Shop Mellows
今回整備をお願いしているのは、八王子市のShop Mellows(ショップ・メローズ)。中川社長の個人店。中川さんとの出会いは僕が大学生だった当時で、かれこれ30年近く前、大学3年生のころにバイトしていたバイク用品&パーツ店にまで遡る。彼が社員で僕がバイト。年下の上司だった。その後僕が大学を卒業して引っ越してしまってからは完全に没交渉だったのだけど、年に何度か思い出す、妙に気になる人だった。しかも「どうしてっかな」とかじゃなくて、「うーん、どうしても連絡取りたい」みたいな感じで。
でも当時はこんなにネットが普及しておらず、個人を探すのも不可能だったので、もう駄目かなと諦めていた。そんなタイミングでたまたま中川さんの名前で検索したところ、なんかレースのリザルトみたいなのが出たんだけど、それを見てダメモトで、チームを運営しているショップにメールしてみた。が、音沙汰なし。
ようやっと連絡ついたのは、彼が独立して店のホームページができてから。しつこく検索してる俺もキモいが、どうしても気になる人なのよ。で、メールを送ったんだけど「もしかしたら過去の人とはぜんぶ縁切りたいタイプかもな」と思って、期待してなかった。なんか、そんな雰囲気のある人だった。
ところが、忘れたころに連絡が来た。で、ちょいちょいやり取りをしてその翌年かな? 900SSのキャブ交換を依頼して、超久々の再会となった。お互いオッサンにはなっていたものの、変わらないなーという印象。オッサンになっての再会って、けっこう好きなんだよね。おたがい容姿に経験が刻み込まれててさ。
そしてキャブ交換から帰ってきた900SSに乗ってみて、めちゃくちゃいい仕事にびっくりした。なんかこう、今までそういうことをショップに頼んでも、帰ってきたバイクから感じるのは「バイクとその部品」だけだったんだけど、900SSからは、イズムみたいなものを感じた。文章書いてると、ちょっと2〜3行書いただけで「お、この人いいぞ」と思う人がいる。絵でも、ちょっと線を引いただけでぜんぜん違う人がいる。踊りでも、誰にも真似のできない身のこなしの人がいる。なんか、それに近い独特なものを感じた。知り合いだからということじゃなくて。
「あー、これ俺がバイク乗るのもっと上手かったら、もっとすごく感じるんだろうな」と思って、ちょっと悔しい。僕はバイク乗るの下手なのよ。
というわけで、今回もGPZ900Rを任せることにしたんだけど、販売店のずさんな納車整備をこの人に見せるのはある意味かわいそうで、もう完全にレベルが違う。あれこれ説明を聞いていると「あー、そりゃそうだよね。でもそういう当たり前が大事だよね」ってことばっかりなんだけど、とにかくそういう作業を丁寧にみっちりやる人。サボってもサボらなくても大差ないような些事を決してサボらない。「この人がみっちりやったバイク乗ってみたいな」と思わせるようなメカさんだ。
ライトな店でカスタムしてもそこにはバイクと部品の組み合わせしかないんだけど、こういう店にはそれプラス哲学が加わる。こういう店でカスタムしてみたいなという思いは昔からあったんだけど、こういう店ってさあ、知り合いとかじゃないとおっかなくて行けないんだよ。中川さんの店とか、知ってる仲なのに緊張したもの。今もするし。
バイクのカスタムはもとより、整備だけでも考えている人には、すごくオススメする。持ち主の乗り方や意見を鑑みながら、間違いなくすごく良くしてくれる店だと思う。
今回のGPZ900R、購入者としては実にアンラッキーだったけど、裏を返せばすごくいい経験をしていると思う。街のバイク屋ほんとおっかないわ。割と評判のいい店なんだけど、フロートチャンバーに液ガスってなんやのん、ほんとに。
互いに人生を折り返し、こうして1台のバイクを挟んで向き合えるのはとても楽しいこと。オッサンになるのも悪くないね。