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ほっとして超眠い日々

『失われたものたちの本』がヒットしていて、あちこちからメッセージが届く。この10年余、ひたすら仕事仕事で家からもろくに出ずにいるうちに友達がひとり残らずいなくなってしまったと思っていたけれど、憶えていてくれてありがとう。

 いろいろと世間を騒がせているこの本だけれど、そんなことは僕にとっては割とどうでもよく、この本が今後も長く読みつがれ、スタンダードになってくれたらそれが何よりも嬉しい。それだけの力のある小説だと思っている。関わり続けてすでに16年。自分のした仕事にランクなど付けたくはないが、それでもずっといちばん特別な仕事だった。今も毎朝「夢ではないだろうか」と思って目が覚める。

 僕はこの物語が持つ大きく重い力をずっと感じてきたので、今はとにかく脱力感がすごい。「やっとこの本を、本来あるべきところに下ろすことができた」みたいな達成感というか安堵というか、おかげで毎日、眠くて眠くてしかたがない。「ああ、こんなに気にかけていたのか」と改めて気づく。

 そして、とてもとても勇気づけられた。こういう本もちゃんと読んでもらえるのだという喜びは強烈だ。僕はファンタジーが好きだけれど、ファンタジーならなんでも好きというわけではない。「こういう作品なら喜ばれる」みたいに、マーケティングの結果として生まれてきたようなファンタジー世界にはほとんど興味がない。空想世界が生まれるのにはちゃんと理由が必要で、景色にも登場人物にも、ちゃんと理由があるべきだと思っている。もちろんマーケティングだって理由といえば理由なのだろうけど、もっと「作者がそれを作らなくてはどうにもならなかった」みたいな、原始的で本能的で切羽詰まった命がけの理由みたいなものが欲しいと思ってしまう。

 だから、こういうファンタジー小説が受け入れられるのだというのは本当に嬉しいことなのだ。またこういう本を探しに行こう。健康であれば、まだまだあと20〜30年は現役だろうからな。もちろん、自分で作ることにも興味はあるし、まずはちょっと時間を作らなくてはいけないな。

 この本のことはもっともっと語りたいのだけれど、今はたぶんあまりタイミングがよろしくないので、またいずれ。

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