![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158176047/rectangle_large_type_2_45804746e9a7349e5524279c791f6909.png?width=1200)
まもりたい10-2&3
side:PATA
≪智~・・・智~・・智ってばぁ~~~≫
・・・・・
遠くでなんか聞こえる・・・・
≪智昭ぃ~~~!!≫
・・・今度は、かなり近くで聞こえてきた・・・・・
うるせぇなぁ・・俺は今寝てんだよ・・・・静かにしておくれ・・・
・・・・・・
・・・・・
≪智昭さん・・・・良いの?覚悟できてるの?≫
・・・・・
・・・・・
何の話かわからない。
眠気でそれどころじゃない。
≪もう・・知らないからね?!俺は!!≫
バシッと、腰辺りをたたかれた感覚と、音がしっかり聞こえた。
それを最後に、声が止んだ。
俺はまた、眠りに入っていった・・・・
目が覚めたのは
電話の音で、だった。
「・・・はい。石塚です。」
「・・・・・・」
・・・・・・・・
電話の内容で、俺の頭が真っ白になった。
・・・heath・・・・
事務所からの連絡でだった。
今後の段取りを告げられた。
口は返事を返すが、頭が付いていけてなかった。
電話を切った後も放心状態なのは確かだった。
≪覚悟できてるの?≫
秀人・・・?
秀人の存在を間近に感じた瞬間が鮮明に浮かび上がった。
いたのか・・・?ここに・・・・
誰もいない部屋を見渡して、どの辺にいたのかと、目を閉じた。
≪heathは俺達とこっちにいるからな・・・≫
秀人の声がうっすらと消え入るように聞こえて遠ざかっていた。
俺は、事務所に電話しなおしてもう一度段取りの説明を聞いて、動くことにした。
ヨシキの動きが分からない・・だから全員が注意深くなっていた。
俺の事務所もそれは同じだったが、出山だけは別の式場のお通夜へ行っていると聞いた。
ヨシキがまだ機上の人なら、今の内かと、人が集まっていないという報告から判断し、車を頼んだ。
通夜の連絡については、事務所は昨日から知っていたが、俺の動きを他のメンバーと被らないようにする為に、他の事務所との折り合いをつける段取りが先だったため、お通夜当日の今になって、連絡を居れてきた。
昨日のうちに連絡だけでも聞いていたら・・・少しは頭の回転が速かっただろうが・・・
まだ夢見心地だ。
綿密に話し合っても、被るものは被る・・・・
葬儀会場へ出向いてみると・・・知った顔が・・・・
SUGIZO。
お互い知らない顔の振りをするつもりで、会釈をするだけですれ違い、お香典だけお渡しをして、heathの遺影に手を合わせてそこを後にしてきた。
本当なら葬儀だって出たかったが、ヨシキが葬儀に出てくるだろう。
お通夜は、どちらの会場か分からないといった判断だった・・・
ならば、明日は、別の会場の方へ行くことにすると、事務所に伝えると、許可が下りた。
兵庫県の葬儀場でも、面白いことが起きていて、祭壇がちゃんと用意されていた。
遺影が、都内のものとは違っていた。
これも一緒に火葬場へ持ち運ばれることになっているという。
中身は、heathにとって大切にしていたものばかりが入っていた。
譜面まで・・・・
本人の希望とだとか。
後は、子供のころ写真、俺たちの思い出の写真まで・・・
俺も何かあれば持ってきて来てくださいという話を聞いていたので、探しては見たが・・・やはり写真を持って行った。
コピーしたもの。
現物は取っておきたい。
俺もこんな葬儀にしたいなぁと、感じた。
家族葬会場だから、そう大きくない。
都内も大きくなかった。
だが、雰囲気的に、こっちが好きだ。
本当に面白い奴だなぁ・・・heathって。
・・・・・?
すると、何か白いものが・・・なんだこれと思って、手に取ってしまったところを、お身内の方に声を掛けられた。
「あ・・それ・・変ですよね・・・」
「え?」
慌てて棺桶に戻した。
「いいんですよ・・それ。乳歯です。ヒロの。」
「はぁ?」
驚いて声が、大きくなってしまった。
慌てて口を押えた。
「おかしいでしょ?俺にそれを入れてくれって頼んできたんですよ?本当に変わった人だなって。あと、へその緒も、ここに。」
見せてくれたのは、へその緒が入っている小さな木箱。
「・・・余命宣告されたとき、すでに残り1か月ってとこやったんです・・・最初は、誰とも口が聞かれへん状態やったんが、何や知らんけど、突然俺に電話してきて、葬儀の話をしたんですよ。どうしてもまもりたいX JAPANのメンバーやし、目立たんようにってわけにはいかんから、催事場を二つに分けたいって話も、heathが考えた方法なんですね。それで、メンバーの方にお会いしたら伝えてほしいって言われてたんが・・・”俺まだあきらめてません。ずっと皆さんと一緒に仲間でいますから”っていうてました。」
・・・・・・
っっ・・・・
「だから、場所が違っても、一緒に生きているって信じていてくださいって、そういってたんです。ですから、皆さんの想い出も分けてほしいって、ヒロ・・俺に言うって逝ったんですよ。」
こんな面白い発想をさせておきながら、泣かされて・・・本当に笑わせたいのか、泣かせたいのか・・・・
最後の最期まで、優しい奴だな・・森江ちゃん。
そんな時に、力強く描かれた絵が目に飛び込んだ。
しょぼしょぼの目から、朧気に移った一枚の絵・・・
「でやまもきてたんか・・・」
小さく呟いたはずの俺の声が聞こえたのか、隣にいたお身内さんが、教えてくれる。
「ええ・・トシさんも昨日と今日・・あなたがいらっしゃる前には帰りましたが・・・」
涙を拭きながら、涙ぐんだ声で話してくれる。
「・・スン・・昨日は何も用意してないからって、今日来てくださって、絵を置いていかれたんですよ。何も残ってなくてごめんなさいって、遺影に向かって、拝んでいました。」
出山・・・
出山の描いた絵は2枚。
一枚は、森江ちゃんの生まれ年の干支にちなんだかわいらしい絵と、俺たち7人、全員の生まれ年の干支をキャラクターに合わせて描かれたカッコよくも、かわいらしい絵だった。
森江ちゃんが望んだとおり、まだまだX JAPANが残っていると示されているような、力強い絵だった。
出山らしい送り方だよ。本当に。
出山の絵のお陰で、涙も引っ込み、森江ちゃんの望む通り、ただ静かに見送る覚悟が出来た。
そしてこれからも一緒に生きていく覚悟もできた。
秀人・・森江ちゃんをよろしく頼むぞ。
もう一度、俺は祭壇にお焼香をして、そこを後にした。
ここから先は
¥ 2,000
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?