ひとんチのドアを勝手に触るな。

「あ、来た！...…　これ？　音したね？」
（黙ってうなずく妻）
私はそっと立ち上がって、玄関へ向かう。

カチャ。コト。カチャ。
ドアレバーを引いているのか？　鍵を差しているのか？
人影は見えている。一人。小柄。
ガサゴソと何かをしている音が数秒続いた後、何も音がしなくなった。
立ち去ったようだ。

物騒な時代だ。ケリを入れる体勢をとりながら、ドアを開けて外を確認する。
誰もいない。　耳を澄ませる。
どこかでカチャ。とドアを開ける音がした。

-------------　数か月前　-------------
「そう言えば、ドアをカチャカチャって触る音がするの。」と、妻。
　　「え？玄関の？」
「そう。」
　　「子供？　いたずら？」
「わかんない。」
　　「子供の声とかしないの？」
「話し声とかは何もしない」
　　「何回もあるの？」
「最近なくなったけど、ここ１年で２、３回かなぁ…」
　　「隣？」
「ちがうと思う。」

-------------　そして、今回。　-------------

リビングに戻り、誰もいなかった事を伝える。
「ふ～ん。」　　のんびりさんか。

私が住んでいるのは、ワンフロア３世帯のファミリータイプマンションで、エレベーターと階段に一番近い、フロアの端に位置する「１号室」だ。

私は真上の部屋だと結論付けた。　真上に住んでいる夫婦の「嫁」の仕業。
ほぼ間違いない。仕業と言うと聞こえが悪いので「間違い」としておこう。
スマホか何かに夢中で、ワンフロア下の我が家と間違えたのだろうと。私はその住人がエレベーターを使っている所を見た事がない。ゴミ出しなどの際も階段を利用しているようだ。

その嫁（もう決めつけてる。）がドアをイジって立ち去ったあと２、３秒でドアを開けて階段まで行って確認したが、エレベーターは動いておらず、階段を昇り降りする音もしなかった。という事は同じフロアなのでは？という事になるが、それは違う。
一番奥はいつもドアのキィィィィ音が凄いので開けたら必ずわかるし、隣はいつもツナ缶がああだのこうだのと独り言もカラダもデカイおっさんなので、隣でもない。

すると、上階か下階かという事になるのだが、靴を履いた状態で階段を音をたてずに降りるのは不可能だ。必ず音がする。
となると🤔？？？・・・！！！　上階っちゃ🤓💡

では、上階のどの部屋なのかという事だが、これは単純だ。
我が家と同じ位置にある、一番階段に近い部屋で間違いない。いくらボケていたって、階段曲がって3～4歩の部屋と、それよりももっと奥にある部屋を間違えたりはしないだろう。

最後にダンナか嫁か、という事になるが、あの小刻みな触り方からしてあれは男の仕業ではないと判断した。
私ならどうかと考えてみた時に、ポケットからキーをジュジャラッ！と出して、鍵穴にドゥグサッ！と差して、キーをガチャゴッ！と回し、ドアレバーをグワシッ！と引いて、ドアをバアァッ！と開けるのだ。最近ドアクローザーの油が漏れ始めたが、多分これが原因だと思う。連絡しなきゃ。
時々、ドアガードがかかっている事に気付かずに思い切り引いてしまい、ドガア”～～ン”ッツ！と、まるでドア枠ごと外れてしまったかと思える程の轟音を響かせる事がある位だ。ビックリした嫁さんに冷静に「やめてください」と言われるヤツだ。一応反省はするが、しかしながら、それこそがオトコというものなのだ。（一応添えておくが、そうではない男もいるし、そのような女性もいる。）

つまり、私の一般的な脳ミソが炙り出した犯人は、真上に住んでる夫婦の嫁さんだよ、という話でした。
もしくはカラス。　もしくはでかいネコ。

～　でもね、　～
でもですね、ドアの前に来ていきなりドアレバーに触る、っという状況がちょっとイメージできないのです。
ドアの前に来たら、まず「鍵を差す」そして「ドアレバーを引く」という手順ではないですかね？
いきなりドアレバーを引く＝その家は鍵をかけていないって事？？　そこが謎。