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着物
日本の服飾文化といえば、着物です。
こちらも子どものころになんとなく気になっていたもの。
でも周りに着ている人はいなかった。訊いても着付け習わないと着れないわよ、とか、自分にはわからない、とか。
よくよく考えたら父方のおばあちゃんは、美容室をやっていたのにそこにつながるような流れにはならず。
でもなんとなく和柄のものが好き、とか、成人式には着たい、とか、ずっと興味はあった。
着付け教室に通って着る、という感覚には違和感を持っていてお金払って着るものじゃないはずだと、バイトで制服として着られるところならと思い、懐石料理の店で働くことにした。
そこで着たのは色無地。イメージは旅館の仲居さんです。帯は簡易的に締められるタイプのものだったけど、それでも一人で着られるようになった。
お店では宴会などが入るとお酒がすすんでお客さんが料理に手をつけない場合がある。そしたら、片づけるときにこっそり食べちゃったりした。(店の方でも味見と称して許可があった)
懐石料理はふだん滅多に食べるものではなかったし、とにかくおいしい。
なんか、バイトに行く目的が残り物が食べたい、になっていたようにも思うけど、そこはほどなくお店を閉めることになってしまった。
バイトの子たちをまとめていたその当時27歳くらいだったと思われる女の人に同じ系列の中華料理屋に誘われたけど、着物を着るのが目的だったな、と思い出し断った。
そしてそのあとも着物が制服という条件でまあまあの時給なんかも考慮に入れてバイトを探したら、うっかり軽めのお水のバイトに足を突っ込んだりもした。
お水のバイトだ!と気がついてからはすぐに辞めてしまったものの、女の子が着飾って給仕する場所だったので、着付けの人がいたりして自分で選んだわけじゃないのに、お姐さん方にちくりと、あなた黒を着るの?(あなたにはまだはやいんじゃない?の意)なんて言われたりしながらも気分よく日替わりでいろいろな着物を着せてもらっていた。
いや、わたしは性に合わずすぐ辞めたのでそんなにたくさんは着なかったけど。
その後学生を卒業すると着物はまた生活からほど遠いものになっていき、憧れはそれなりに持ちつつも接点はないまま時が過ぎていった。
ところが移住をきっかけにしてまたまた着物がちょっと身近になってきた。
まず近所の公園のフリーマーケットで古着の着物が売られていた。
そんなこと初めてでわーっ、となって2,3枚買った。安かった。でも買っただけ。
さらに子どもの幼稚園で知り合ったおかあさんの中に着物が好きだという人がいて、その人を経由して処分予定だったという着物のおすそ分けに預かった。ふと卒園式で着れたら…という気持ちが芽生えた。
そしてなんとかその中の着物から着付け師さんに選んでもらい、下の子の卒園式に着物で出席できた。
着物のことを素敵とほめてくれたおかあさんや先生もいたし謝辞をつとめさせてもらったこともあって、着物を礼装として着て式に出席することができたのがなによりうれしかった!
でもあとで写真をみたら眉毛を描いていなかった。痛恨。。
そんなこんなで着物熱がじわじわと高まり、これは日常で着たいぞ、と思い始めた。フリーマーケットで売り手の方に着たい気持ちや好きな気持ちを話したり、着物が話題にでた時には友達にもあたしは着物が好きだ好きだと言っていたら、あれよあれよと数多くの着物たちがわたしのところにやってきた。
こちらの地方ではおばあちゃんが着物が好きだったという家が多くあり、処分に困っているという方から回ってくるようになったのだ。
もちろんにおいがついてしまっていたり、しみだらけのものもあったりするけど、あまり気にならないものならそのまま着たりしている。
気になるものは処分した。
私がもともと持っていたのは母方の祖母から譲られた何枚かと、フリーマーケットでの何枚か。
それ以外はすべていただきものだけど、なんと全部で100枚くらいになってしまった。
こんなにもらったからにはどうしても着たい、着付けの練習用に、例えば台所で着たっていいと思えるすこしくたびれ感のある着物もあるし、「普段着物」を実践しよう!そんな暮らしってとてもすてきだ!と気分が盛り上がり、そして今はYouTubeがある!とうきうき着始めたのです。
昔着たことがあるとはいえ相当前の話だし、帯はほとんど初心者だったし、だけどYouTubeってすごいですね。本当にたくさんの人が丁寧に着方をおしえてくれています。
おかげでひとりで着られるようになりまして、昼間はなにかと土汚れ仕事もあったりするし人に会うこともあるしで、夕方もう外には出ないとなった時間にいそいそと着替えて夕飯を着物で作るという生活を2週に何回かはするようになりました。
今は季節がいいときは週に2回は着たりします。
家でこっそり誰にみせるでもなく着る、普段着として着る、というのが楽しみの目的だったので、多少着方に問題ありでも大丈夫。練習練習、という感じで堂々と着ていられるし、普段着といってそのつもりで着ても、着ているものはいつもの服ではなく、今となっては非日常の「着物」なため、こんなものを着て日常を過ごしている自分!とどうしたって盛り上がってしまい、嫌が応にも楽しくなってしまうのです。ごきげんです。
そんなときふと人が訪ねてきたりすると恥ずかしいやらちょっとうれしいやら。
100枚ほどの枚数も難なくすべてに手を通すことができました。
そしてそんなことをしていると、今度は外に着て行ってみようかなと思い始めます。
これもまた仰々しく着るのではなく、普段着としてちょっと買い物に行く、とかいう感じで着たい。
または何かイベント事のとき、近所のマルシェから落語会、講演会、音楽イベントなどにも着ていったりするようになりました。こちらのほうが着ていきやすいかな。
今のわたしの小さな夢は旅行で着物。
どこでもいいけどまずは季節のいいときに着て旅行に行きたい。
旅行自体がうちではあんまりないものなので、そこからどうにかする必要はありますが、まあ夢です。
神社仏閣を巡るのが好きなのでそんなときにもうってつけだなと思っています。
少し前まで日本人は着物を着て暮らしていました。
生まれたときから洋服で育ったので洋服のおしゃれも好きだけど、それはある時期に無理やり入ってきた文化だということを忘れずにいようと思っています。
着物の制作技術のすばらしさ、とてつもない手間ひまをかけ作られていること、そういうことをわたしを含めほとんどの日本人が知らない。
これは恥ずかしいことと言えると思います。
自分たちの文化について知識がない。外国の人に訊かれても説明できない自信があります。
そんな自信はなくていいもの。でも難しい着物の知識の本を読んでもまた眠ってしまいそう。
今のところは知識のある方の親切なYouTubeを見ているだけですが、でもやっぱり自分でも調べたりしてみよう、勉強しようかなと思います。
それでもまずはみんなが着物を着る機会が増えればいいなと、ぼんやり思います。
だからもう少し着物を着て外に出かけよう。
着姿に目が触れる機会を少しでもふやしたら、なんとなくいいような気がするので。
自分が着たいのがいちばんだけど。
そうは言っても今年は娘に着つけて時間いっぱいで初もうでには自分自身は着なかったのでまだ一度も着れていない…。(うちは本当に寒い家なので着替えるのに勇気が要るんです…)
着たい気持ちはもちろんある。
そして今年は卒業式もある。でもこっちは気軽じゃない分多少震える。
…みなさんもぜひ。