[本のおはなし vol.3] わにわに
本のおはなしも3回目。
今回は松尾由佳選書で『わにわに』シリーズです。
1作目は『わにわにのおふろ』。そして「ごちそう」「おでかけ」「おおけが」「あかわに」と、現在5冊出版されています。
2000年初版の『わにわに』との出会いは自身の幼少期ではなく、昨年の夏。現在開催中の『わにわにの絵本展』の広報物や図録のデザイン依頼をいただいたのがきっかけでした。
絵本を手に取った最初の印象は「あれ?かわいくない!」。
そう、わにわにはいわゆる「二足歩行する、キャラクター化されたかわいいワニ」ではなくリアルな「ワニ」なのです。
ボックスセットも!
どちらかというと「こわい」イメージのわにわに、ところがページを開いてみると…一気にわにわにの虜に!
私たち二人がわにわにのどこに惹かれたかというと…
「『ずり づづづ』『じょろろーん』などのオノマトペ」「生活感のあふれる家」「リアルなワニがあたりまえのように人間の生活をしているおもしろさ」「わにしょうゆ・わにのりなど、絵本内に気になる商品が…!わにしょうゆのポスターも貼ってある。わにわにが多角経営してる?それとも広告塔として契約してるタレント?」「あかわにとわにわにの関係。あかわには突然やってきて、そのまま仲良く暮らしました、とはならずに日が暮れたらカシャカシャ帰っちゃう!それがいい」「文字が活字ではなく、絵と同じ木版画で作られてる。その文字が、わにわにっぽい。わにわにの『ずり づづづ』の音や声もざらっと荒削りなイメージになるのはこの文字からきてるのかも」
そうそう、展覧会準備を終え、息子にわにわにシリーズを改めて読み聞かせたところ、この半年で反応が大きく変わりました。夏には「うりうり うりうり オーイェー」で笑う(きっと私が急に歌い出したのがおかしかったのでしょう…)それ以外は「?」でしたが、1歳8ヶ月の今は随分とじっくり楽しめるようになりました。特に「わにわにのおでかけ」の屋台シーン、「わにわにとあかおに」のあかおに登場シーン、プリンのページが大好き。怖がることもありません。
そして今回の展覧会の話へ。
実はわにわには石神井公園の「わに騒動」をきっかけに生まれたおはなし。
この辺りの詳細は展覧会及び展覧会図録でお楽しみいただきたいところなので、石神井公園へのお散歩ついでにぜひふるさと文化館へ。
おはなしを終えた週末、作者の小風さちさんの講演会へ扇谷さんとふたりで行きました。とてもやさしさに溢れた、それでいてはっとさせられるおはなしをたくさん聞いてふたりで暖かい気分。そうそう、わにわにに出てくる「プリン」のモデルは「プッチンプリン」だそうですよ。
講演会の中で「リアルとリアリティは違う」という言葉がとても印象に残りました。絵本に必要なのはリアリティ。以下は私のメモから。
「おはなしにリアリティがないと子どもは本を閉じてしまう。そして一度閉じられたら、本の中から何を叫んでも無駄。そのリアリティを子どもは大人以上に嗅ぎ分ける」「作者が見せたいその世界への橋を渡ることができた経験が子どもにとってどれだけ大事なことであるか、そしてその橋が揺るぎのない橋であったかどうか、その足の裏の感覚でしっかり覚えている。」「絵を語る『言葉』と言葉を語る『絵』ふたつが同じ方向に向いていること」「言葉は人の体を通って音になる。言葉にはボディがある。そしてそれを実現するのが絵本の読み聞かせである」「作家は子供を胸に抱いているように丁寧に言葉を選ばねばならない」「どんな短い言葉でも、その場面に確実で冷静な意図があるか、そこにリアリティはあるのか」
展示もされている『わにわにのかるた』のお話も。
既刊絵本から絵や言葉を選ぶのではなく、かるたもすべて書き下ろし!
なんともニヤニヤしてしまう絵と言葉がここにもたくさん。
友人たちからも「うちの子もわにわに大好き!」「これを読んでからおふろに入るのが日課になってる」などなど展覧会のお知らせに反応がたくさんありました。「わにわに」はすっかり子どもたちに人気の定番絵本になっている様子。
今日も最後は選曲・歌い手 扇谷一穂の「今日の子守唄」
「わにわに」がテーマのおはなしということで、わにに因んだ子守唄、探しましたよ。
「See you later alligator goodbye song 」
Goodbye, goodbye. It's time to go.
Goodbye, goodbye. I don't want to go.
See you later. Alligator.
Bye bye bye Butterfly. Goodbye!
幼稚園での帰りの会に歌うイメージなのかな。laterとalligator、bye byeとbutterflyの韻を踏む感じが歌っていて気持ちの良い、かわいい歌です。
梅も咲いてそろそろ桜のつぼみも膨らむ季節。次回の「本のおはなし」は「春」の絵本を2冊紹介します。おたのしみに。
『春』五味太郎 著
『ピッキーとポッキー』 嵐山光三郎 著 安西水丸 絵
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