
凛々しいポメチワの横顔
寒風吹きすさぶ冬の朝、陽が昇り切らない街道に、一匹の犬が立っていた。ポメラニアンとチワワの混血――通称「ポメチワ」と呼ばれるその犬は、小さな体躯に似合わないほどの堂々とした佇まいで、遠くの空を見つめている。毛並みは陽光を帯びた黄金色で、その横顔は何かを悟ったかのように静かで、どこか凛々しかった。
私はふと足を止め、その姿に見入った。風が彼の体を吹き抜けても、一歩も動じることなく立ち尽くしているその背中には、小動物特有の無防備さなど微塵も感じられなかった。むしろ、目の前の世界をすべて見渡し、その全てを抱え込む覚悟をした、戦士のような気高さがあった。
「何を見ているんだろう?」と私は思った。もしかしたら、目には見えない何か――犬にしかわからない大切な使命のようなものが、この小さな体に宿っているのかもしれない。そう思わせるほど、その横顔には物語が詰まっていた。
ポメチワはそのとき、少しだけ顔を上げ、風の匂いを嗅いだ。そして、一瞬こちらを振り返った。その瞳には、ただの犬ではない、何か深い意志のようなものが宿っている気がした。私がその瞳に気圧され、思わず一歩引くと、彼は再び前を向き、小さな足を一歩踏み出した。
あの瞬間、私は気づいた。あの凛々しい横顔は、ただ小さな犬のものではなく、私たち人間が失いかけた「生きる」ということそのものを映していたのだ。
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