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[本のおはなし vol.2] モーモーまきばのおきゃくさま

clubhouseを使って木曜日のお昼に30分、絵本や児童文学の「本のおはなし」をしています。そんなおはなしの部屋のことはこちらから。

さて、第2回 は『モーモーまきばのおきゃくさま 』

ここからは今回の選書担当した扇谷一穂のまとめです。

この春らしい色彩と柔らかなタッチで描かれた、つぶらな瞳のうしさんの表紙。一見すると内容もそんなほんわかした物語だと思われるかもしれません。が、しかし。絵のタッチに反してお話の中身はちょっぴりビター。  

この絵本を知ったのは大人になってから。20代後半の頃、作家 江國香織さんのエッセイが好きでよく読んでいました。その中の一冊『絵本を抱えて部屋のすみへ』で「清濁あわせ吞む絵本」として紹介されていたのが『モーモーまきばのおきゃくさま』です。

あらすじについて、少しご紹介。

春のまきばで、草とキンポウゲの花がおいしそうに茂っている様子を見たうしは「誰かにごちそうしてあげたいわ」とつぶやきます。それを聞いたかけすは、「じゃあみんなを呼んでくるよ。」と 馬とやぎ、ぶたとひつじの子、犬、猫、がちょう、めんどりおんどり、ねずみを呼んできます。うしはキンポウゲの髪飾りをつけてお客さまをお迎えし、みんなで踊ったりうたを歌ったりと、楽しい時間を過ごします。いざお食事の時間になり、うしがみんなにまきばの草を勧めると、「くさだって?くさのほか、なんにも ないのかい?」と、草がきらいな動物は帰ってしまいます。悲しい気持ちになったうしでしたが、おきゃくさまの中には、草の好きな動物もいたのです...

子どもが生まれてから、図書館へよく行く様になり『モーモーまきば〜』を発見。読んでみたところ、この物語にすっかり魅了されました。「こういうことってあるよね。このうしの気持ち、分かるなあ。」とすっかり自分を重ねてしまった私は、「小学校へ入学した時にもこういうことがあるかも。」と、子どもへも繰り返し読み聞かせ。度々登場する『モーモーまきば〜』に、子どもからは「また、まきばなのー?」と言われる始末でした。

「本のおはなしvol.2」の中で、ふたりで話したこの本のポイントは

「色彩が素晴らしい(特色印刷の美しさ…)」「一箇所だけ(見開き一ページ)だけピンクがいっさい使われていなくてモノトーンのページがある。その意味」「このうしの髪飾り、随分時間が経ったのにそのままだ!随分と萎れているけれど、そのままにしているっていうことは、うしは着飾っておきゃくさまをお迎えしたことを誇りに思えているのでは」「自分が好きなものが、他人は好きじゃないのかも、と気が付くタイミングが成長過程のどこかにある」

そんなことを話しているうちに、「自分と他人の境界を知る年齢」に話が及び、松尾由佳さんが見たBBC(英国国営放送)のドキュメンタリーのお話に。

ーー Eテレで2年くらい前かな、海外ドキュメンタリーを紹介する番組の「赤ちゃんラボへようこそ!」という多分BBC制作の放送をたまたま観ていて。その中で赤ちゃんは自分と他人との好みの違いが理解できるか、過去の研究では自己意識が芽生えるのは幼児期…4、5歳?だったかな、それくらいだと考えられていたけれど、実験してみたら1歳と少しだとまだ自分の好きなもの=相手の好きなものだけれど、1歳半過ぎてくると自分の好きなもの≠相手が好きなものということもあるを理解し始めていて。ーー

ブロッコリーとお菓子を使ったこの実験はNetflixの「赤ちゃんを科学する」というドキュメンタリーでも取り上げていたので興味がある方はどうぞ!

