手っ取り早いから僕とって言うんだったら・・今のこの時間も大事にしてよ?絶対損はさせないから。」
そういわれて、結局、酒に手を付けて、話しをすることになった。
最初は焦りと迷いそして不安で落ち着いてなんていられなかったものの、この人と話しているうちにだんだんと落ち着いてきて・・ここにいない・・探し物の存在が大きくなってきた。
どうしてトシが、この人たちの曲が好きっていうのか・・分かってきたから。
音楽の話なんて全くできていないのに、どちらかと言えば、映画の話とか、それもその内容の話が中心で・・どういうシーンに注目するかとか・・どういう言葉に影響を受けるのかとか・・
そんな話しだけど・・この人話し方そのものがすでに音楽みたいに・・聞こえる・・
「・・でさ・・いうわけよ・・なんか飽きてきたからちょっと外出てくるって・・」
話しは流れに流れて、仕事でのメンバー間のエピソードに。
「出ていくのはいいけど・・戻ってくるのが二日後とか・・あり得なくない?」
・・・そういうことってあるの・・・
「そんなもん缶詰にして閉じ込めときゃいいじゃん。俺絶対出さないもん。」
「それ・・犯罪じゃない・・軽く・・」
「そう?」
「いいんだけどさ・・やり方はね・・それぞれあるからさ。」
でも・・それが良かったのかもしれない・・ちょっとくらい自由にさせてたら・・トシは・・・
「メンバー同士って仲いいの?ヨシキのとこは。」
「別にぃ~?合えば話すけど・・仕事以外では顔は合わせない。」
「連絡は?」
「トシが・・」
あ・・・まただ・・
なんで・・こうなっちゃうんだろう‥別に・・話せない事じゃないのに。
「アイツが・・連絡係と会計してるから。」
「へぇ~・・」
「スケジューリングも?」
「そう・・仕事は俺が作ってくるけど、細かい交渉は、トシが。」
・・・いなくちゃ困る存在じゃないの・・って・・思いっきり知らされた。
「やること多くて大変だね・・トシ君。」
「そう。」
「分かった!じゃ・・曲作って、そのまま会社に通せばいいよね?」
「・・え?!」
「作るなら今作る?」
「あ・・でも・・」
「急ぐんでしょ?」
・・・知ってんの・・・?
俺たちの事情・・・
まるでそうだって・・言うみたいに・・サっと立ち上がった小室さん。
「正直酔ってるからさ・・音の感覚ずれてないといいけど・・」
引き付けられるみたいにして・・俺もついてきてしまった小室さんのスタジオ。
「歌はあった方がいい?それともなくていいの?」
「・・どっちでも・・」
「そう・・・じゃ・・一回作ってみて、それから考えようかな・・」
この人・・・ほんと・・普通じゃないと思ったのはこの時だ。
曲と歌詞がいっしょに出てきている・・ここまでは俺もあるけど・・それを忘れずにいられるところだった。
一切の迷いもなくすらすらと書き上げた一曲・・たったの30分。
譜面と歌詞は、録音で済ますからだけど、それで編曲加えて30分って・・・。
「かなり音を削り取った。ここにヨシキが、好きに音を乗せたら?」
・・・なに・・?
「え・・プロデュースするんじゃないの?」
「だから・・するから、ヨシキがこれに音を加えてって。」
「なんで・・・」
「全部やられたい?届けたい人がいるんじゃないの?待ってんじゃないの?その人。」
届けたい人・・・待ってる人・・
いるわけないじゃん・・・どこでどうしているかもわからないのに。
「・・届かなかったら・・?待ってなかったら?もういなかったら?」
・・・思いたくなかった。
ずっと考えずに一か月我慢してたのに・・・止まらなくなった。
なんで・・・今更気が付くの?
なんで・・こうならないと気が付かなかったの?
