手巻き寿司パーティ
小学生の頃、近所のミホちゃんと仲良しだった。
小学2年のときだ。
ミホちゃんのお誕生日会が開かれた。
どんなご馳走が出るかしら??
お友達はどんなプレゼントを用意したのかしら??
ワクワクする気持ちでミホちゃんの家の門を潜った。
そこには、、、
阿修羅のような顔の「ミホちゃんのおばちゃま」が仁王立ちしていた。
そうだった、ミホちゃんのおばちゃまはコワいんだった。
いつもはお仕事をしているからお目にかかることは少ないんだけど、
おばちゃまはいつもコワいことを思い出した。
おばちゃまは言った。
「酢飯は作りました。お刺身も何種類も揃えました。お海苔はこちら。
自分たちで巻いてお食べなさいっ それくらいできるでしょ 子供じゃないんだから」
おばちゃま、あたしたち子供ですけども。。。。。
コワくて突っ込めなかった。密かに心の中で愚痴った。
おばちゃまは続けた。
「あたくし家事をするために生きてるんじゃないのよっ。
では、あたくし部屋に行きますから。どうぞお静かに。
はい手巻き寿司パーティ、はじめっ!!」
あまりの迫力に一同固まった。ミホちゃんはきまり悪そうにしている。。
しかしそんな空気は一瞬で消えた。
なぜなら、、、
はじめて体験する「手巻き寿司パーティ」がものすごく楽しかったから。
お海苔を手に取り、桶に入った酢飯を自分の好きな量だけ載せる。
マグロ、鯛、イカ、タコ、玉子、いくら、、、色とりどりのネタから好きなものを選ぶ。
それをくるくる巻いて、大きく口を開けて食べる!!
手づかみで
自分の好きなものを
好きなだけ。
巧く巻ける子も
欲を出してアレもコレも載せたらお大根くらいの太さになってしまい、その不格好さにみんなで爆笑したり、、、
とにかくすっごく楽しかった。
その数年後のこと
自宅でテレビを付けていたらCMソングが流れて来た。
「♪かーいわれ 巻き巻き ネーギトロ巻き巻き」
「巻いて巻いて♫」
「♫てーまきずしーーー」
↑【ミツカン 手巻き寿司CM とんねるず】で検索すると動画がみつかるかも♪
この歌、かなりの流行歌となり、学校でも歌っている子がいたのを覚えている。
一緒にテレビを見ていた母が言った。
「これ、Yさんが作ったのよ」 Y、、、ミホちゃんの苗字である。
なんと!!
私はそのときはじめて知ったのだ。
いつもコワくてなぞの圧を感じる「ミホちゃんのおばちゃま」は
電通初の女性社員コピーライターで伝説の存在だったのだ。
そんなおばちゃまの最新作が
「パン食が進み売上げ減で喘いでいるミツカンのために作ったお酢のCM」だった。
このCMがきかっけとなり
「自宅で手巻き寿司」文化が普及し
ミツカンのお酢の売り上げは爆上がりしたのだ。。。。と思う。要確認。
ミホちゃんのおばちゃまのすっごいところはたくさんあると思う。
私がいちばんすごいと思うのは
「ご自分の中に揺るがぬ優先順位を持っていた」こと。
小学生の愛娘の誕生日会でさえ自分の優先順位は変えず、けれどクリエイティブな発想でどのお友達のお誕生日会よりも楽しい場をプロデュースしたこと。
しかも
わたしたちを実験台にして
手巻き寿司パーティの価値を図り
世に送り出し
「お寿司はお寿司屋さんで食べるもの」という既存の概念を覆し
世の中に新しい価値を提供し文化にまで発展させたこと。
関わったすべてのひとを幸せにしたこと。
お誕生日会の主役のミホちゃんも
参加した友人たちも
電通さんも
中埜酢さんも←当時のミツカンの正式社名です。
世の中も。。。
ママはお誕生日会でご馳走を作らなければならない。
この当たり前を軽々と蹴散らしたミホちゃんのおばちゃま。
自分が「あたりまえ」と思っていること
それを疑ってみよう♪
自分の優先順位をたいせつにしながら
他者に価値を提供することだってできるのだ。
このことを学んだ気がする。
小学校2年生だった私は
この世に手巻き寿司パーティが誕生した瞬間に立ち会った。
この貴重な経験とそこから得た気づきを
いま頑張り過ぎているすべてのママへ贈ります♪