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復刻版「よせあつめ瓦版・ランダム」その15(95.6.1~6.30)

1995年6月1日(木)

 NHK・BSで韓国映画「西便制」を観る。
 昨年12月に、浜松東映劇場のムーンライトシアターで観て、韓国語による映画であることを忘れてしまうほど、唄のインパクトと主演女優の演技を超えた演技に拍手を送り、ただただ感動の涙を流した事を思い出した。テレビの画面だが、もう一度じっくり観てみると、主演女優のオ・ジョンへも素晴らしいが、主人公・脚本家・プロデューサーと一人三役をこなしていたキム・ミョンゴンの伝統文化への誇りと演劇人としての力量が圧倒的に伝わってきて、改めて感動させられた。
 5月にベルギーへ旅行してきたが、ブリュッセルの映画館で上映していて、ヨーロッパ各国の映画賞を受賞していた事を思い出した。なお、この映画の原作はハヤカワ文庫から出版されているとの事です。

映画「西便制」のパンフレット

1995年6月3日(土)

 浜松・名鉄ホテルで浜松西武百貨店の販促イベントとして、ビリー・バンバンのミニ・コンサート。
  約1時間であったが「みんなで唄おう」コーナーもあって、おそらくは16年ぶりであろうライヴを楽しめた。例えば、スポンサー無しのコンサートにした場合、料金設定が難しいと思うが、子離れした世代向けのコンサートもこれからのマーケットになっていくかもしれないと考えさせられた。

1995年6月4日(日)

 浜松中央劇場3で、「ウインズ・オブ・ゴット」と「プレタポルテ」を観る。どちらも話題になっていたわりには、観客動員は少なかった。特に、「ひめゆりの塔」や「きけ、わだつみの声」のように大企業がスポンサーを動員して、無理やり製作した作品よりも「ウインズ・オブ・ゴット」に好感が持てた。
 今年、戦後50年の戦争映画の企画がお涙頂戴のリメイク映画であったことにメジャーの関係者は、誰も疑問に思わなかったのだろうか。そして、マスコミも、こうした状況の中で戦後生まれの、しかも若い世代が制作した「ウインズ・オブ・ゴット」である。過去に演劇として上演を続けており、国連でも英語劇として上演させた作品に対して、どうして興味を持つ人が少ないのか、確かに軍隊や軍人、特攻隊員の描き方や時代考証において疑問を持つ観客も多いと思うが、原作が素晴らしく逆に制作費の少なさが余分な場面や余分な役者を加えずに展開しているため、わかりやすかった。演劇として観てみたいと思う。

DVD「プレタポルテ」

1995年6月4日(日)

 浜松市教育文化会館(旧浜松市民会館)で、「吉本印天然劇場」の浜松公演を観る。
 観客動員数はともかく、浜松公演が実現しただけでもうれしかった。正直言って、「雨あがり決死隊」や「へびいちご」「チュパチャップス」たちのギャグやネタに浜松人は理解できないだろうと予測していたが、はたして、そのとおりであった。テレビに出ていないタレントと言ってしまえば、そうだけど日常の刺激とか、興味に対する感性の違いだと思う。関西の言葉だけでなく、料理の味とか、サービス業のサービスの違いとか、関西から導入できる良さは、いくらでもあると思うのだが‥。

1995年6月10日(土)

 浜松市教育文化会館で、「イルカ」のコンサート。
 今年でデビュー25周年になるということで、歌声からはもちろん感じられないのだが、時の流れを知らされた。先日のビリーバンバンのコンサートのように、子離れした世代や親子での観客が多く、一緒に唄えたりして楽しませてくれた。ただ、正味2時間としてはもうシンドクなってきているんではと、感じさせる場面もあり、難しい問題です。

1995年6月11日(日)

