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9.ダブルワーク
〔これは全て私の過去の出来事です〕
ダブルワークが始まった。
新しく始めたホテルの仕事はハードだった。
客のチェックアウトから次のチェックインまでの数時間、何十部屋もの清掃と、ベッドメイクを2人1組でこなしていく。
勤務中はトイレに行く時間さえままならない。
時間との戦いだった。
しかし疲れ果て家に帰ると、更に家事が待っている。
そして、呑気にテレビを見ながら昼寝をしている夫をよそに、私は黙々と家事をこなした。
夫に家事を手伝ってもらおうという発想は私の中に1ミリもなかったし、夫も全くその気はない。
私が趣味で働いている位に思っていたのだろう。
娘が社会人になるまであと数年。ここさえ乗り切ればと、その思いだけで生きていた。
私には子育てに関して絶対に外せないポリシーがある。
それは、どんなに辛くても、理不尽でも、
娘の前では夫の悪口を言わない。
と、いう事。
何故なら私は、母親から父親の悪口を毎日呪文のように浴びせられて育ったからだ。
私は絶対に母のようになりたくない。
もっと上手に立ち回ってみせる。
母に幸せな姿を見せつけてやるんだ。
誰にも甘えられない。
やりきるしかなかった。