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復刻版「よせあつめ瓦版・ランダム」その17(1955.8.1~8.31)
1995年8月5日(土)
WOWWOWで渡辺美里の西武球場ライブの生中継。
同一会場での連続公演としてはギネス記録になっているという。西武球場ライブは今年で10周年記念。観客動員もたいへんなものだが、よく体力が続いていくと感心しながら観ていた。86年の大ヒット曲「MyRevolution」をアコーステック・バージョンでしっとりと聴かせてくれたが、新たに、こんなすばらしい歌だったのかと、感動してしまった。会場にいるわけでもないのに、缶ビールが又一本と増え続け、たいへんな一夜になってしまった。ありがとうございました。
1995年8月12日(土)
浜松東映劇場で、ムーンライトシアター「遥かな時代の階段を」を観る。
昨年、公開された”私立探偵・濱マイク”のシリーズ化第二弾、永瀬正敏・佐野史郎・宍戸錠・麿赤児・鰐淵晴子といった存在感のある役者に加え、坂本スミ子・白川和子・杉本哲太、そして岡田英次を加え、見ごたえのある映画となっている。
今回は、横浜の”川”の利権をめぐる「白い男」と振興暴力団「黒狗会」の対立にマイクの出生の秘密を絡め、「時代と親子」をテーマにストーリーが展開されている。ジェット・ボート3台による川でのアクション、鰐淵晴子の”ダイナマイト・セクシーリリー”の名前どおりの妖艶な踊り、岡田英次と永瀬正敏のロシアン・ルーレット。これはまさに、映画館での映画です。
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1995年8月13日(日)
立川書房から山本進編「怪談ばなし傑作選」が出版された。
怪談噺の伝統を伝えてくれている。一龍齋貞水師と林家正雀師の口演速記と怪談噺の系譜、そして座談を収録している。おそらくは、今後の継承が難しくなっている時代に、将来の教科書となる一冊だと思います。
エピソードをひとつ紹介します。
師匠彦六が若い頃にキャバレーの怪談で、いっこうに幽太が楽屋に戻って来ないのでお面を頭に乗せたままの幽太が、客と一緒に飲んでいるので、「お化けは下戸に限る」
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1995年8月15日(火)
大阪藝能懇話会発行の「藝能懇話」第九号が届く。
今回の特集は「古書の話」で、中国語で「書迷」(シューミィー)という表現があることを知った。これはわかりやすく言うと「書籍狂い」に相当するということで、この藝能懇話のメンバー全員に当て嵌まるのではと、おもわず納得してしまった。
大正時代の寄席の状況を伝えてくれる貴重な資料「演芸タイムス」(吉本興業の寄席で配布したパンフレット)から毎回、演芸評を掲載してくれている。当時の噺家たちの雰囲気や客席の様子まで感じさせてくれて楽しみにしている。例えば、大正12年5月上席初日の「紅梅亭」‥
春団治の「宿替え」より聴く。この人の持ち味にて終始笑わせ通す。釘を打ちつつの独り言に「お前は後家を立てる気でも、端で放っておかないだろう。後家は後家で後家専門の奴があるで」で拍手が起こる。すつかり後家さんで売ったこの人ならでは。天心の音曲に続いて小柳枝の「桜風呂」、すっかり心境を示して立派な出来栄え、「嬉しうござんす番頭さん」で客席に転び落ちて笑わせる。この後で聴衆にお題をもらって滑稽問答、「そばにあっても豆腐とは」「遠くにあっても蕎麦屋というが如し」等数番をよくやって交代。客席は大いに沸く。
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1995年8月22日(火)
ビッグコミックが「戦争コミック傑作選」を特別増刊した。
これまでのビッグコミック紙上で名作とされ語り継がれてきた10編の漫画を掲載してある。古谷三敏の「噺家戦記・柳亭円治」、里中満智子の「明子」、白土三平の「泣き原」、バロン吉元の「落日の葬送」、松本零士の「サンタイザベラの首飾り」など珠玉の作品集であると思う。終戦50年ということで、官民の儀式や、マスコミでも報道特集が組まれていたが、漫画による語り伝えが一番理解しやすいのではないだろうかと考えている。新文部大臣や特別公務員の無責任な発言によって、立派な?大人たちが真実を認識していない事は明白となってきている。個人的には小学生の頃、少年漫画誌でアメリカやイギリスとの戦争、中国大陸での戦闘場面など漫画ではあるが、様々な場面を見れた事に感謝している。それから、当然映画館には入れなかったが、従軍看護婦や慰安婦を描いた日本映画があった事も記憶している。特にテレビの特集番組で、高校生や大学生に、「日本とどこの国が戦ったのか?」とか「竹槍とかすいとんを知っていますか?」という質問をして、「だから今どきの若い者は」的な評価をする一方的な番組は止めていただきたい。おそらくは、その製作者サイドが一番理解していないと思うから。
