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映画『夜明けのすべて』(2024)丨人生は想像以上に大変だけど、光だってある

瀬尾まいこの同名小説を原作に、三宅唱監督が手がけた映画『夜明けのすべて』。観たのは少し前だったけれど、心に深く残る作品でした。

映画の中心には、PMS(月経前症候群)に悩む藤沢さん(上白石萌音)と、パニック障害を抱える山添くん(松村北斗)がいる。最初はお互いを理解できず距離があった二人が、徐々に心を通わせていく姿が、温かくもリアルに描かれていた。恋人でも友人でもない、不思議な「同志」のような関係性。この距離感が実に心地よかった。

プラネタリウムのシーン。藤沢さんの朗読に合わせて、星空が映し出される場面では、「地球が動き続ける限り、夜も朝もすべてが移り変わる」という言葉が胸に刺さる。暗い夜は怖いけれど、それがあるからこそ夜明けの光の尊さに気づける。自分の人生にもそんな夜があったから、余計に共感したのかもしれない。

この映画のいいところひとつ。「病気を克服する物語」に終始しない点。二人は最後まで病気と共に生きていく。それでも、自分自身を受け入れ、少しずつ歩んでいく姿が丁寧に描かれていた。特に山添くんが藤沢さんのPMSに関心を持ち、PMSについての本を手に取る場面には「理解しようとする」ことの大切さを感じた。何かを変える大きな行動ではなくても、その一歩が尊い。

栗田科学という職場の存在も魅力的だった。個々の事情を理解しつつ、過剰に踏み込まずに寄り添う環境が、二人の心を支えているのが伝わってきた。こんな職場が現実にもあったらいいなと思わずにはいられなかった。

上白石萌音と松村北斗の演技。本当に素晴らしい。二人とも静かな役柄ながら、その中にある感情の揺れが繊細に表現されていた。特に上白石萌音の声には惹き込まれるものがあり、彼女の朗読は映画のハイライトだった。

『夜明けのすべて』は、誰もが少なからず抱える「生きづらさ」に寄り添う物語だと思う。派手さはないけれど、静かに心に残る。自分の「夜」を抱えながらも生きていく人たちに、そっと寄り添うような作品だった。

____「about」

劇場公開: 2024.02.09|日本|ドラマ
キャスト: 松村北斗|上白石萌音|渋川清彦|芋生悠 ほか
監督: 三宅唱(「ケイコ 目を澄ませて」など)
原作:  瀬尾まいこ(「そして、バトンは渡された」など)
上映時間: 119分
配給: バンダイナムコフィルムワークス/アスミック・エース

____「story」

「出会うことができて、よかった」
人生は想像以上に大変だけど、光だってあるーー

月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さんはある日、同僚・山添くんのとある小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりだというのに、やる気が無さそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていたのだった。職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。

公式サイトより

*note for me*
Watched on: 2024.11
Platform: Netflix

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