[本のおはなしvol.25]「かぼちゃ人類学入門」
9月に入り、金木犀の香りや日の短さに秋を感じます。
三週間ぶりとなった本のおはなしは『かぼちゃ人類学入門』
出会いは「たくさんのふしぎ」という1985年4月創刊の福音館書店の月刊誌。他の月刊絵本は乳幼児向けのものですが、こちらは小学生向きの科学雑誌。
幼少期、両親がずっと福音館書店の月刊誌を定期購読してくれていました。「たくさんのふしぎ」は「こどものとも」や「かがくのとも」を卒業した我ら兄妹の最後の定期購読、創刊号から1991年くらいまでのものが実家に揃っています。
「科学雑誌」と言っても、「かがくのとも」と同じく理科的なものだけでなく、普段の生活や文化、哲学的なものまで「不思議」に気がついたり深めていくきっかけをくれる良書だらけです! そうそう、夏休みの自由研究でも「たくさんのふしぎ」にたくさんお世話になりました。
そんな「たくさんのふしぎ」の中でも、小学生のわたしを虜にした一冊が『かぼちゃ人類学入門』です。
扇谷さんに、わたしのセレクトにしては意外!と言われました。そう「ちょっと怪しげで楽しそうな…蠢いている感じ…」そんな表紙を開いてみると…
かぼちゃでできた「かぼちゃ島」へは、福岡県門司港から連絡船「かぼちゃ丸」で夢時間。大きなかぼちゃからいのちが芽生え、いつしかかぼちゃ人が生まれた。この本は、そんなかぼちゃ島とかぼちゃ人の歴史、そして生活を紹介しているかぼちゃ島の観光案内であり、タイトル通りに「かぼちゃ人類学」なのです。
かぼちゃ島はかぼちゃ製品をたくさん輸出して大儲けをしたこともありました。でも掘り尽くされたかぼちゃ島は死にかけます。そこからかぼちゃ人は生活を変え、かぼちゃの恵を大切に、貧しくとものんびり楽しく暮らすことを選びます。かぼちゃから粉や酒を作る方法、かぼちゃ温泉、買い物や銀行、そして選挙の話まで、かぼちゃ人の暮らしを覗いてみたらあなたもかぼちゃ島に移住したくなるかも。
作家の川原田徹さんは画家、かぼちゃに惚れ込んでかぼちゃばかり描いているというような紹介がされているけれどどんな方なんだろうと調べてみたら…なんと!
『かぼちゃ人類学入門』1991年6月発行。その後の1994年から川原田さんは「トーナス・カボチャラダムス」と名乗るようになりました。そして2002年に「カボチャドキヤ民主主義人民共和国」を創設し、門司に「カボチャドキヤ国立美術館」が完成!
https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00700/
http://kitakyushu-guide.sun.bindcloud.jp/pickup/kabocha.html
設定が細かく(絵も解像度が狂ったかのように細かい)昭和の門司の街並が一部モデルにもなっていて、かぼちゃ人とかぼちゃ島は「リアリティのあるファンタジー」だなぁと思いきや、かぼちゃ愛ゆえに「リアルファンタジー」になっていました。現実世界にかぼちゃの国が!
そんなこんなで色々と調べているうちに本日は『かぼちゃ人類学入門』のおはなしのはずが『トーナス・カボチャラダムス入門』のおはなしに。そして…なんと来年2022年に「カボチャドキヤ国立美術館」は閉館予定…!どうにか閉館前に行けますように…
さて、今週の子守唄は「かぼちゃ」に因んだこの歌を。
あ、でも、歌というよりはじゃんけんの掛け声のような。
遊び歌、わらべ歌に分類されるのかな。
作者不詳、タイトル不明。
お寺の和尚さんが
かぼちゃの種をまきました
芽が出て ふくらんで
花が咲いたら じゃんけんぽん!
小学生の子どもに聞いたら、「今はこうだよ。」という、この歌のもっと長いバージョンを教えてくれました。
どうやらこの歌、進化を続けているようです。
2021年バージョンはこちら。
お寺の和尚さんが
かぼちゃの種をまきました
芽が出て ふくらんで
花が咲いて 枯れちゃって
忍法使って 空飛んで
東京タワーにぶつかって 救急車で運ばれて
ぐるっと回って じゃんけんぽん!
花、枯れちゃうのね!そして和尚さん、忍法使えるようになってる!
など、いろいろと謎は深まるばかり。
数年後にはまた更なる進化を見せてくれるのでしょうか。
気になります。
来週木曜日の本のお話は、世界のいろいろな挨拶についての本。
『世界のあいさつ』(みるずかん・かんじるずかん)
長 新太 (著), 野村 雅一 (監修) 福音館書店