小説「羊と鋼の森」を読みました。
宮下奈都さんの「羊と鋼の森」を読みました。
ピアノの調律師を目指す青年の成長を追った作品です。
読んだ後に知ったのですが、映画化もされておりまして、主人公の青年・外村を山﨑賢人さんが演じておられます。小説を読んで描いていたイメージにピッタリでした。
音楽とは無縁だった外村が調律師を目指すようになったきっかけは、彼の通う高校にやってきた調律師の奏でた音を聴いた事でした。
私も同じような経験をしたことがあります。
私の場合はピアノではなく、バイオリンでした。
会社で式典の開演曲を探している時に候補に挙げられたうちの一人、五嶋龍さんの音色に、思わず全身に鳥肌が立ちました。
決して耳をつんざく事のない、伸びやかに艶のある音色。
一目惚れならぬ、一聴惚れしました。
私の場合はそれっきりでしたが、外村はピアノの世界へと歩みを進めていきます。
外村が生まれ育った場所は山間の集落です。
幼いころから豊かな森の自然の聲を聞いてきた外村は、音楽の深い世界観を「森に似ているもの」として捉えました。
羊・鋼・森はそれぞれピアノの構造部品です。
「羊」は弦をたたくハンマーの素材が羊毛フェルトであること
「鋼」は弦が鋼鉄であること
を指しており、
「森」はそれらを繋ぐパーツでもあり、全体を構成する材料でもあります。
つまりは「羊と鋼と木で作られているピアノそのもの」が森であり、
それらのパーツと演奏者、ホールなどの環境、観客あらゆる要因が複雑に絡み合いながら生み出される音色の世界。それらまでも含めての「森」なのです。
外村は無事に調律師の学校を卒業し、複数の調律師が所属する会社に就職することができました。
調律師として、少しずつ経験を積んではいるのですが、一向に納得がいく仕事ができません。
自分は一体どこを目指すべきなのか、何が完成形なのか...…
どの様な職種でも当てはまると思いますが、求めれば求めるほど答えが見いだせなくなる事、ありますよね。
外村は「音色の森」に迷い込んでしまいます。
森の中にいるのか、外にいるのか、それが良い事なのか、悪い事なのか...…
迷いに迷い、それでも外村はコツコツと歩き続けます。
外村以外の調律師たちも、少なからず迷いを持ち続けているようです。
ふと、外村に調律師になるきっかけを与えた先輩が、あるひとつの「答え」を発します。
(調律師にとって一番大事なものは)「〇〇〇〇、でしょう」
私(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
長い思考停止の後、
私(そうだよね。)
納得です。
今、自分が立っている場所は間違ってはいないんだ。
でも、何かに迷っているんだ。
それが何かが見つけられないままなんだ。
そんな時に思い出すと支えになるであろう、そんな答えでした。
その答えを再確認させてくれた宮下奈都さんに感謝です。
全体的に、物語は静かに丁寧に進みます。
私の様に音楽の事が分からない人でも、楽しめる作品です。
なお、映画版のキャストは先述の山﨑さんの他に、鈴木亮平さん、三浦友和さん、上白石萌音さん、上白石萌歌さんなどです。
メイキング映像もあります。
この作品について、もっと深く知りたい方はこちらをご覧ください。
宮下奈都さんと「(ピアノの中の)羊」に関するエピソードなどが語られています。
とても清らかな作品でした。
ぜひお読みに、そしてご覧になってみてくださいね!
小説をお探しの際は、背表紙の可愛いヒツジさんが目印です^^