・・・忘れてただけだった・・・
知ってたもん。気づいてたもん・・
ただ・・・忘れてて・・・大事な存在だって・・・
「・・・ヨシキ・・・こう考えてみて・・・今の状況・・逃げたいくらい恐い思いしているの・・本当は誰なんだろうかって・・見つけたい人がいるのに見つけられない人なのか・・・それとも見つけて欲しいのに見つからない人なのか・・」
まるで隠れぼだよね・・って・・優しく笑ってくれた小室さん。
自然と溢れて流れた涙が自然と止まった。
side:Yoshiki
"必ず力になる”
何故小室さんがあそこまで言ってくれたかわからない。
今、置かれている状況について何も知らない筈の小室さんが。
それでも言葉通り小室さんは、尽力くださった。
お陰で、トシが失踪したとわかってから僅か4か月後・・小室さんと組んでから一か月後に、動きが出た。
バンッ!!
!!?
「兄貴!ミツ兄が見つかったぜ!」
!!?ッ!!
言葉が出なかった・・・
「いたのは香港だ!さすがだな!先にアジアを攻めようってのは、間違いなかったんだ!」
今は・・アジアよりもヨーロッパの方に目を向けられている時代だから、この話は、なかなか進まなかったところを小室さんがごり押しで動かした。
「トシは?今・・帰国してるの?」
LAに戻ってきていた俺は、トシに会いに行けるだろうか・・
どこにいるかもわかってるの?
「・・・それが・・」
顔がくぐもった光樹・・一体なにが・・
「それがミツ兄・・今は病院・・」
「ええ?!なんで??」
「事情は分からない。でも・・ずっと眠らされてるらしいんだ・・」
「は?・・会えるのか会えないのかどっちだよ?!」
「会いに行ってみることはできる筈だ。」
「そう・・じゃ・・すぐ行く!」
「今戻ってきたところだろ?」
「今すぐ!!」
「分かった。準備するから。動くなよ?まだ。」
香港にいた・・
俺も・・香港では仕事をしてきた。
その時はそんな情報は言ってさえ来なかったけど・・いた時間が少なすぎたんだろうか・・シンガポールも回って・・中国・台湾と回ってきた。
回っている間は一切そんな話はなかったけど・・・やっと見つかったんだ。
スタジオの機械室で待っていることにした光樹の連絡。
その間に・・思うことがたくさんあった。
トシとの思い出が一杯。
少しでも早く見つかる様にってそう思って回ってきたアジア・・
でも今は・・アイツとの思い出でいっぱいになってる。
甘いものが凄く好きで、一度食べたものは忘れなくて・・
目隠してチョコを食わせてもすぐに言当てて・・・
悔しいから違うってことにして・・・
物凄く腹立てて、”もうよっちゃんとは遊ばない”って・・家を飛び出してそのあと、俺がお母さんに、”素直に負けも認められないなんて”って・・怒られたりして。
そのあと謝りに行ったこと。
笑ってトシは許してくれた。
何気なく口ずさんでた”kiss"のメロディーに、トシだけが気が付いて、”俺も好きだよ”って・・・。
俺・・・あの笑顔が見たくて・・曲作ってたのも・・忘れてた・・。
自分で作った曲・・トシに初めて聞かせた時にも、同じように笑ってくれたのに。
”いい曲だね”って・・。
だから・・・ここまで来たのに・・・そんな大事なもの忘れて何を必死になってたんだろう・・・。
意味ないのに・・・”誰かの為”じゃ・・意味ないのに・・・。
「準備・・できたよ・・って・・泣いてる場合じゃないだろ?確かに病院だよ!でもさ・・結果観ないで、なに先に答え決めてんだ?そんな弱いやつじゃないだろうが?兄貴!」
!!!
俺が機械の隙間にある僅かな空白スペースで伏せているのを無理やり起こしてきた光樹が、しっかりと俺の目を見て訴えに出た。
コイツも・・涙目・・。
確かにそうだよ・・まだ・・決まってない。
まだ何も・・聞いてないんだから。
お父さんの時は・・もう決まってた・・
交通事故・・車が頭から塀垣に突っ込んだって・・・
でも、今回はなんで入院しているのかわからないんだから、勝手に決めちゃいけないんだ。
”どっちが不安なんだろうね・・”
小室さん・・。
あなたの言うとおりだよ。
動ける俺と、動けないトシ・・・不安なのは・・決まってる!!
