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復刻版「よせあつめ瓦版・ランダム」その4(94.7.1~7.31)

1994年7月1日(土)
 京都市内のレコード店で、珍品CDを購入した。
 1枚目は、古今志ん生の「火焔太鼓」をラップに仕上げた「ラップ火焔太鼓」(ポニーキャニオン)。編集スタッフに落語を理解している方が多いらしく、実にうまくできていて、本編を知らなくても楽しめます。2枚目、3枚目は、中村とうよう氏のSP盤コレクションのCD化に取り組んでいるメタ・カンパニーから発売されていた「萬歳の至芸・砂川捨丸」「天才的話芸ミスワカサ・玉松一郎」です。
 特に、昭和13年に当時の吉本が中国戦地に派遣した「わらわし隊」の前線慰問報告漫才は、貴重な資料となるに違いない。
 ところで、新居町三ツ谷の宮脇書店さんで京阪神の食と味の月刊誌「あまから手帖」を置いてくれるようになったので、京阪神での食事処探しには便利になっている。
 学生時代から大阪の演芸場とか、古本屋・古レコード店探訪を続けているし、安い・早い・うまい店を探すのが好きで、いろいろな情報源を持っている。今では年に一回か二回しか行けなくなってしまったが、必ず、立ち食いのうどん屋とか、串カツ屋を覗いて値段を見るようにしている。私の持論として、いつでも5万円のディナーから190円の素うどんが食べられるのが都会の良い所であると思っている。(浜松が都会になれないのは、この点だけでも明白である。)

1994年7月3日(日)
 浜松中央3劇場で「RAMPO」を観る。
 サブリミナル効果、フェロモン効果、プロデューサーと監督の編集方針での対立など、話題は提供してくれていたが、結局、竹中直人の一人芝居にかろうじて助けられた駄作であると思う。乱歩生誕100周年という理由だけで、こんな映画をつくられたんでは、確かに邦画には観客は戻ってこないはずである。業界人すべてに言えることだが、パトロンやスポンサーはプロデューサーに任せて、もっともっと貪欲に勉強して欲しいです。

1994年7月10日(日)
 晶文社から5月に発行された「気持ちのいい生活‥外国人・老人・女からの提案」を読む。
 今や、テレビ・タレントになっているオスマン・サンコン氏の影響?で、中野区の鷺宮にはギニア人が200人生活しているそうである。その理由は、日本の古い生活が残っているからとのことであった。そのサンコン氏から「物質的にアメリカナイズするのはいいけど、日本人、アメリカの性格まで真似しようとしているわけよ。でも。人情なくしたら、ダメ。」
 町づくりからの提案として、長野県の小布施の町づくりを取り上げている。小布施町は、個人的に15年位立ち寄ってきたので、そのまちづくりは殆ど目にしてきたと言えるかもしれない。基本的に再開発という考え方には反対で、行政側の補助金も使わないで、木造の小さな建物をひとつずつ造った結果として、まちづくりになったという。「まちづくりに旗振りがいてはいけないんじゃないか」という意見。再開発者・行政側には異論はあると思うが、ひとつの正論ではあると思う。

1994年7月12日(火)
 東方出版から5月に発行されていた、足立克己氏の「いいたい放題上方漫才史」を読む。
 漫才作家生活40周年の芸能自分史であるが、当然、40年間の漫才師たちが登場してきて懐かしい。例えば、大阪・梅田に昭和44年から52年まで「トップホットシアター」という東宝系の劇場があった。お浜・小浜、はんじ・けんじ、千里・万里、いとし・こいし、横山ホットブラザーズ‥当時の人気芸人が出演していた。以前はストリップ劇場だったので扇形で端から非常に見にくく、芸人さんもやりにくそうな小屋であった。と、あった。
 私自身は50年頃に二度入ったことがあるが、確かにけったいな小屋であったと記憶している。それでも、当時全盛の千里・万里の漫才を聴けて、興奮して帰ったことがあった。

