ストラテラを飲んだらどうなる?ADHDグレーがストラテラを服用して1カ月の効
はじめに
私はADHDグレーである。自称ではなく、精神科受診歴の三回のうち三回ともADHDグレーのお墨付きをもらっている。今回は人生初のストラテラを服用してから1カ月経ったので、その経過と効果を正直にお伝えする。この体験が、服薬を検討している方や同じような困りごとを抱える方にとって少しでも参考になれば幸いだ。
私の背景
薬を飲む経緯を書く前に、まず私自身の背景を簡単に説明しておく。
私は多くのADHDと同様に、ASDも併発している。技術職の正社員として2年働いているが、来年退職予定。今年の年収は500万円。残業時間は月平均45時間。動作性知能(視覚や手先の動きを伴う作業に関する知能)が低く、言語性知能(暗算、言語能力、抽象概念の理解など学校生活で鍛えられる知性)が高い。長らく薬は重度の人が飲むものと思っていたので服薬を避けていたが、あまりにもトラブルが多かったので現在はストラテラを服用している。
私の困りごと
ADHD的な困りごと
ミスが多い(10個チェック項目があったら3つしか合っていないなどザラ)。
計画性の無さ(タスク管理が苦手かつ時間間隔も希薄)。
睡眠障害(特に過眠と日中の眠気)。
方向音痴(地図が読めない、一度で道を覚えられない)。
時間間隔が希薄(約束の時間通りに行けない)。
記憶力が低い(短い間でも言ったこと、言われたことを覚えていられない)。
常にぼんやりしている、空想に夢中になっている。
ASD的な困りごと
コミュニケーション全般が下手:距離感を測れない、感情を読み取れない、表情が硬い、冗談が通じない、会話が面白くない等。
距離感が独特(過剰に丁寧。または親しくなっても敬語。あるいは特定の人にだけ馴れ馴れしい)。
人間嫌い。
こだわりの強さ。
日常的な緊張状態(慢性的な脳疲労とそれに伴う肩こり)。
ストラテラの効果
服薬を決意した理由
これらの困りごとを解決するために、私は1カ月前、薬物療法を受けることにした。現在はADHDの薬であるストラテラ30mgを常時服用しているが、その効き目は巷にあふれる人生ライフハックや習慣よりもはるかにすさまじかった。文字通り人生が変わったのだ。しかもADHD的な困りごとだけでなく、ASD的な困りごとも一部改善した。
ストラテラの説明によれば、効果が出始めるのは1~2カ月ほどかかるという。しかし、私は1日目から効果を実感した。以下にメリット・デメリット、変わらなかったことを箇条書きでまとめる。
メリット
ミスの減少:チェック項目の正答率が明らかに上がった。
集中力の向上:集中力のオンオフが可能になった。
時間感覚が鋭くなった:あまり遅刻しないようになった。
体力がついた:肩こりの改善や体力を消耗しにくくなった。
上記のことを実感できて自信がついた。
デメリット
薬を取りに行くための金銭的・時間的な負担。
一日でも断薬すると体調が悪化する。
食欲と性欲の減退。
芸術感覚の劣化。
興奮しにくくなった。
変わらなかったこと
計画性の無さ。
コミュニケーションの下手さ。
方向音痴。
服薬で得られた一番のメリット
服薬で最も感動したメリットは、肩こりの解消だった。私の肩こりは長年酷く、どんなマッサージを受けても効果は一時的で、3時間も経てば元に戻るほどだった。人から「脚ばかり太くて上半身の筋肉が足りないからだよ」と冗談交じりに言われ、2週間筋トレを試してみたが改善は見られなかった。
しかし、ストラテラは一晩でこの悩みを解消した。服薬翌日、肩を回してもゴリゴリと音が鳴らず、触ると柔らかい状態に。今までのマッサージが全く効果のないものだったように感じられるほど劇的な改善だった。
さらに、肩への血流が良くなったからか、服薬から2週間で首が太くなり、全身の筋肉が増えた。また、体力の消耗が減り、日常生活が楽になった。これだけでもストラテラを服用する価値があったと感じている。
集中力とオンオフの向上
ストラテラ服用後、集中力に「オンオフ」の概念が芽生えた。今までは集中という感覚がわからず、常にぼんやりしていたが、適度な集中で作業に取り組めるようになり、結果として手を抜くべきところと、全力を注ぐべきところの区別がつくようになった。
さらに、感情の切り替えも上達し、希死念慮やフラッシュバックに苦しむ時間が短縮された。一定時間悩んだ後は「はい終わり」と自分に言い聞かせ、心を切り替えることが可能になった。
デメリットとその影響
薬のコスト
ストラテラのジェネリック版を利用しても、1カ月で約4,000円かかる。これに加え、精神科の診察と処方箋が必要で、社会人にとっては時間的な負担も大きい。また、通院を周囲に知られたくない場合、その隠匿コストも発生する。
断薬の影響
一日でも断薬すると、肩こりが即座に再発し、全身に力が入らない脱力感が発生することがある(酷いと歩くこともままならない)。また、服薬後の吐き気が酷い場合もあり、吐き気止めを服用しても即効性はない。医師の指示で昼や朝に服薬すると通勤に支障が出る可能性がある。
食欲と性欲の減退
服薬から二週間ほどは食欲と性欲が驚くほど減退し、一日一食でも平気になるほどだった。この状態は2週間ほど続き、「何も感じなくなってこのまま死ぬのでは」と恐怖を覚えるほどだったが、その後回復した。
興奮の低下
怒りや悲しみで興奮する一方で、楽しいことで興奮する感覚だけが薄れたのもデメリットだった。以前は、好きな店で「あれもこれも気になる!」と感情が盛り上がり、店内を歩くだけで幸福感に満ちていたが、今ではその高揚感がなくなり、感覚が落ち着きすぎている。
この状態は、ADHD特有の「せわしなさ」が減少した結果だと思われるが、一方でこうなっている時の私の脳みその中には、花火大会のフィナーレのようにきらびやかな感覚と快楽の奔流があった。これが起こらなくて何が悲しいかというと、この感覚が起こっている時が人生の中で一番興奮している時間だったのだ。要は幸福の上限値を無理やり引き下げられたといってもいい。
芸術的感覚の変化
趣味である作文においても、以前ほど楽しいと感じなくなった。芸術とは、尖った好奇心の発露であり、無数の表現が重なることで成立する。好奇心が抑制された結果、表現力は平凡になり、表現したいという欲求そのものが減退した。これは、芸術を仕事にしている人なら恐ろしいことかもしれないが、私はあくまで趣味なので受け入れられている。
とはいえ、良い面もある。以前は未完の作品ばかりだったが、現在は作品全体を把握しながら完成させる能力や、誤字脱字を見つける力、文章構成力が向上した。唯一無二の芸術性は失ったかもしれないが、総合的な芸術家の能力の成長を実感している。
総評とメッセージ
ストラテラにより、ADHD的な困りごとの大部分が解消され、生活が大きく改善した。一方で、ASD的な困りごとは解決されず、感性が劣化し、幸福感の総量が減少した。しかし、不幸の回数も減少し、生活全体が安定したのは確かである。
服薬を検討している方には、まず専門医に相談し、自分に合った治療法を試してほしい。特に働いている方にとって、ストラテラは生活の質を向上させる大きな助けとなるはずだ。学生の方であれば、困りごとが大きい場合に一度試してみる価値があるだろう。
幸福の上限値が減るデメリットを受け入れることができるなら、ストラテラは不幸を減らし、生活を前向きに変える力を持つ薬だろう。