【読書記録】吉田修一「おかえり 横道世之介」
今回は前回の作品の続編にあたる、吉田修一の作品「おかえり 横道世之介」を読みました。
この作品は前回の読書記録で紹介した「横道世之介」から何年か経ち、大学を卒業した世之介の生活を1年間分切り取った作品になっています。こちらももちろん、大きな事件は起こりません。あくまでも ”まあこのくらいならありそうだな” というラインを上手に攻めながら、要所でくすっと笑わせてくれる作品になっています。
大学時代が終わって、前作で出てきた世之介以外のキャラクター達はまったく出てきません。ただ、世之介の面白さは健在。やっぱりこれでこそ世之介だよという感じは存分に感じられます。もちろん前作を読まなくても、あまりつながっているわけではないので十分楽しめます。
やっぱりこの作品の魅力は世之介の人柄です。今回は新たな友達 コモロン と共にバブルが弾けた後の日本を生きていきます。なんとなく のほほん としていて地に足がついていない世之介。ただ周りの人はその能天気さに救われます。
そして私も読んでいると、世之介の能天気さに救われます。なんだか自分の悩みなんてちっぽけだなとか、なんでこんなことで悩んでいるんだろうと気が付かせてくれるような気がするのです。
なんとなく落ち着かなかったり、不安な時に読む本だと思います。
そして前作から大きく変わったのがスケール感。前回は大学と実家近辺で完結していた物語が一気にフィールドを広げます。
とはいっても中心となるのはやはり世之介の家の周りなのですが、アメリカに行ったり、世界的なビッグイベントが出てきたりと物語のフィールドは間違いなく大きくなっています。
ここだけ聞くと「ザ、凡人」(こんなこと言ったら怒られそうですが、、)である世之介に似合わない感じがあると思いますが、実際には実に自然な形でそれらのフィールドに繰り出します。前作から大きくパワーアップしたポイントなので是非そこに注目して読んでみてください!
おわりに
前作がものすごくいい作品だったので、文庫本のコーナーにこの本を見つけた時に即買いしました。ミステリーではないので何回読んでも楽しめて、何回もいい気持ちになれるはずです。こんな感じの小説が世の中にもっと増えたらいいのにななんて思ったりします。
さて次回は、あの話題作です! お楽しみに!