「会いに行こう。」
side:Yoshiki
香港に到着すると、小室君がどういうわけだか段取りしてくれていて、暫く家を貸してくれるという話までついていたというのを、香港にある小室君のスタジオから連絡があったらしい、光樹宛に。
・・・状況を知ってんの?
疑問が拭い去れず、光樹を見ると、光樹も首を傾げた。
病院に先に行きたい思いはあったけど、ご厚意ってこともあるので、荷物だけおきに行こうってことで、置きに行くと・・デカかった・・お家。
「これ・・LAの兄貴の家と同等じゃない?この香港でこの敷地って・・」
確かにデカいっての。
その感動も早々に、病院へ急いだ。
病院への送迎までしていただいた俺たち。
病院に着くと・・これこれで・・
『あ~!あなたたちが・・。こちらです、すぐご案内します。』
・・事情も話していないけど、名前だけ告げたらすぐに案内されたのは・・個室部屋・・ベッドに近づくと・・寝てるだけのトシ。
「これはいったい・・」
『それが・・かなり・・重症です・・』
!!?
聞けば・・どういうわけだか・・睡眠薬の間見過ぎで眠っていた状態でここに運び込まれてきたらしい。
誰が救急車を呼んだのか・・この病院に運んできたのは誰なのかもわからないという・・分からないことだらけの状況の中・・トシはここで寝ている。
『もし・・このまま目が覚まさないって場合もありますか?』
胃に消化されていない薬がたまっているなら、吐き出させる方法があったというが、何も出ては来ず・・また・・筋肉が緩みすぎていて吐き出せるほどの力さえもなかったような衰弱している状態だったという。
聞けば聞くほど最悪な状況になっているトシ。
それでも・・床に膝をついて、トシの胸元に耳を当てると、静かに呼吸していて、心臓もトクトクと音を立てていた。
それだけで安心した。
『目が覚めないということは恐らくないと思います。ですが・・記憶に・・異常が出る場合があるんです・・』
心臓の音での向こう側から、不穏な言葉が・・
『ここ・・泊まることはできますか?』
『お一人でしたら。』
その言葉で、今日は泊まることにした。
「光樹・・先に帰って仕事に戻ったら?トシは見つかったしもう大丈夫だから。」
「・・あのな・・放っておけるかよ・・さっきの聞いただろ?たぶん転院してきたんじゃないかって・・でも、誰がその手続きをしたのか、誰がどの病院に運んだのか?そしてこの病院をだれが選んだのか・・全く分からない状況なの!何に巻き込まれてこうなったのかわからないのに、護衛も付けずに兄貴一人にしておくなんて出来っこねぇって!」
言われてみればそうかもしれない。
安眠剤を飲んで・・しかもこんな・・知らない土地で・・
トシは絶対に、自分からこんなことしない!
だとしたら・・巻き込まれた・・?!
・・・
・・・
トシ・・・探したいの?
見つけたい?こうなった原因の行方・・
目を覚まさないトシを見つめて何度も繰り返し聞いた。
「今日のところは俺は帰るけど、明日日中は交代しよう?その間に、兄貴もミツ兄も守れる信頼できる人達集めるから。」
「・・うん・・・」
光樹がこの部屋を出て行って、トシと二人きりになった。
ただ寝ているだけのトシ・・
目を覚ますような気配もなく、身動き一つしないで、寝息を静かに立てているだけ。
・・目・・覚ますよね・・
こうやって・・寝てるの・・見るの初めてだ・・
誰もいないところで・・俺しか見てない・・トシの寝顔。
スタジオで一回あっただけだね・・今のところ・・。
でも・・わずかな時間。
今は・・かなり長い時間見ていられる。
こういう状況じゃなかったから、嬉しいと思うんだよね・・きっと。
ずっと続いたらいいって・・そう思うけど・・ここ・・病院だもん。
目を覚ましてもらわないと困る!
”記憶に異常が・・”
それくらいで済むなら、とっとと起きたらどうなんだ?!
記憶違いなんていつもじゃないの?
