[散乱文章]その六十三
レモンイエローの羽毛が、ふわふわと舞っている。鮮やかなそれを見つめながら、僕はポカンと口を開けてしまった。
「良い色でしょ?今、流行ってるんだー」
ニシシと笑ってみせる彼女は、ライムグリーンの髪をかきあげて、僕にその翼を見せびらかす。
有翼人種。そういう存在がいると判明したのは、人類が地球から飛び出した数百年後のことだった。
彼らは、とある惑星の原住民であり、不思議なことに羽が生えている以外は、僕らと似たような言葉と文化を持つ、つまり遠くて近い存在だった。
「……染めちゃったの?」
「え?ああ、うん」
僕の反応に戸惑ったように、彼女は頷く。その顔には、てっきり褒めてもらえると思っていたのに、という表情が浮かんでいた。
「真っ白で天使みたいって、思ってたんだけど」
「テンシ?ああ、そっちの伝説の、神の使いってやつね」
ははーん、なるほど、という顔になり、彼女は僕を翼の先で撫ぜる。そして、少し俯くと、上目遣いでこう言った。
「テンシじゃなきゃ、あたしのこと、嫌いになる?」
「ならないよ!羽が黄色でも、髪が緑でも、君は君だよ!」
そう叫んでから、僕はハッとする。
「ごめん……僕、君が君だから好きなんだって、一瞬、忘れてた」
「ううん。いいよ。急に見た目が変わったら、びっくりするもんね」
そう言って、柔らかく微笑む彼女を、僕はそっと抱きしめた。
「綺麗な色だね。よく似合っているよ」
耳元で囁けば、彼女が嬉しそうにはにかんだ気配が伝わってくる。目の前のライムグリーンとレモンイエローに、僕は優しくキスをした。
散乱文章その六十三「カラフルな天使」
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