tipToe.楽曲解説Vol.3 - 星降る夜、君とダンスを
概要
・タイトル 星降る夜、君とダンスを
・ヨミ ホシフルヨル、キミトダンスヲ
・楽曲番号 14
・作詞 瀬名航/本間翔太
・作曲 瀬名航/本間翔太
・編曲 瀬名航
・振付 YUKO
・制作時期 2年生1学期編「thirdShoes.」
コンセプト
リリース作品単位で綿密に設計して作った夜にまつわる4つの物語「thirdShoes.」のうちの1作。
「thirdShoes.」全体のテーマは
・夜にまつわる物語であること
・前作「magic hour」より一歩踏み込んだ表現に挑むこと
である。
本編の主人公には4人の同級生の友人がいる。学校ではみんなで楽しく過ごしているのだが、家に帰って独りになると思い出したかのように憂鬱な気持ちが湧いてくる。その時は深刻で悲しいのに学校で友人に会えば忘れてしまう程度に脆い。学校ではまさか友人がそんな気持ちなっているなんて気付きもしない。
「thirdShoes.」はその4人の友人を1曲ずつ主人公に据えて、とある同じ一夜に起こった4つの出来事を描いたオムニバス作品となっている。
この曲は儚く美しい楽曲の多いthirdShoes.の中で唯一楽しくアイドルらしく作っていて、「楽しくて終わってほしくない夜」がキーワード。
tipToe.にセンターはいないものの曲によっては中心となるメンバーをなんとなく決めているものもあり、この曲は日野あみがそれに当たる。
楽曲
夜の遊園地のようにカラフルでキラキラと楽しい印象。エレクトロな四つ打ちダンスチューンにしていて、ベースは瀬名君の強いこだわりのもとtipToe.初のシンセベースを採用。ギター以外全て打ち込みで作られている。
瀬名君に1回リテイクして2回目に来たデモに今のサビメロがあり、その時点で完全勝利を確信した。
イントロの長めのソロパートは最初から日野あみが歌う前提で作った。
こういう曲は普通に作ると割と単調になってしまうのだが、2Aメロの後ろの手拍子を敢えて複雑にしたり、2サビの前の「ワンツー」の後にもう一捻り入れたり、2サビ後の展開で変拍子を導入したり瀬名君と本間で何度も話し合って色々とネタを盛り込みまくっている。落ちサビの後ろでつみ・うみ・まなかが3人で3和音のハモりをやっていてそれも見所の一つ。大サビで転調するのだが、転調のタイミングはかなり議論した記憶がある。
2Aの後ろの手拍子があまりにも複雑すぎてできる人が一握りになってしまった。難しくしすぎたと今では反省している。
サビ前に「ワンツー」と囁き声でカウント入れるのをいつかやりたいねと結構前から瀬名君と話していて、ついにここで導入した。1サビと2サビで「ワンツー」のテンションが違う。デモ段階ではどちらも同じでレコーディングの時に実際に寧々に歌ってもらって違いがあった方がよかったので変更。
この楽曲は初出のシングル「thirdShoes.」後、アルバム「daydream」制作時に日野あみと都塚寧々のボーカルリテイクを行った。その時はライブでのテンションが反映されて日野あみは力強く、都塚寧々の2回目のワンツーは限界突破している。寧々には「いやー、もっといけるよね、だってライブだともっとやれてるし」と詰めて何度もテイクを重ねてもらった。本人は「そう言われるとなにも言えねぇ…」という感じの顔をして頑張ってくれた。
2サビ後のハイパーピコピコタイムはまさに瀬名航の真骨頂という感じで好き勝手やってもらった。
ちなみにこの曲は本間も作曲クレジットが入っている。一般的に"作曲"というのはメロディとコードを考えることで、今回は本間がある部分のメロディをこんな感じにしたいと歌ったものを参考に瀬名君に送ったらそのまま採用されたからである。とは言えその程度であって、実際は作曲そんなにやっていない。瀬名君と本間は共作に近い感じで作ることが多いのでクレジットについては割と曖昧だったりする。
歌詞
