ポラライズドトレーニングとは?効果と実践方法を解説
トレーニング理論の中でも、近年注目を集めているのが「ポラライズドトレーニング(Polarized Training)」です。
これは、低強度と高強度のトレーニングに重点を置き、中強度のトレーニングを減らすというユニークなアプローチです。
プロのサイクリストやランナーが採用しているトレーニング法として知られていますが、アマチュアにも効果的です。
私なりに勉強してみましたので、ポラライズドトレーニングの基本から、その実践方法までをまとめてみました。
ポラライズドトレーニングとは?
ポラライズドトレーニングは、「トレーニングの強度を極端(Polarized)に振り分ける」ことが特徴の方法です。具体的には以下のようにトレーニングを分割します。
低強度(ゾーン1):練習時間の70~80%
心拍数やパワーが低い状態でのトレーニング(会話ができる程度の負荷)
基礎持久力を鍛える
高強度(ゾーン3):練習時間の15~20%
FTP(Functional Threshold Power)以上の強度の高いトレーニング
心肺機能とパワー向上をめざす
中強度(ゾーン2):練習時間の5~10%
FTP前後の強度のトレーニング
回復が遅れる可能性があるため、この強度のトレーニングは避ける
このアプローチは、アマチュアアスリートが中強度の「なんとなくきつい」練習に偏りがちな傾向を修正し、より効率的にパフォーマンスを向上させる狙いがあります。
ポラライズドトレーニングのメリット
1. 効率的に持久力を向上
低強度のトレーニングは基礎持久力を高め、高強度のトレーニングは心肺機能や瞬発力を向上させます。このバランスが、長期的なパフォーマンス向上に役立ちます。
2. 疲労を最小限に抑える
中強度のトレーニングを減らすことで、過度な疲労を避けることができます。これにより、リカバリーが早まり、次のトレーニングに集中できます。
3. 怪我やオーバートレーニングを防ぐ
中強度のトレーニングは意外と疲労が溜まりやすく、怪我やパフォーマンス低下の原因になりがちです。ポラライズドトレーニングではこのリスクを軽減できます。
ポラライズドトレーニングの具体的な実践方法
1. ゾーン設定
ポラライズドトレーニングを実践するには、まず自分の心拍数やパワーゾーンを把握しましょう。FTPテストや最大心拍数を基に以下のゾーンを設定します。
ゾーン1(低強度)
・血中乳酸濃度:2 mmol/L以下
・心拍数:最大心拍数(HRmax)の80%以下
・VO2max基準:50%VO2max~LT1(有酸素性閾値)
・FTP基準:50~75%FTP
・トレーニング例: 長時間のゆっくりとしたライド(低強度の持続走)
ゾーン2(中強度)
・血中乳酸濃度:2~4 mmol/L
・心拍数:80~88%HRmax
・FTP基準:76~99%FTP
・トレーニング例: テンポ走、SST
ゾーン3(高強度)
・血中乳酸濃度:4 mmol/L以上
・心拍数:88%HRmax以上
・FTP基準:100%FTP以上
・トレーニング例: VO2maxインターバル、全力スプリント、HIIT
※各ゾーンのFTP%について調べてみましたが、資料によって振れがありました。本記事ではゾーン1を50%~75%としていますが、50%~79%や55%~75%の資料もあります。いずれにしても、低強度に抑えるということが重要なようなので、パワーゾーンのZ2(L2)くらいと考えてよさそうです。
2. 1週間のスケジュール例
以下は、ポラライズドトレーニングを取り入れた1週間のサンプルプランです。
月曜日:休養日
火曜日:高強度インターバル(ゾーン3)
・Rattle Snake
・Gorby
・FTP10min x3セット
など
水曜日:低強度ライド(ゾーン1、90分)
木曜日:高強度インターバル(ゾーン3)
・Rattle Snake
・Gorby
・FTP10min x3セット
など
金曜日:低強度ライド(ゾーン1、90分)
土曜日:実走ロングライド(8~12時間)
もしくは低強度ライド(ゾーン1、120分)
日曜日:実走ロングライド(8~12時間)
もしくは低強度ライド(ゾーン1、120分)
3. トレーニングアプリを活用
ZwiftやTrainerRoadなどのトレーニングアプリを活用すれば、ゾーンを自動で管理しやすく、トレーニングメニューも豊富です。
ポラライズドトレーニングの注意点
1. 高強度トレーニングの量を管理する
高強度の割合を増やしすぎると、疲労が蓄積し、逆効果になる可能性があります。全体の15~20%を厳守しましょう。
2. 低強度トレーニングを「本当に低く」抑える
低強度のトレーニングでは、ついペースを上げたくなるものですが、意識的にゆっくり走ることが重要です。
3. 効果が現れるまで時間がかかる
ポラライズドトレーニングは、短期間での即効性よりも、長期的な成果を目指すアプローチです。数ヶ月単位で継続することを心がけてください。
まとめ
ポラライズドトレーニングは、低強度と高強度のバランスを最適化することで、持久力やパフォーマンスを効率的に向上させる方法です。
特に疲労を最小限に抑えたいアスリートにとって効果的です。
SSTやVO2maxトレーニングで頭打ちになっているライダーも、このアプローチを取り入れてみることで、さらなる成長を実感かもしれません!
SSTトレーニングとVO2maxトレーニングについては、こちらの記事もお読みいただければと思います。
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