トイレどこか忘れて、俺が辞めさせたからなの?メンバーの名前が出てこないって・・
切羽詰まってると、必ずそうなるんだったら今更じゃないの!?
さっさと目を覚ましてよね!!
・・・
「・・・」
・・!!?
はっ・・!!
「・・ン・・」
ぴくっと動いた目元・・それで・・声が・・
もしたら・・・起きる・・?
「・・」
!!!
あ・・・
気が付かなかったけど・・知らず知らず握っていたトシの指先も・・動いたことで・・気が付いた。
いつの間にか・・握ってたんだ・・・。
「・・ん・・ん~~・・」
ぱちッと目が開いた瞬間に・・目が合った。
!!??//////ひゃ~~!!!
物凄く・・照れる・・!!
え?ええ?!!なんで?
なんで照れなないといけないんだよ・・?
別に大したことないもん。心配なんてしてなかったもん!
ただ・・久しぶりに会えた気がして・・嬉しかっただけだけ・・・???
「だから違うってば!」
「・・・何が?」
・・!!!!反応したぁ~~!!
「トシ・・分かる?俺の事・・分かる?」
「・・ヨシキ・・・」
弱弱しいというよりも、かすれた声で・・名前を呼んだ。
「そう!ずっと寝てたんだよ?お前。ずっと・・目が覚めなかったって・・だから・・ずっと・・俺・・」
「・・・ヨシキ・・!!?ヨシキ!!」
「だからそうだって!!」
「・・・なんで・・」
「分からんことを言うな!何がなんでだよ?」
目が覚めてすぐに目を丸くしたトシ。
それで俺が泣きそうになったと同時に、声を取り戻したかのように連呼しやがって。
頭痛くなるでしょうに!!
お陰でキレたわ。涙もどっかに飛ばされて。
感動的な再開じゃないの?!ねぇ・・。
「・・・ヨシキ・・ここどこ?」
「病院。」
「・・・そう・・だけど・・どこの?」
「なんとかかんとかって・・病院・・」
名前まで覚えてねぇよ。
「・・・国は?」
・・・!!!そうだ・・コイツいったい何があってこうなってんだよ?!
そこ聴かなきゃ!!
「香港。」
「・・・・・・~~~・・・・」
俺が答えたことで、無表情になり・・そのあと顔を背けてギュ~~っとキツク全身に体に力を入れたのが分かった。
それは・・俺がまだトシの指を離していなかったからだけど、トシが自分からそれを外した・・
いや・・手を握りしまたんで・・放されてしまった。
それだけわずかにしか・・触れてなかったんだ。
「・・・はぁ・・・・ダメだ・・思い出せない・・」
・・・
・・思い出す方法がそれなの?
どういう所でそれを覚えたの?珍しいよね・・。
「コンサートしてたの?」
「そう。」
「・・・二人で?それとも・・他にメンバーいたの?」
なんで知ってんだよ・・小室さんと二人だったって・・
「二人で。」
「・・・そっか・・・それ・・いつ?倒れたからここにいるの?俺。」
「ああ・・倒れたらしいよ。いや・・薬飲まされたから・・。それでコンサート終わらせてLAに戻った俺に連絡来たわ。」
「・・・ヨシキは・・俺を置いたLAに帰ったの?」
・・・
「・・・」
顔を見合わせてて気が付いた。
たぶん・・これ・・会話が合ってないかもしれない・・・
「え?コンサートって・・だれの?」
「俺たちのでしょ?」
やっぱりそこから会話が合ってない!
コイツの記憶障害は・・・ここに自分が来たことさえ分かってなかったんだ。
詰まり何があってこうなってるのかを、トシに聞くのは難しい状況になった。
ただ・・忘れてない!
