【読書記録】伊予原 新「八月の銀の雪」
今回は伊予原新の作品「八月の銀の雪」を読んだ。この作品は全部で5つの物語が収められている短編集である。
表題の「八月の銀の雪」は就職に苦戦している修士の学生がコンビニで働く博士課程の留学生と出会う話である。八月に降る「銀の雪」とは一体何なのか、是非読んで確かめてみてほしい。
私は今回の作品をほぼジャケ買いのように買ってしまった。そのくらい表紙の絵が美しい。親子が夕暮れの海でダイナミックに躍動するクジラを観ている絵なのだが、これは二つ目の作品「海へ還る日」からのものである。上野にある国立科学博物館で実際に絵を描いていた人物からインスピレーションを得て生まれた作品で、どことなくリアリティがあり心温まる作品となっている。
この短編集はどれも心温まる話が収められており、いわゆるミステリー的要素やハラハラドキドキの展開はない。その分、文学的に感情へ訴えかけてくるようなものが多い。
そしてこの短編集で根底を流れているテーマは 親を失った者たち だろう。表題の「八月の銀の雪」以外の作品では親を失うということが大きなイベントとして物語にかかわってくる。
軽いタッチでもないがかといって悲壮感が漂うわけでもない、とても繊細で読みやすい形でこれらの物語が語られている。
私としてはこの作品は”何も起こらない”作品の中では傑作のひとつに数えられる素晴らしい作品だと感じた。緻密で理論的で科学的なテーマを扱っていてもどこか温かい、そんな作品が心を温めてくれること間違いなしの作品です!
おわりに
少し期間が空いてしまってすみません。色々と忙しい時期だったもので、、
夏休みになったらまたまとめて色々書いていきたいと思います。
最近は暑さがひどくて家から出たくない日が続いています。ここまで温暖化が進んだのかと思いきや、昨年の方が6月は暑かったみたいですね。体調に気を付けて夏を乗り切っていきましょう!