観てきたぞ(ネタバレなし)
『君たちはどう生きるか』観てきた。ネタバレはしないように感想を書くぞ。映画の内容には触れないけど、先入観を持たずに観たい方は、そっ閉じを推奨。
ネットでは『失われたものたちの本』が原作もしくは原案なのではと噂されてるけど、結局どうなんだろ? 公式の発表を待ちたい。僕にも質問がちょくちょく来るけど、僕は知りません! 当然、そういう理由で作品に肩入れもしない。
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とりあえず一番は、作品の楽しみ方や受け取り方を問われているように感じた。この作品に限らず、あらゆるエンタメ作品や芸術作品の楽しみ方ね。「見事な伏線回収」とか、評論家ぶった小賢しい鑑賞の仕方を寄せ付けない感じが、もう超絶好みだった。たぶん、そういう楽しみ方をする評論系・考察系の人は苦しみ、ともすれば嫌悪するタイプの映画だと思うし、駄作扱いされてもおかしくないだろう。
あとは、「ただ座って観てれば、なんも考えなくても楽しめる」みたいな、親鳥がエサを運んできてくれるのを待つ雛鳥みたいな楽しみ方を求めてる人にも向かないんじゃないかと感じた。宮﨑監督の作品では『天空の城ラピュタ』がもっともこれに近いと思うけど。
僕は上記2つの楽しみ方は、エンターテイメントの楽しみ方としてあまり好きではなくて、もっと自分から作品に頭を突っ込んだり浴びに行ったり浸るために飛び込んだりするほうが好きなのだけど、そういう感じで行くとめちゃくちゃ楽しい作品じゃないかと思う。「え、うわ、すご! なんぞこれ!」と楽しむのが好きだし、僕にとってはそれが正しい。「全部理解しよう」という楽しみ方など損。自分の理解力はそんなに高くない。天才芸術家の作品がすべて理解できるなら、それはとても残念なことだ。
たぶんだけど、子供はけっこう好きだと思う。これ。上記2つにだいたい当てはまらないからね。
評論・考察系は、楽しみ方としては邪であるようにも感じる。「自分が分からないものは駄作」という判断になりかねず、往々にしてそれは客観的な評論の姿をした言いがかりになりがちだから。
そもそも「辻褄が合ってないとだめ。分からなくちゃだめ」というのは、すでに間違っている。そんな作品ばかりだったら、エンタメも芸術もおしまいだ。紋切り型の作品ばかりになってしまう。そういう作品は、もっとポップで商業主義的な、受け手におもねる作り手に任せておけばいい。
だいたい空想というのは辻褄が合わないもので、さかしい目で見れば伏線かと思われたものが実は全然そうじゃなくて、回収なんてそっちのけでどこかに行ったりするのも普通だと思う。整合性のあるファンタジーなんて、もはやファンタジーじゃない。だいたい、人生そのものからして辻褄なんて合っちゃいない。
僕にとってもっとも近い感想を言うなら、これまでに素晴らしい空想作品をたくさん作ってきた天才映画監督の脳内世界を覗ける、彼の脳みそのバックアップに首を突っ込んで眺め、聞き、嗅ぎ、感じているようだった。音も絵もイマジネーションも素晴らしくて圧巻だったと思う。風圧や湿気まで感じる気がした。辻褄とかそういうのは求めないし、あればあるだけ嘘くさく感じる。「そういうことじゃねぇんだよ」という圧倒的な迫力、頼もしさを感じた。82歳にしてこの説得力で作品を作ることができる宮﨑監督は、ほんとに超人だと思う。
というわけで、ものっすごく満足度が高くて大好きな作品で、鑑賞後はほとんど朝まで眠れずにちょっと呆然としていた。受けた風圧にまだ肌がビリビリしているようだった。
これからの自分の仕事への向き合い方を真剣に考えざるを得なかったし、気づけば「生涯であと何本、本気の勝負ができるか」と真剣に計算していた。何回でも観たい。