自分が誰なのか・・トシは忘れてなんかいなかった。
「トシ!!」
「はい!?」
「今からちゃんと説明するから聞いて!」
「あ・・うん・・」
事の経緯を説明した。
LAのスタジオで仮のレコーディングをしたこと、メンバーを首にした話・・そしてトシの英語レッスンで、缶詰にした話。
帰国することになって以来、連絡が取れなくなった話し。
「・・じゃ・・今うちの会社って・・」
「もぬけの殻だって言うんだよ。俺も実際に見たわけじゃないけど。都内スタッフが見に行ってくれてる・・・何度も様子を見に行ってくれてて・・でも誰もいないって。」
「・・・なんで・・」
「さぁ・・・ただ・・」
トシにとっては聞きくないことかもしれないけど、言わないといけないと思い、会社の状況も伝えた。
こんな・・目を覚ましたばかりの状況ではあるけど・・伝えておこうと。
「・・知ってた・・なんとなく・・気づいてたんだ・・」
「・・いつから?」
「・・ふ~ん・・まだ個人事務所がなかったころに・・俺・・チームのお金って・・家に持って帰って保管してて・・」
「ああ・・」
「でも・・集団で一緒にいると誰か使っちゃうみたいで・・泊まりの時とかね・・」
「はぁ?!聞いてねぇよ?!」
「言ってないもん。」
なんで!?そうい言いかけて、話をそらさないように必死にこらえた。
「で・・個人事務所を立ち上げるってことになって、そこに保管しようって決めたわけ。なのに・・それも・・かなりの金額が減ったんだよ。」
・・・まさかコイツ・・自分の会社を疑ってたのか・・
「それで・・動かないの・・何もかもがめちゃくちゃで、自分で仕事を問てくることにまでなって・・本当に嬉しかったんだけど、認めて下っている方もいて・・色々仕事をくださる方々に出逢えたお陰で仕事には恵まれたんだけど・・どういうわけか・・」
「金銭的なものか?」
「うん・・・それで・・急に現れたんだ・・社長に秘書というのか執事というのが・・代理人というのか・・そういう人。」
どうやらそのお付き人が代わりに社長の代わりをする仕事をしてたわけだろうな。
「そうしたら仕事は増えたんだ・・でも・・そのスケジュールがめちゃくちゃで・・仕事管理も滅茶苦茶だった・・・それに・・歌の仕事だけじゃない!まるでアイドル扱いだ!誰かのご機嫌を取るために連れ出すのはいいよ!次の仕事に繋がらない事ばっかりで、散財しまくって。」
だから疲労がたまってた・・。
「企業秘密事項ばらまいてんじゃねぇか。」
「そう・・・僕はそうなってるなんて知らなくて・・あまりにもスケジュールの詰め方に嫌気がさして、実は仕事放棄して・・ニィ兄のところへ行ってきた。」
!!?こいつが仕事放棄!?マジで?真面目一筋なコイツが??
「何しに・・」
ニィ兄はNYにいる・・そこへわざわざ・・なんで・・
「社長になって欲しいって頼みに。何度か連絡はしてたけど、聞き入れてもらえず・・でももう我慢の限界で。それで帰国したら、それが暴露されてたんだから。挙句の果てには、誰と仕事したとか・こういう話をしてたとか・・その情報を売ってお金に変えてるなんてことが起きててさ。」
そりゃ限界も来るよな・・・
そういう状況にいたなんて知りもしなかった。
で・・・なんで・・いつから?
この繋がりができていたのか・・
ここを探る必要があるな・・・
トシは、まだこの国とは繋がりはなかったのに、誰かがここに連れてきた。
「誰に連れてこられたの?ここで仕事があるって誰が言ったの?なんでここにいるのかわかる?」
「・・・」
早すぎたか?
聞き取れなかったかもしれない・・・
ボケっとした表情を魅せているトシで俺が気が付いた。
焦ったせいで、トシの両肩を押さえつけてた。
まだ起き上がれもしないのに。
「・・ごめん・・」
「いや・・分からない・・知らないうちに移動させられてて気が付いたら・・こうして・・寝てた・・でもあの時は!?・・こんな暗示じゃなくて・・くらい部屋・・だったと思う・・」
!!?
『・・目を覚まされましたね・・ドクターを呼んでまいります。』
看護師が来たがすぐに出て行った。
見た感じこの病院・・かなり信頼性はありそうだ。
だけど・・どこからここへ転院したのか・・その経緯事態が分からない。
また・・睡眠導入剤をかなり入れられていたという話も聞いた。
一体いつから?
