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バンドマンは自営業だという自覚を持ったほうがいい

この記事はもう消えてしまった昔のブログに僕が2015年頃書いたものです。当時はまだアイドルPをやっておらずインディーズバンドの制作をやっておりました。「バンドマンは自営業だという自覚を持ったほうがいい」というツイートの反応が良かったことが書いたきっかけとのこと。

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バンドマンは自営業だという自覚を持ったほうがいい

そもそも「バンド」とは何なのか。

堅苦しく書くと、
「1名以上の人が集まってそれぞれが異なる楽器や異なるフレーズを演奏し、他者の前で実演する集団である」
となると思うのです。
これは趣味バンドもプロバンドも当てはまる「バンド」としての定義なんじゃないかと。そして「プロ(もしくはプロ志向)バンド」の定義は、バンドの収入で生きていくことがゴールですから「1名以上の人が集まって、"収益を得ることを目的に"それぞれが異なる楽器や異なるフレーズを演奏し、他者の前で実演する集団である」になりますよね。言うまでもなく"収益を得ることを目的に"というのがとても重要です。日本の商法によると「会社」の定義は「商行為ヲ為スヲ業トスル目的ヲ以テ設立シタル社団」ということらしく、プロバンドはまさに「会社」の定義と合致するんです。

バンドを会社として捉えた場合、バンドは恐らく「BtoC(会社が一般人に売る商売の形態)のメーカー」に分類されます。つまり、iPhoneを作って自ら一般に売っているApple社なんかとやってることは全く同じってことです。

「曲やグッズ作り」は「iPhone、iMac作り」と同じで「研究開発、製造部」的な仕事であり、「ライブ」は「AppleStoreでの実演販売」と同じで「販売、営業部」的な仕事になります。考えれば考えるほどやってることは一緒です。

やっぱり、プロバンドは会社であり、バンドメンバーは自営業者(社長)です。実際はバンドのリーダーやフロントマンが社長で、他のメンバーが役員みたいな関係になるのかな?

自分たちを会社だと考えると、プロを目指したバンド活動っていうのは結構しんどいです。並み居る競合企業(他のバンド)と競争して収益を得るためには色々頑張らないといけません。世の中のニーズの分析や競合企業との差別化、自社の強みの強化、他社との連携強化などなど…。想像するだけでしんどい。自分たちはただ自分が好きな音楽をやって受け入れられたいだけなのに。

でも現実にはそういう会社としての能力を持った人間がバンド内に必要なのです。

バンドで食っていきたい人の多くは別に経営者になりたい訳ではないのに経営者にならなきゃいけないっていうのが辛いところです。

過去にノープランで好きにやってうまくいった人たちもいるのでしょうが、超超超超ラッキーでしかないです。宝くじが当たった人の人生を知ることが自分の人生プランの参考にならないのと同じで全く参考にならない!もしかしたら自分がやりたいことが世の中にマッチしていたのかもしれないですし、その人がもともと上記の"会社的活動"を無意識にできる素養を持っていたのかもしれません。心なしか、売れてる人たちには「他社との連携強化」に必要である一定以上のコミュニケーション能力があったりする気がします。

さてさて、ここまでずっと暗い話をしていましたが、別に「全員今風のイケメン美女に整形して、売れ線の曲を作って、演奏死ぬ気で練習して歌え」なんて言っているわけではありません。確かにイケメン美女が演奏上手くて売れ線の曲歌ってたら多分ある程度売れると思いますが(笑)
会社は「収益を得ることを目的に設立された組織」だと言いましたが、それと同時に「ある一定のヴィジョンを持った組織」であるとも言えます。ヴィジョンとは、「自分たちはこういうことをしたい」「自分たちの活動で世の中をこうしていきたい」「自分たちの活動で誰かにこういうものを提供したい」といった会社の目標であり、野望のことです。バンドは会社と同じである以上、このヴィジョンも持っているべきです。バンドをやるなら絶対に野望は捨てるなってことですね。

つまるところ、「プロバンドはやりたいことをやるのを諦めずに、かつ目下利益を得られる様に努力し続けるべきだ」ってことです。このバランスってとっても難しいです。
"利益を得る"="評価される"ですから、やりたいことをそのままストレートにやると世の中がついてこれないのであれば、今の世の中でも通用するようにアレンジして出すだとか、そんな工夫が必要です。人と話すのが苦手でもいろんな人と会って地道な営業活動をしていくのも頑張らないと。