まったく話題にされなかったと思うので一言書かせていただくが、「暮しの手帖」の夏・初秋号では、戦後50年ではなく、日清・日露以来の戦後百年という特集をしていた。興味のある方は、ぜひ一読下さい。
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1995年8月23日(水)
中島らも事務所のマネージャーであり、劇団「リリバット・アーミー」の看板女優でもある、わかぎえふ氏の「ばかのたば」(大和出版、1300円)の売れ行きが好調らしい。
男に比べて、紹介されていない女のドジを、これでもかと紹介している。例えば、
大阪の人しか知らない独特の言い回しで、ステキな表現があって、例えば、誰かがお菓子を買ってきて、みんなして食べてしまい、最後のひとつになった時、この「最後の一ヶ」を「遠慮のかたまり」と言います。劇団に東京人が入団した時のエピソードである。「さぁ、S代ちゃん、これは何と言うでしょう?」「えっと‥これは‥」「これは?」「便所のかたまり」。
歳の頃28歳前後の主婦が二人、自転車に買い物した品を積み、後ろに子供を乗せて交差点で信号待ちをしていると想像されたい。そのひとりが喋りながらお腹の下の方をガリガリと掻いて、「あ~かいぃっ、ぜい肉がかゆいわあ」。
こんな実話が続きます。恐ろしいですな。
1995年8月24日(木)
小峰書店から子供向けに日本の伝統芸能を紹介するシリーズで全8巻が出版されていた。そのうち、第7巻が大野桂著「大道芸・寄席芸」(3000円)で、
大衆芸能の中で、現在普通に演じられている芸能についてわかりやすく紹介されている。何しろ、人間ポンプ、南京玉すだれ、から落語・漫才・講談・浪曲まで、非常にわかりやすく説明されている。特に、林家正雀師による手ぬぐい・扇子の演じ分けなどは、全写真付きなので、落研の教科書としても使えて便利だと思う。
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1995年8月25日(金)
5月に集英社から出版されていた、悠玄亭玉介師の遺稿「幇間の遺言」(1600円)を読む。
最後の幇間が病院のベッドで語り続けた、幇間の芸ねそして歴代の名人上手、エピソードを聞き書きでまとめた、貴重な資料である。例えば、
つまり、名人ってのはね、あたしが思うんだけど、基本的に白い着物を着てるんじゃないかと思うんだ。それで、高座なり舞台に上がって、客の色に染まることができるのが名人なわけだよ。ところが、人間だから、どうしても染まりきれない時がある。高座や客席がひとつの色になった時にすばらしい芸が生まれるわけだな。ところが出来の悪い咄家は、最初から黄色い羽織なんか着てるから、それにセコの臭いがついひでえ芸になるってことだ。え、客はどうしたらいいか?客も白い着物を着てるつもりで、素直になること。‥
とうとうというか、やっと女が土俵の主役になってしまう小説が登場した。水野麻里著「土俵に棲む女」(集英社文庫・440円)である。たまたま相撲部屋に生まれたばかりに、そして女であったために、部屋の跡取りとして横綱を目指さなければならなくなった主人公。しかも、酒の間違いとはいえ兄弟弟子の子を宿しながら、連勝記録を続けていく。これは、絶対に映像化できないだけに、落ちは強烈です。
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石ノ森章太郎の名作「佐武と市捕物控」の初期作品「縄と石捕物控」が28年ぶりに復刻された。笠倉漫画文庫から600円で発行されたのである。昭和41年春の「少年サンデー増刊号」に掲載、二作目からは「佐武と市」に改められ、シリーズ化していった記念すべき作品である。ビッグコミックの頃とは、少年向けにということで画風が違っているため、少し違和感はあるが、まぎれなく佐武と市が帰ってきた。
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