「トシ・・」
「・・なに?」
「・・・おかしなところない?」
「・・」
「その・・体のどこかがだるいとか・・動かないとか・・そういうの・・」
上手く伝えられないけど・・・。
「・・・さっきの人・・あれ・・何語?」
・・・!!!
「え?」
「・・あの人・・何話してたの?」
「・・英語・・・」
「そう・・・」
まさか・・・英語そのものが分からくなってるの?
「あれだけレッスンして・・完全に忘れたの?」
「・・・ヨシキ・・?」
『あ~・・目が覚めましたか・・って・・何してるの?落ち着いて。まだ患者なんですよ。』
意味も分からないけど、またトシの肩を抑えついてたら、それ子を何語かもわからない言葉で、ごたごた言われて、引き離してきたドクター。
『何すんだよ!?今話してるのは俺なの!』
『・・話してるというより、ケンカ売ってるように見えましたが?』
・・・英語話せるのか・・
『先生・・?彼は・・俺の知り合いで、長年の友人です。害はないですよ。』
・・・??
はぁ?なんで・・こいつ・・・この国の言葉話してんの?
『そうはいっても、ここは病院だからね・・安静にしてもらうことが最低条件なんだよ。』
優しくトシに笑いかけたドクターが、俺に厳しい顔で向き直してきた。
『その約束ができないなら、出て行ってもらうからね!次は気を付けて。』
・・・この人・・俺はこの国の言葉が分からないって事知らねぇだろ?
「ヨシキ・・静かにしてるほうがいいよ?もう時間も遅いんだから、今追い出されたら、移動できないって。」
「・・はい・・」
素直に聞いてしまった。
side:Kohki
兄貴を病院へ置いて、送迎の車で小室さんの家に送ってもらってきた。
そこから・・電話とパソコンの両方を使って、都内、LAと連絡を取りまくることになった。
ある程度の調べがついている所もあれば、途切れている所もあったりもした。
それでも・・なんとなくわかってきた。
トシの会社は・・嘘みたいなことに手を出していたということだ。
元々、トシのあの性格だ。
オープンにする仕事は、ヨシキ率いる”X”での活動で徹底すると決めていたトシは、それ以外の活動をしようと決めて動いていた。
元々バーテンのバイト先にある、ピアノで演奏してその調律を自分で行っていたことで、それが広まって、”うちでも”という声が兎に角出ていのは知っているし、それをトシは、律儀に報告してきていた。
それが・・・途切れなかったから情報の行方はこうも早く繋がりが生まれた。
そして情報が途切れている部分ってのも割り出せた。
トシ・・こちらに話してくれた仕事は、本当に”仕事”の面だけ。
その裏側は・・・話してくれていない・・。
でもこれ・・絶対に誰かに話していると思うんだよな・・・
会社関係の話だから、俺たちには”漏洩”と考えるトシ。
くそ真面目な性格がここで面倒になる。
・・・
・・・
・・・
・・!!?
まさか・・・な・・・
出も頼れるところってここにしかなくねぇか?
言っても兄貴だ。
考えてても始まらねぇか・・・聞くだけ聞いてることにした。
まずは・・・母さんを頼るしかない。
そこからしか行きつかない。
ただ、下手に心配をかけるわけにはいかない。
何をどう話せばいいか・・・
あの人も、情報は総て信頼だと言い続けるから・・そう簡単には友人の坂東さえ教えなさそうだ・・・
着信音を聞きながら、俺は話しをどういえばいいかを兎に角考えていると・・纏まりもつかないうちに、繋がった。
【・・はい・・林です・・。】
自宅電話と店の電話で番号が違う、家の電話。
通常の母の声が、耳に響いて安心した俺。
・・どこまでもひっ迫してんだって・・俺自身自覚した。
けど・・怯んでる場合じゃない。
「・・助けて・・お母さん・・」
・・こんなことが言いたかったんじゃないのに・・・
【!何があったの?何したらいいの?大丈夫なの??】
俺より焦るって・・まだ何も話してないんだよ。
落ち着いてよ・・いや・・落ち着かせるのは俺だよな。
「・・ごめん・・おかしなこと言った。気にしないで。大丈夫だからさ。」
【・・光樹?あんた・・】
「教えて欲しいことがある。出山家のお母さんの番号・・急いでるんだ。」
【・・・分かった・・待ってて。】
なにかあったと察しがついただろうな・・・
まさかミツ兄のお母さんの連絡先をたどらないといけなくなるなんて・・思いもしなかったでしょ?
