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排尿障害
排尿に関与する神経
①陰部神経
髄節:S3〜S4(体性神経)
作用:外尿道括約筋の収縮、随意的な蓄尿
②骨盤神経
髄節:S2〜S4(副交感神経)
作用:排尿筋の収縮、内尿道括約筋の弛緩、排尿開始時期に作用
③下腹神経
髄節:T11〜L2(交感神経)
作用:排尿筋の弛緩、内尿道括約筋の収縮、不随意的な蓄尿
排尿時のメカニズム
膀胱内の尿量が150〜200mlを超えると膀胱内圧が上昇
↓
膀胱壁の伸展受容器が刺激を感知
↓
骨盤神経を介して、胸腰髄交感神経中枢と仙髄オヌフ核を興奮させ蓄尿される
↓
さらに脊髄を上行し、橋排尿中枢(PMC:pontine micturition center)に情報が伝わる
↓
PMCから大脳(高位排尿中枢)に情報が伝わる(尿意として認知)
※大脳がPMCを抑制しているため、すぐに排尿反射は生じない。
↓
大脳から排尿指示が出される(随意的)
↓
脊髄を下行し胸腰髄交感神経中枢とオヌフ核を抑制、仙髄副交感神経中枢(下位排尿中枢)に情報が伝わる
↓
・骨盤神経を興奮させ、排尿筋収縮
・下腹神経、陰部神経を抑制させ、内尿道括約筋、外尿道括約筋が弛緩
↓
腹圧がかかると排尿
※蓄尿時は仙髄副交感神経中枢にて骨盤神経の抑制により排尿筋弛緩、胸腰髄交感神経中枢とオヌフ核が興奮し、下腹神経、陰部神経の興奮により内尿道括約筋、外尿道括約筋が収縮し蓄尿される。
排尿障害
①蓄尿障害
②排出障害
①蓄尿障害
●昼間頻尿:日中8回以上の排尿
●夜間頻尿:夜間睡眠中に1回以上排尿のため起床
●尿意切迫感:突然起きる抑えきれない尿意
●遺尿症:昼夜を問わず自分の意思と無関係に尿が出てしまう。特に夜間に起きる場合を夜間遺尿症という。
●尿失禁:タイプによって様々な状態がある
a.腹圧性尿失禁:咳やくしゃみ、重いものを持った時に尿が漏れる状態のこと
原因:女性ホルモン低下、骨盤底筋群筋力低下、支持構造の脆弱化、腹腔内圧の上昇
b.切迫性尿失禁:尿意切迫感の結果、尿が漏れる。知覚性と運動性の2種類がある。
b-1知覚性切迫性尿失禁
原因:膀胱伸展感覚の過敏反応
前立腺肥大症、膀胱炎、膀胱癌、膀胱結石、尿道炎により膀胱伸展感覚が敏感になり、膀胱に尿が少し溜まっただけで強い尿意を感じることにより生じる。その尿意を大脳の高位排尿中枢で抑制しきれないため我慢できずに尿が漏れてしまう。
b-2運動性切迫性尿失禁
原因:大脳高位排尿中枢の損傷
脳血管障害、脳腫瘍、パーキンソン病など脳の器質的病変が大脳の高位排尿中枢を損傷するために起こる。そのため、大脳が作用している排尿抑制がうまく働かなくなり、膀胱が無抑制収縮を起こす。
c.混合性尿失禁:腹圧性+切迫性
d.機能性尿失禁:膀胱機能は正常だが、トイレまでの移動や脱衣に時間がかかり失禁してしまう
原因:認知障害、情緒障害(抑うつ、不安、意欲低下)、コミュニケーション障害・不足(失語症)、移動およびトイレ動作の障害(麻痺、バランス不良、筋力低下…)、環境的障害
e.溢流性尿失禁:十分排出できず、膀胱内に多量に残った尿が溢れ出てくる。
原因:尿閉
f.完全尿失禁:いつでもどのような体位でも尿が漏れる状態
原因:尿管異所開口、膀胱膣瘻
g:反射性尿失禁:膀胱にある程度尿が溜まると、尿意なしに反射的に尿が漏れる状態
原因:仙髄(下位排尿中枢)よりも上部の中枢の損傷
②排出障害
a.尿勢低下
b.尿線分割、尿線散乱
c.尿線途絶
d.排尿遅延
e.腹圧排尿
f.終末滴下