1994年7月17日(日)
 関西関係の書籍を2冊、入手できた。パルコ出版の「大坂の表現力」と文藝春秋の「こちら関西」である。
 一冊目は「大坂の表現力研究会」のシンポジウムをまとめて、大阪をプレゼンテーションした、後世に残る一冊だと思う。東京人の十代・二十代の若い人の大阪弁についての許容度が非常に上がっていると言われている。「ストレートで気持ちがいい」「面白い」「元気がいい」「温かみがある」。こうした新人類は、おおいに歓迎してもいいんではないでしょうか。
 二冊目は、小松左京氏が大阪産経新聞に掲載してきた「大阪情報発信史」の戦前編である。博覧会・エスカレーター・電車・遊園地・広告文化・プラネタリウムなど、関西からの初物が多かった事に、びっくりするとともに、テレビの初期のスポンサーは関西企業が多かったことを思い出した。

1994年7月18日(月)
 中島らもの「西方冗土」(集英社文庫)を読む。
「カンサイ帝国の栄光と衰退」とサブタイトルがついているように、関東人が喜びそうなカンサイ人の朝昼晩を考察している、笑える一冊である。
 コピーライターとしての中島らも氏の考察によれば、関西ではコピーライターは銭にならないとのこと。例えば、便秘薬が売り物らしい漢方薬局の入り口の張り紙に「便がドッサリ出る!」。中之島公園の屋台のたこ焼き屋の張り紙に「おいしいたこ焼き、200円でどやっ!」。プロの公告屋は、一度ミソ汁で顔を洗って出直すべきである、と書いている。
 実は、ある一冊によって中島らも氏は天才ではないかと、思った事があった。集英社文庫から2月に出版された「こらっ」を読んでからである。従来の駅舎を取り壊してステーションビルを建て、飲食店街、ホテル、オフィス・フロアをまとめ、駅前にシンボル・モニュメントと市民広場、コンサート専用ホールを建設して、文化の〇〇として再開発しようとしている全国の自治体に怒っているのである。こうした再開発都市に対して、「お文化都市」という名称を与えているという。何と、スゴイ感性の人間だろうと拍手を送っていた。
 長くなるが、無断掲載する。ある再開発都市の「ブレーンの集い」に義理で出席した時、フランス料理のフルコースで、オードブルにスモークサーモンが出た。そのサーモンを見た市長は刺身だと思ったのか、「きみ、ワサビはないかね」と部下に尋ねた。部下は青くなってどこかでワサビを調達してき、居並ぶ「文化ブレーン」たちは全員が市長にならってスモークサーモンにワサビをつけて食べはったのだ。それ以降、そういった話が僕のところにも降るようにあっちこっちの町から来たが、全て断らせてもらっている。‥この感性が日本中で必要なんとちゃいますか。

1994年7月30日(土)
 「週間金曜日・第36号」で。本多勝一編集のページは、「長野県はオリンピックで気が狂ったのか?」。
 長野オリンピックに絡んで軽井沢に新幹線建設と軽井沢インターから西武市有地内へのアクセス道路建設をめぐり、軽井沢町議夫妻が事業計画見直しを求めて、群馬・長野両県知事を自然公園法違反と背任容疑で告発している。
 ところが、軽井沢町議会議長が名誉棄損で長野地検に告訴したことから、6月30日、家宅捜査が行われた。告訴内容を一切説明せず、650点を押収していったという。それらの中には、文房具のサービススタンプ・14年前の結婚披露席次など、素人目にも捜査に関係ないものも含まれていた。しかも、6月20日には長野県土木部北陸新幹線局次長より脅迫まがいの電話が入っていたという。
 例の、19億円の冬期オリンピック招致費の帳簿行方不明事件について、住民グループから告訴状が出ている状況での、この事件である。マスコミも少しは取り上げたらどうですか。

 「ラスタとんねるず」での人形を使った政治家風刺がイギリスのBBC放送のレベルに近づいたとヨイショ記事が多い。よく見ていると、小沢へのおちょくりは無いに等しい。浜田をテレビ出演させた広告代理店の担当者、田中をヨイショしているレポーターたちは、「冗談音楽」の三木トリロー氏の爪のアカでも煎じて呑んでもらいたい。


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