たいていの事なら・・個人の固定電話で済む話なんだから。
後で事情は必ず話すよ。
今は・・何も聞かないで。
【いい?言うわよ?】
「ああ・・お願い。」
それだけ伝えると、母は、静かな声で”気を付けて”とだけ言って電話を終わらせた。
ふふ・・・知られてるみたいで・・本当に怖かった。
隠さないといけないことが起きてるわけじゃない。
何もわからないことだらけすぎて、何も話せることがない今の状況が・・俺自身を恐怖に貶めている。
でもさ・・
やっぱりさ・・・
一番怖かったの・・・トシなんじゃないかな・・
ミツ兄・・本当に音楽が好きなんだって・・・俺分かった。
公にできなくても、必要だって頼まれたらどんなに小さな仕事でも請け負ってちゃんと場数熟していた。
それは・・ミツ兄・・本当は・・ステージで不安になったことがあるって・・俺に話してくれたことがあったから。
緊張するなんて柄じゃないだろって・・返してやったけど。
ニィ兄が、生徒会長してて、部活の部長のもしてて・・何をするにしても一番上に立っている兄にあこがれを抱いたことがあったらしい。
それで自分持って思ったらしいけど、やってみると緊張が先立って・・高校の時は・・
あれ・・聞いただけでも笑ったけど、今思い出してもおかしな話で・・
生徒会長なのはミツ兄なのに、それにあやかったうちの兄貴のお陰で、まぁ校則無視とまではいかないが、生徒会予算をかなりつかわせる学校祭を計画したことで話題になったが、生徒会長はクビ・・って。
その話だって、ステージで緊張してたんだって・・弱音吐いた時に話してくれた。
・・いや・・俺・・それ聞いて何を思ったかっていうと・・
実行へ持って行くだけの交渉をしたのは、ミツ兄だったってことを聞いた時には、コイツすげぇよって本当に思ったんだから。
その度胸を付けるために、トシは、トシなりに場数をこなしていこうと、本当に地道に努力してた。
その噂は、当然俺の耳にも届いてきていた。
ヨシキの勧めで、LAの高校に入って、経済をと経営学を学んでと言われた。
最初から俺を社長にする気があったらしい。
メディアの数はたかが知れているってのに、口コミ情報でLAの高校に入りたての俺の耳に入ってくるなんざ・・普通じゃないっての!!
それを見事に裏をかかれた動きがこれ。
それでも絶対に、ミツ兄は・・誰かにこのことを話してる筈。
ただ・・どういう言い方をしてて、どういう話をその人が知っているか・・これでまた言い方が変わってくる。
どう話を持って行って言って、協力を得ればいのか・・ここが分け目だ。
意を決して、出山のお母さんに電話。
ニィ兄の連絡先を教えて欲しいとお願いしたら、すぐに話してくれた。
・・・あなたのその性格が、どうやら・・この事件の始まりだったかもしれないんです・・・
何があったの?とか・・どうしたの?なんて聞かなかった。
”林の次男坊です”というだけで、教えちゃうって・・声だってそう聞いたことなかっただろ?
