まもりたい10-17
side:Toshl
事務所同士が中が悪い・・・
噂じゃなくて本当にそうだと実感させられることがよくあるけど、今回は酷い・・・・
何でこんなことで喧嘩してんの?
うちらの事務所とヨシキのとこ・・?
喧嘩の原因は、喧嘩式の打ち上げ参加の許可を、マネージャさんに話したことから始まった。
深夜遅くに出かけるなんて!と、怒りを露わにしたマネージャさんが、ヨシキの事務所に直談判。
翌日の仕事に影響するからというのももちろんだけど、その、翌日ってのが、僕は金沢へ行くことになっていて、その日のうちに別の場所への移動もあるから、その移動と仕事量も考えると、という事で日付をずらしてほしいというだけの事だったんだけど、言い方に問題があったのか、捉え方がおかしかったのか、とにかく口げんかが始まったらしい。
僕はその場にいなくて、何がどうなって揉めたのかは全く分からないんだけど、不機嫌極まりない、マネージャさん。
結局、行くなとは言わないけれど、ヨシキと直接話してずらせるならずらして欲しいという事だけ伝えてきた。
それは構わないんだけど、そんなに大喧嘩するような内容じゃないと思うのに何で?
今日は車移動が多くて、大体30分から1時間の仕事を、転々としていた。
ソロになってからは、こういうゆったりとした仕事が続くようになって、大分落ち着いている。
夕方になって、スタジオに戻ってきた。
夕方と言ってもすでに日は沈んていて、あたりが暗い。
それでもこの時間を夕方と呼んでしまう・・・昔からの癖。
スタジオどりする曲は既に決まっていて、打合せも何も必要ないなと思っている所で・・・
「トシさ~ん!聞きましたか?衣装の話。」
「え?」
僕の後ろから声を上げてきた、スタッフさん。
衣装の事が何かあったらしい。
「まだ衣装が届かないんですよ。衣装合わせ、明日か明後日にしているのに、まだできてないって・・・」
・・・・・
「何それ?」
「ヨシキさんのブランドで、担当させてくれって、話しになっているんですけど、マネージャがその確認の電話をしたんですが、まだ目処が立たないって、呑気に返されたとかで、怒ってましたね・・」
そういう話も含めて連絡してたんだ。
「そっか・・待ってればいいんじゃない?当日には届くから。」
「はい?」
「いつもそんなもんだよ。」
そのギリギリ精神なのがヨシキの会社で、それに反感を抱いているのが、うちの会社ってわけ。
呑気だからこそ、ゆとりが欲しいって考えてる僕の事務所の意向にまったくそぐわないやり方をしてくるヨシキの会社にイライラを募らせているから仲が悪いの。
考え方の違いってだけの事なんだけどね。
「いいんですか?トシさん、衣装選びには時間がかかるのに。」
「だからこそギリギリにしか来ないんだよ。時間あるとあるだけ使っちゃうことをヨシキが知っているから。」
「はぁ~・・・」
それでも必ず間に合わせて来るのもわかっているから、僕は何も気にしていない。
僕も一人で活動するようになって分かったんだけど、本来であれば衣装担当をしているデザイナーさんが自ら交渉に当たってくる。
コンセプトを説明したり、構図を見せてくれたりと。
それがヨシキの所はそれがなく、わさ~っと大量の衣装が届いて、どれがいい?とこうなる。
僕は、ヨシキの所のしか知らなかったから、ここまでするんだ~って、他のデザイナーさんを知って、驚いたんだから。
迷うってことを知っているのに、数を持ってこられて、時間をかけるな早く決めろという威圧感を出されて、焦るから余計に決められなかった・・・
今回はヨシキが来るわけじゃないだろうから、威圧感はない筈。
少しゆっくり目に決めようかな。
ライブ配信ってことで、お客さんが会場来るわけでもないんだし。
だからって、予定の時間を超えてしまうのは、絶対に嫌だから・・・衣装が少しでも早く届く事を祈るばかりです。
翌日、トーク配信が終わって、雑誌の撮影を終わらせて、スタジオに戻ってきた。
こういうと簡単に終わったなぁって、自分でも感じるけど、そんなわけなかった。すべて3時間はかかっている。
”溜め撮り”ってやつです。
「そういえば、献花式のステージ、ヨシキさんがプロデゥースしているんですよね?大丈夫なんですか?口頭弁論の準備もしているって聞いてますけど。」
「そうだよね・・・公にできないから、誰も知らないんだけどね。いいと思うよ。都内スタッフの人たち中心に動いているんだって。ヨシキは様子を見に行く程度にしているみたいだよ。珍しく口を出さないってきいてる。」
「都内スタッフさんと話したんですか?」
「衣装の事で、気にしているスタッフさんがいたからね。マネージャさんと話させると火花が散るから、ちょっと聞いてみたの。そしたら、準備はできているんだけど、LAから届くんだって。出荷はできたんだって聞いたよ。」
撮影現場から、送られてきた写真の中から、どれを使うかを選んでいる最中。
話している間に、いいなぁって思ったのがあったんだけど、それがどれだったのか・・・
サラッサラッと、スクロールしてたから、どこかに飛んで行ってしまったみたいで。
仕方ない。
行方不明になった物を探すよりも次のを見つけよう。
「この記事にこの写真合うと思いませんか?」
見せられて・・・すぐに思い出せない。
この記事・・どういうのだった・・?
自分で書いておきながら、時間が経つと忘れてしまう。
書いている時はよく見るんだよね。
書き間違いの確認とか、文章そのものの構成の仕方とか、何度も読み返しているんだけど、出来上がってしまってこの作業するまでの間に見直すってことしないから、トンと忘れてるわけ。
更に他の執筆に入るから、余計に忘れるのは早い。
なので、読み返して半分の所で、思い出した。
「そういえば、書いたわぁ~」
「でしょうね。」
必ずやっちゃうこのやり取り。
「で、なんだっけ?」
「・・・写真です・・」
スタッフ君が呆れるのもわかるんだけど、忘れやすいんだよね。僕も。
ヨシキのがうつったかな・・・
「そうそう。えっとねぇ~・・・」
こんな感じで緩く打合せをしている所に、バタバタと廊下を走る音が・・・
バン!
扉が勢いよく開いた。
静かに開けようね・・・誰よ?
開けた扉の人を驚いてみると・・・マネージャさん。
「トシさん、ヨシキさんが倒れました。」
!!!
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