blue moon.と違ってもっと現実的に「君」と過ごす楽しい夜。友達が泊まりに来て一緒にくだらない話をしたり、ちょっといい話をしたりする時間はキラキラして宝物みたいで楽しいけれど、いつかそれも終わってしまうからそんな大切な時間とどう向き合うかという話。主人公はこの時間が楽しいと思いつつも必ずいつか終わってしまうことにも同時に気づいている。
この曲は2年生の夏の話で、この曲の主人公はこの後2年生の終わりに家庭の事情で東京に引っ越してしまうことが決まっていて、それを友人たちに言えていない。引越し前の最終登校日の話は「アフターグロウ」という曲で本編の主人公視点から描いている。この曲でいう「君」は本編の主人公のことであり、この頃から別れの覚悟を決めていたので「アフターグロウ」では割と気丈なように見えたりしている。そしてこの曲の主人公の東京に引っ越してからの話は3年生編の「Letter」に続く。
本間が伝えたテーマに沿って瀬名君がまず全部書いてくれたのを本間が見ながら部分的に書き換えていたらいつのまにか半分ぐらい書き換えていてそれが全体的に見るといい感じで結局歌詞も共作になったという経緯がある。最後の細かい部分は二人で話して調整。
歌割はAメロをつみ・まなか・三原さん・寧々で分けつつ、Bメロをあみ・成瀬で分割が基本構造。1Bと2Bであみと成瀬の歌う順番が逆になっているのは1Bで成瀬に「だからもう迷わないよ私は」を2Bであみに「思いつき絡みも今日は許してよね」を歌って欲しかったから。
歌詞では「時間」が重要なキーワードになっていて、この歌詞ができてからオケの落ちサビ部分に時計の針が動く音を追加した。この曲からtipToe.は時間の有限性を意識した曲が増えてきた。第1期tipToe.の物語の折り返し地点であり、ここから加速していく。
タイトルの"星降る夜"が主人公たちが過ごす楽しい夜以外に何を指しているのか気づいた人がいたら嬉しい。適当につけた訳ではない。
雑記
TOKYO IDOL FESTIVAL2018の初ステージの最後の曲として初披露した。TIFの大舞台の最後に新曲をもってくるのはなかなかチャレンジだと思ったが、この曲はなんだかいける気がした。そして当然楽曲制作はTIF出演が決まる前から行われていた訳で、あれだけシリアスな曲が多いthirdShoes.の中で唯一残っていた未発表曲がこれだったのはなにか不思議なものを感じていた。
夢日和と並んで最後の曲にしやすく、構成上この曲がライブのピークになる展開が多い。その為、この曲に繋がる特殊なInterlude(繋ぎ曲)がいくつか存在し、第1期ではCider Aquarium、僕たちは息をする、夢日和の3曲どこからでもシームレスに繋げることができる。
YUKO先生による振り付け。2Aの自由時間がとても好きで、あの自由時間を持て余さず楽しく動けているのは素晴らしいことだと思う。
2サビ前で毎回あみがアドリブするの凄く楽しくて毎回見るの楽しみだった。
一回あみが体調崩して欠席した時は、イントロを成瀬に任せたら成瀬が先陣切ってお客さんにシンガロングするよう煽ったり、あみが編み出した2サビ前のアドリブを代わりに真叶がやったり、あみが欠席でもあみの存在感が凄い曲。
この曲は息継ぎやメロの高低差が激しい。その上ダンスも運動量が多いから大変なのに笑顔でパフォーマンスするメンバーには毎回グッとくる。
「ひとりごと」の頃は目の前のことで頭がいっぱいでいつまでも続くように感じられた友人との楽しい時間もこの曲になると同じ時間でも捉え方が変わってきている。本編主人公は「The Curtain Rises」ぐらいまでは目の前のことでいっぱいで「夏祭りの待ち合わせ」や「ないしょとーく」ぐらいから時間を意識し始めたのかなぁ。僕の中で、割と素直で年相応な本編主人公と比べて星降る夜の子は「不安でもちゃんとしてなきゃいけない」みたいな義務感を持ってるイメージがあって、アフターグロウでもLetterでもそういう振る舞いをしている気がしてる。大人っぽいんじゃなくて頑張ってるだけなので微妙に闇を感じる。
手前味噌ながら「君と笑って進め、戻れなくても」が一番好きなフレーズ。