顔ですら年に何度顔を合わせるくらなのよ・・・
もっと警戒してよってそう思いながら、連絡先を調べてくるからと保留音流している最中考えてたわ。
いとも簡単に手に入れたニィ兄の連絡先で、ニィ兄に連絡。
どこまで話しているかわからないから、ここは長期戦で行くしかなかった。
日付を見ると運がいいことに向こうは、日曜の平日。
比較的繋がりやすいだろうと思った。
すると・・ニィ兄は・・
【まどろっこしのは嫌いだ。要件は?】
と・・事情を知ってるのかどうか・・こう言って返してきた。
腹の探り合いをする暇がないのはこちらも同じだったので、話を全部言って聞かせた。
【・・・】
「ニィお兄さんが、どこまで知ってるかわからないんですが、ミツ兄が危険なのは確かなんです。なんでもいいから知っている事教えてください。」
【・・・香港・・か・・どうかわからないけど・・帰国するとは言ってたんだ・・その前にうちに来てる。だけど・・その時は・・いつもの話だと思って追い返した感じで・・まともに話を聞いてなかった。】
・・!!!?
なに?
話を聞いてない?!
【社長を変わって欲しいと・・俺にしてほしいと・何度も連絡をしてきた。だけどすぐに返事ができるようなことじゃなく・・準備はするようにするが、時間をくれとずっといってて・・今回来たのもその件だと・・そう思ったんだ。】
・・・そんなことあるかよ・・・
この人は・・俺が知っている限り慎重かつ柔軟な人だ。
それが寄りにもよってミツ兄事を見放してる?!
「・・弟だろうが!?」
【そうだけど・・こっちにも都合が・・】
分からなくもないかなりの重役を任されてる人材ならすぐに返事もできなければ、簡単にやめるとも言えない・・でも・・
【今は・・それで・・香港に?】
「ああ・・かなりやばいらしい。記憶障害が残るかもしれないって・・なんか・・睡眠導入剤をかなり飲まされてるって・・言っても3~4か月もい詳細が掴めなかったんだから。」
あれだって・・本当に運が良かったのかもしれない。
もしもLAに来ていなかったら・・知らないままだったんだから。
【・・・まさか・・って思うけど・・】
「急に何?」
その恐怖をあるのような言い方をしてきたニィ兄。
【お前・・しらないのか・・?最近多いんだよ・・突然行方不明になる事件が。】
「はぁ?!」
【大きな都市部の人間ではないが・・行方不明者が続出している。警察も手を焼いている事件がさ・・・あれ・・に巻き込まれたり・・】
・・・・
・・・・
思い出してみると・・なんかそういうのを聞いたことがある。
ただ・・ニュースどころかテレビを見てない俺・・新聞なんて・・買いshに届いても広げもせずに・・本棚行・・。
・・・情報収集の怠りがここで露呈した。
「・・詳しく教えてください・・」
【なんで!?最近で言えば・・映画で・・有名な著名人の親戚の方も・・攫われて帰ってこないとか・・あったじゃん。】
!!!?
そこまで大きなことになってたのかよ!!?
「それ・・テレビで?」
【いや・・俺が知ったのは・・仕事・・銀行だよ。】
「あぁ?」
【突然・・とんでもない金額がやたらと動かせ人が多い。そのためなにかに騙されてたり、多きな事件に巻き込まれてんじゃないかと・・騒ぎになってな・・銀行中が・・それで国家機密機関に大元が・・それでそういう一連の流れが判明してんだよ・・】
身代金・・目的で?って事か??
「な・・そこに居たらもっと詳しく知ることできそう?」
【あ・・?】
「必要ならそこに残ってもらう。そのためにできることはしてくれよ!あんたも・・弟助けたいって気持ちがあるなら。」
【・・・分かった・・今は・・銀行全体がその関連を重要視してるから、情報は入りやすいと思う。】
「ありがと。」
【だが・・俺から光樹に話すことはできない。】
「え?」
【光樹・・お前・・うちの銀行・・LA支店の顧客だろ・・顧客として・・】
!!?そういうことか。
「ああ・・客として”問い合わせ”するよ。よろしく。」
なるほど。
そういうことで、ニィ兄は、意味なく答えを出し渋ってた・・つまり・・トシがおかしいと思ってニィ兄に社長の件を離した時には既に別のところではこの動きが始まってたわけね。
そりゃ動けねぇわ。
助ける気はある。
それ十分にわかったんで、明日ヨシキと合流してこの話を進めるしかない。
その前に俺が・・ここに残ってヨシキをここから出そう。