 第1回ハママツジャズウィークの最終日。アクトシティ浜松・大ホールにおいて「第4回ヤマハ・ジャズ・フェスティバルイン浜松95」を聴く。
 中川英二郎カルテット、辛島文雄トリオwith与世山澄子・古谷充、そして坂田明とNEWDA-DA-DAORCHESTRAという三部構成で、実に内容の濃いコンサートであった。特に、ザ・フレッシュメンリーダーであった、古谷充氏の演奏は久しぶりで、円熟のサックスを聴かせてくれた。おそらくは、来年以降も続けられるジャズウィークに対して、浜松市にもヤマハにも企画内容については不満はないが、まだまだわかろうとしない人まで、員数合わせでチケットを受け付けて観客動員を図らないでいただきたい。もちろん一部のオバはん連中であったろうが、夜のホテルオークラでの食事がメインなのか、「この人、誰っ?テレビに出てるの坂田明だけじゃないの?」というバカな会話が耳に入ってきて、興醒めであった。

1995年6月13日(火)

 雑誌や漫画週刊誌など、立ち読みも含めて年間では何百冊も読んでいて、時々、唸ってしまうようなページに出くわして、そのページ分のためだけに購入してしまうことがある。
 ビックコミック6月25日号が、まさにそうであった。295頁に掲載された、南伸坊氏の「圖解趣味」が、それである。今回のオウム事件を映画化するにあたって、とりあえずのキャスティング案をつくって、幹部の顔写真を並べただけの企画である。それが、監督にビートたけし、主要メンバーをすべて、たけし軍団でという案である。尊師にグレート義太夫、青山元弁護士に柳ゆうれい、故村井に松尾伴内、上祐につまみ枝豆、‥すべて、たけし軍団のメンバーが当て嵌まるのである。
 深刻でありながら、しんそこバカげた今回の事件については、本気でビートたけし監督、たけし軍団総出演で映画化してもらえないだろうか。ディベートごっこや宗論よりも、みんなで大声で笑って、権威もガチガチになっている心も笑い飛ばして、ハイ、ごくろうさま、というわけにはいきません。

1995年6月25日発行「ビッグコミック」No.756

1995年6月13日(火)

 2月に、阪神・淡路大震災の被害を考慮して休刊となっていた、関西の食と味の月刊誌「あまから手帖」が「がんばれ神戸大震災」として、発行されていた。
 復興の早かった駅前や大衆的な店には、連日お客さんが殺到しているが、北野地区のフランス料理店やイタリア料理店には、まだまだ足は遠退いているという。そこで、最新の神戸飲食店営業情報を満載して、新生神戸を応援しようという企画である。グルメ・グルメともてはやされ、脚光をあびてきた料理人の殆どが「食の原点」に帰って、苦しい時こそ元気の素を提供しようと頑張っているとか‥。義援金の次は、神戸・阪神地区へ足を運んで食文化に会い、お客として義演しようと思っている。

1999.6.1 発行「あまから手帖6・7月合併号」

1995年6月24日(土)

 実は、3月に出版されていたのだが、あまりにも有名な作品だけにねいつでもいいだろうと購入しないでいたが、購入して読んでみたら、この三ヶ月損をしていた気にさせてくれた漫画があります。ますむら・ひろし氏の「銀河鉄道の夜」です。(扶桑社文庫・540円)
 あの宮沢賢治の原作を猫を登場人物として描いている氏の作品は、一部の賢治研究家から批判されていると聞いていたが、特に違和感は無く、わかりやすく伝えてくれる。この巻では、「銀河鉄道の夜」の初期形・ブルカニロ博士編も漫画化されていて、私たちが小学校や中学校の図書室で読んだ、最終形とは異なっていて、おもしろい。
 禅問答のようだが、292頁から最終頁には、このところ全マスコミのネタとなっている、オウム側への解答・反証が込められているようで、非常に興味深かった。例えば、ジョバンニに乗客の一人が言う。
 ‥みんながめいめいじぶんの神様がほんとうの神様だというだろう。けれどもお互いほかの神様を信ずる人たちの心がいいとかわるいとか議論するだろう。そして勝負がつかないだろう。けれどももしおまえがほんとうに勉強して、実験でちゃんとほんとうの考えとうその考えを分けてしまえば、その実験の方法さえきまれば、もう信仰も化学と同じようになる。
 この賢治シリーズでは、「雪渡り」も「猫の事務所」も珠玉の短篇として、すばらしい漫画といえます。一般書店ではサイクルが早くなってしまったため、もう通常は置かれていないのが残念です。

1995年5月30日発行「銀河鉄道の夜」(扶桑社)


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