余談ですけど、世の中がついてこれなかった例はセガのゲーム機「ドリームキャスト」ですね。今でこそスタンダードなオンライン要素や携帯端末との連携などを備えていたのですが時代がついてきませんでした。結果、セガは家庭用ゲーム機から撤退したものの、今になって評価されているという、"死後評価された画家"みたいな状況になりました。一方iPhoneは既に普及している技術を集めて開発したもので、あくまで時代の半歩先を行った製品でした。だからヒットしたんですね。ちなみに大昔Apple社は「ニュートン」というスマホみたいのを作って世の中がついてこれず大失敗をかまし、スティーブジョブズはその責任を負って一度Apple社を追い出されているのでした。

そして音楽といっても、その人物やバンドのキャラクターやヴィジュアルも含めて評価される世の中ですから、そこも手を抜いてはいけないです。曲は良くてもそこで変に減点されたらもったいない。
「キャラクターやヴィジュアルに頼るのは格好悪い、俺は音楽で勝負するんだ!」と、この記事を読んで思っているそこのアナタ!!アナタの気持ちもすごいわかる!!わかるけど、現実はそうだから仕方ない!

そうやって四苦八苦頑張って、少しずつ自分たちのやりたいことをそのまま出せる世の中にしてしまえば、あとはやりたいことを思うがままにやれます。ミスチルだから、バンプだから、RADだから買うみたいな状況です。THE BEATLESも晩年はかなり変態的な曲を出していますがそれも売れましたよね。

だから、売れたら本当に偉いのはバンドなんですよね。事務所もレコード会社も本質的には彼らの支えになる程度の力しかない。逆を言うと、バンドが他力本願になるのはそもそもおかしいっていうことなんです。それに売れた時に一番儲かるのはバンドでいいはず。ただ現状、CDを作る時にお金を出すのがレコード会社だったり、グッズを作る時は事務所だったりするので、この資本主義の世の中だとお金を出した人が決定権をもって然るべきでバンドの立場は弱いのですけどね。
これからはクラウドファウンディングで一般のファンからもお金を集めることもできますし、きっとこの図式も変わっていくと思います。

この先もっとバンドの自主性が求められるはずです。
僕は少しでも彼らのやり方の助けになるように色々経験してアドバイスしたり、一緒に考えたりしていきたいと思っています。

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↓ここからは新しく書いてます。
ちょっと今より文章が若いですが、考えの本質は今も変わってないので出してみました。「売れたら本当に偉いのはバンド」のくだりはケースバイケースかなと今は思います。結局、事務所もレコード会社もバンドのチームメイトなので誰がヒットに貢献したか次第かと。資本関係でレコード会社や事務所が立場強いですけど、バンドがお金持ちになってバンドがそれらの会社を雇うみたいな方式が出てきたら面白いなぁと勝手に思ってます。海外ではエージェントシステムとしてそれが存在しますよね。

この記事から5年が経ってサブスクもクラファンも一般化しましたね。圧倒的に自主発信がしやすくなってすごく自由になりました。それぞれが思った通りに発信して、それがウケればインターネットで話題になり、事務所やレコード会社の目に触れやすくなっています。(そしてそれらの会社に所属することが正解とも限らない)

音楽に限らず、出版社は「小説家になろう」に投稿された異世界転生モノを探し、面白いYouTuberは地上波テレビに出演する時代です。昔はまず世の中に出す権限を持っている人(事務所、レコード会社など)に好かれないと大衆に作品の是非を問えない状況でしたが今はダイレクトに届けることができます。後ろ盾がない分、倫理観なども含めたセルフプロデュース能力が求められていて、限度を知らないYouTuberに逮捕者が出たりまた違う問題がでていますけどね。それでも僕はアーティストにとって今はとても良い時代だと思います。

最近はエンターテイメントの統合が加速していて、米津玄師さんみたいなマルチクリエイターが強かったり、音楽×小説みたいな異ジャンル連携が増えたり、全方向で勝負することが求められてますね。僕は自分に才能がないのでチームで闘うことを選びました。アイドルは比較的参入しやすい総合エンタメの世界の最先端だと思うんですよね。

もっと面白いことが起きますように。

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