16.人工呼吸中のモニター(その2)

カプノメトリ

吸気中には二酸化炭素は含まれていないため、呼吸中に連続的に測定すると。二酸化炭素レベルが0〜5%まで行ったり来たりするグラフが得られる。

1.正常なカプノグラムの説明
1呼吸サイクルのカプノグラム:
第1相:気管チューブや気管などの死腔が呼出されるため二酸化炭素が上昇しない
第2相:肺胞気が呼出され二酸化炭素が上昇
第3相:ほぼ肺胞気だけ呼出され濃度一定のプラトー
第4相:吸気が始まって急速に二酸化炭素が下がって0になる

2.カプノメトリの測定方法
・一般的には気管チューブにサンプリングボードまたはセンサをつけて測定
・非気管挿管下では鼻口につけるものもある
・赤外線吸収を利用する方法と質量分析装置、pH感受性指示薬の利用などある

3.呼気ガスサンプリングの方法
①メインストリーム型(フロースルー型)
・呼吸回路内にセンサを置いて測定
②サイドストリーム型
・呼吸回路の一部にサンプリングボードをつけ、そこから細い管で気体を一定速度吸引、測定器械の内部まで導き器械内で二酸化炭素濃度を測定する方式

参照p471 表16-2-1

4.第3相、プラトーの二酸化炭素分圧とPaCo2の関係
・プラトーでの二酸化炭素分圧とPaCo2は一致する、もしくは2〜3Torr低い
・肺病変があると開大、かなり低くなる

5.モニターとしてのカプノメトリ
・PaCo2の推定の他に、カプノグラムの形の異常、ベースラインの異常、患者の状態の異常、人工呼吸器の異常を早期に発見して対処

①PetCO2の値
・気管挿管時にモニターすると食道挿管を発見しやすい
・心肺停止の患者では有用性が劣る

②1呼吸ごとのカプノグラムの形の異常
・筋弛緩薬が切れてきた時
・回路のリーク
・気管チューブの不完全閉塞、copdなどの疾患

③ベースラインの異常
・ベースラインの上昇は二酸化炭素再呼吸を示唆

④PetCO2のトレンドとしての異常
・1呼吸ごとに異常はなくても少し時間をかけて全体を見ると値の変動がある。

循環動態のモニタリング

①心電図
簡易型:不整脈には強いがST異常には診断能力低い。モニターとしてはよい

標準12誘導:診断に不可欠

右手→左足 左手アース
Ⅱ誘導と同等、下壁の虚血状態、P波の状態

左肩→第4肋間胸骨右縁 右手アース
V1と似た誘導、P波の状況が見やすい

・状況に応じて適切と思われる簡易誘導法でモニタリングを行い、異常を発見したらすぐに標準12誘導で確認することが大切

②観血的動脈圧
・穿刺、留置に伴い動脈が閉塞するリスクあり。
・できるだけ末梢で穿刺、内頸動脈は微小塞栓による脳梗塞のリスクあり行わない。
・穿刺場所として橈骨動脈が多い、大腿動脈、上腕動脈、尺骨動脈、前肘動脈、膝窩動脈、足背動脈、鎖骨下動脈。小児では浅側頭動脈
・動脈圧波形の典型的な形は、心臓の収縮期に急速に上昇してピークに達し、徐々に圧が低下して大動脈弁が閉鎖するまでが収縮期、そこから圧はやや上昇してノッチを形成してその後圧は低下して最低血圧に達する
・実際の波形は穿刺場所によって異なる

③中心静脈圧
・中心静脈とは、右房付近の上下大静脈で胸腔内の部分
・中心静脈へのルートは、高カロリー輸液が可能、血管作動性薬剤を確実に投与、中心静脈圧を測定できる
・中心静脈は数種類あり、鎖骨下、内頸、外頸、大腿、肘静脈がある。超音波で確認しながら穿刺して合併症を減らす
・中心静脈圧の正常値は3〜8Torr
・測定には水柱を使う方法と圧トランスデューサを用いる方法がある。
・どちらも0点をきちんととる。中腋窩線や胸骨丙から5cm下または前腋窩線を右房の高さと考えて0点とする。
・中心静脈圧は右心のポンプ機能、上下大静脈より戻ってくる血液の量、胸腔内圧、右心系の血管抵抗に影響を受ける。
・一般に中心静脈圧が下がっているときは循環血漿量の低下と考える。
・中心静脈が上がっているときは、右心ポンプ機能低下、循環血漿量増加、胸腔内圧増加、血管抵抗増加、三尖弁逆流のいずれかまたは複数の影響

④圧測定装置
・トランスデューサが使われる
・持続フラッシュシステムを使用するとき、その回路のエアーを完全に除くこと
・持続フラッシュシステムの輸液量を忘れないこと
・持続フラッシュシステムの圧が測定系の圧よりも十分に高いこと
・0点の位置を測定者間で統一すること
・呼気終末の圧を読むこと

各種心拍出量測定法

1.肺動脈カテーテルによる測定
・心拍出量5L/minが正常値
・心係数は代表面積あたり、3.4mL/min/m2
・スワンガンツカテーテルを使用
・先端に小さなバルーンがあり、血流に乗って肺動脈まで進めることができる

①カテーテル挿入と留置
・挿入ルートは中心静脈カテーテルと同様
・右内頸静脈、左鎖骨下静脈が流れに乗せて入れやすい
・カテーテル先端のルーメンを血圧トランスデューサに接続し、その圧波形を見ながらカテーテルを進めていく。

②測定できるもの
中心静脈圧:
カテーテル先端から約30cm手前に開口する側孔で測定

肺動脈圧:
カテーテル先端で測定

肺動脈楔入圧:
カテーテル先端のバルーンを膨らませ、バルーンが肺動脈の内腔を閉塞し血流が遮断されたときにカテーテル先端の圧として測定。
左心房圧を反映する

心拍出量:
熱希釈法によって、測定。
冷却した5%ブドウ糖液をカテーテルのCVP測定ポートに注入し、カテーテル先端付近に内蔵されているサーミスタ温度センサで血液温度変化を検出する。この時の温度変化曲線によって得られる面積から心拍出量が計算される

混合静脈血ガス分析値:
カテーテル先端から採血した血液、すなわち肺動脈血の血液ガス分析によって求められる

③測定値をもとに計算
・上記の測定値、平均血圧、心拍数、全身末梢血管抵抗や肺血管抵抗、1回拍出量などのパラメータが計算。混合静脈血及び動脈血液ガス分析データなどを用いて肺シャント率や酸素運搬量、酸素消費量などが計算

④適応
・重症な循環不全、心臓外科周術期、ショック等の症例において循環動態や酸素需要供給バランスなどを詳しく評価したい場合が適応

⑤カテーテル留置中の合併症
肺梗塞:
・カテーテルが進んで、バルーンがしぼんだ
状態でも肺動脈に楔入して、その先の血流が途絶えてしまうことによって発生
・予防対策としては、モニター上に常に肺動脈圧波形が描かれていることを確認すること。
・胸部X線写真で位置を確認すること

感染
血栓形成
肺動脈穿通、バルーン破裂
不整脈


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