意外と早い段階から、ひとは自分と他人への区別というものを意識しているのかもしれませんね。

『モーモーまきばのおきゃくさま 』のまきばは、このうしにとっての「自分の世界」自分にとっては心地よくても、他人にとってはどうだろう。帰ってしまう人もいるけれど、残ってくれる人もいる。人生の終わりに、私のまきばに残ってくれる人はいるのかな、なんて考えてしまいます。

そう、時間内にはお話出来なかったのですけれど、この本の好きなポイントをもうひとつご紹介してこのまとめを終わりにしたいと思います。この本にはいつもどこかしらに太陽と月が描かれているのですが、いつもそこにはのんびりとした笑顔が浮んでいます。たとえ雲に隠れていても、沈もうとしている時でも、その大きいニコニコの端っこがちゃんと描かれている。うれしいことも、かなしいことも、人生にはいろんなことがあるけれど、いつも誰かしらが見守ってくれている。太陽と月の笑顔に、マリー・ホール・エッツさんの眼差しのあたたかさを感じて、この本がより一層好きになりました。

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今日も最後は選曲・歌い手 扇谷一穂の「今日の子守唄」。

ー 『モーモーまきばのおきゃくさま』についてのお話しの後に歌う歌、
今回は、うしが出て来て尚かつ牧場についての歌。というこの一曲を選びました。

「Old MacDonald Had a Farm」古いアメリカ民謡で、日本語でも「ゆかいな牧場」として歌われていて「マクドナルド爺さんの牧場」は「一郎さん〜六郎さんの牧場」へと変化を遂げています。 分身の術。         

この歌、もともとは一番毎に出てきた動物の名前が一匹ずつ増えて行くという方法で歌われている歌。六番目ともなると、盛りだくさん過ぎてもうてんやわんやの状況。その感じが賑やかな牧場の雰囲気を表していると言えばそうなのですが、歌い手泣かせの一曲です。「本のおはなし」の中では、やっぱりちょっと長いので、うしの出てくる部分だけをピックアップして歌ってみました。

様々な動物の鳴き声の出てくるこの歌。アメリカで、犬は「バウバウ」日本では「ワンワン」など、鳴き声の表現の違いに注目して歌ってみても面白いかもしれませんね。

「ゆかいな牧場」
小林幹治作詞・アメリカ民謡

いちろうさんの 牧場(まきば)で
イーアイ イーアイ オー
おや ないてるのは ひよこ
イーアイ イーアイ オー あら
チッチッチッ ほら チッチッチッ
あっちもこっちも どこでもチッチッ
チッチッチッ ほら チッチッチッ
あっちもこっちも どこでもチッチッ
いちろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー

じろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー
おや ないてるのは あひる
イーアイ イーアイ オー あら
クワックワックワッ ほら クワックワックワッ
あっちもこっちも どこでもクワックワッ
クワックワックワッ ほら クワックワックワッ
あっちもこっちも どこでもクワックワッ
じろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー

さぶろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー
おや ないてるのは しちめん鳥
イーアイ イーアイ オー あら
グルグルグル ほら グルグルグル
あっちもこっちも どこでもグルグル
グルグルグル ほら グルグルグル
あっちもこっちも どこでもグルグル
さぶろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー

しろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー
おや ないてるのは こぶた
イーアイ イーアイ オー あら
オィンオィンオィン ほら オィンオィンオィン
あっちもこっちも どこでもオィンオィン
オィンオィンオィン ほら オィンオィンオィン
あっちもこっちも どこでもオィンオィン
しろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー

ごろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー
おや ないてるのは こうし
イーアイ イーアイ オー あら
モーモーモー ほら モーモーモー
あっちもこっちも どこでもモーモー
モーモーモー ほら モーモーモー
あっちもこっちも どこでもモーモー
ごろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー

ろくろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー
おや ないてるのは ろば
イーアイ イーアイ オー あら
ヒーホーホー ほら ヒーホーホー
あっちもこっちも どこでもヒーホー
ヒーホーホー ほら ヒーホーホー
あっちもこっちも どこでもヒーホー
ろくろうさんの 牧場で
イーアイ イーアイ オー

次回、第3回は松尾由佳の選書で『わにわにのおふろ』。
わにわにシリーズのお話をします。お楽しみに。


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