Laboの男58
Labの男58
それなりに歳を重ねてくると
限界がわかる辺りから闇雲な行動がなくなる。
衝動的なのか本質的なのか
分けて考えれるようになり
分かるっていう肌感が加減となり
実際に歩みを進めれる方向性を見定める
選択肢を取れるようになる。
現実的な実現可能範囲の
「身の丈」と言う安全装置。
それ以前の問題に
自身が何を求めているかも明らかにさせないと
他人の気持ちさえも理解が遠のく。
当然そうで自身の事も分からないのに
他人の事なんて想像できる訳もない。
それこそ
わからず屋は周りに
わざわざ歩幅を合わせてもらい
付け合ってもらっている事が分からないように。
わからず屋ほど
受け入れてもらいたい願望が過剰だ。
それとは別に
いくら身の丈をわきまえたタイプでも
それほど求めてないつもりでも
誰しもがファンタジーを隠し持っている。
それを外に求めるか内に求めるかの違いなだけ
比べる対象があって初めて
感じるのがココロの機微
胸の内の感情に気付くことになる。
誰しもが持ち合わせるメランコリックな
痛みに敏感な詩人な部分
懸命に行動し続けることで
思い込みか事実かのデータをすり合わせ
確認を繰り返し結果に一喜一憂する。
悲しみにフォーカスが傾けば詩や歌
発信すれば第三者に感動を振りまき
怒りにフォーカスが傾けば環境
システムに疑問を持ち思想を唱え世に問う。
どちらもその人なりの歌を奏でる。
コレも内に向かうか外に向かうかの違いだ。
ヒトの役に立ちたいか
自分を認めてもらいたいか
大体がこの2つで割り切れる。
何かを成し遂げたいなんて誰も初めから
思ってもない、それなりに暮らせば相応に楽しく生きていけるように社会は完成している。
それも命のやり取りなしの安全区域からである。
すでに楽園に生まれてしまったヒトびとは
ハイクオリティーの幸せにあくびをし
心踊る生きがいにエネルギーを注ぎ込みたがる。
ヒトは心の片隅で感じている。
実感が伴わない喜びは
長続きしないことを知っている。
ありがたがらない事を知っている。
転がる空きカンに散乱している酒のあて。
フロアーに直接、雑魚寝するみんな。
懐から細身のタバコを取り出し
タバコの箱を縦にふり
唇で直接タバコをくわえる。
シュボッ
銀のガスライターの火に目線をやり
片手で包み込む。
タバコがオレンジにあかりを灯し
明智の顔を照らす。
飲みつぶれているみんなを横目にタバコをふかす
明智が独り、思い出し笑いをしている。
「フッフフフ」
万次郎は、末恐ろしい男だ。
買い出された品の中に誰が忍ばせたのか
トランプが1つ入っていた。中身を確認せず
明智が手に取り「トランプをしようゼ」と
みんなを誘う。ケースを開けてみるとなんと
トランプの柄が
浮世絵よろしくの48手大図鑑となっていた!
明智らしからぬ「ぬかった!」と想定違いに
もう取り返しはつかない。
それまで和気あいあいとしていた
雰囲気はどこへやら女子たちはドン引きだ。
「ここにあったのよ」って言っても
時すでに遅し
もう明智はスケベなヤツのレッテルを貼られ
トランプどころでは無くなってしまった。
助けを求める目線
ウッディーに目をやると
ヴォッカ片手のHeadlessイワノフと
テレパシーで会話している。
ヘンな感じをかき消すように飲み直す面々。
何事も無かったように談笑が続く中
おもむろに立ち上がる万次郎。
何かを思いついたのか
しばらくしてスミへとやられていた
トランプの方へと歩いていく。
万次郎は独り背中を向けなんの躊躇もなく
ただの書類に目を通す様に手に取る。
日本酒片手に正座した後ろ姿、カードをしばらく
眺めては置き眺めてはと2つに選別している。
明智はトランプを淡々と仕分ける
万次郎に声をかける。
「何してるんだよ〜?」
すぐさまに明智の脳裏にイナズマが走る。
「オマエっ!まさかっ!」
驚いてる明智に声をかける玄白
「2人で仲良くナニを……」
同じく玄白の脳裏にもイナズマが走る。
まっすぐに素直なバカ。万次郎の
この行動力こそがカレを彼と足らしめるコア。
万次郎は、だれに自慢することなく
こっそり自分がした事がある体位を
独り確認していたのであった。
「万次郎っ!この体位もしたことあるって!
なんてアクロバティックな事してるんだよ
マジかよ?オマエ、、
これは流石に無理があるだろう?」
「それはここに重心を置いてテコの原理で
動くんですよ。あのねぇ〜
コレあんまり気持ち良くないっス」
「マジかよ!やるじゃんか〜!」
モフモフ頭が腕を組み笑ってる。
「嘘でしょ!コレはありえないな〜。
観客ありきでなら理解できるけど
一体ぜんたい
どこに効果がみこめるんだ?全くっ」
「コレはねぇ、相手が喜ぶんですよ。
どこがどうなってるか分からない感じが
相手のタガをはずして
メチャクチャにして〜って
なるんですよぉ〜」
「おぉおぅ
それはしっかりとしたデータに基づく
実験結果っぽいね」
「でも、これも自分は全然気持ち良くないっス」
苦笑いの明智
「我々サイドにはそうだろうな。
でも、いくら百戦錬磨の手練であっても
相手を選ぶだろ?
中には冷める女性もいるだろう?」
「ちゃんと僕も様子を見ますよ。
そうですね〜、頭の回転が早い系女子は
2手3手先を勝手に想像するから
色々するとドンドン勝手に妄想して
やらしくなっていくんですよ。
それこそ雪だるま式にですねぇ」
モフモフを触れながら
「アレだろうね
万次郎は年上に好かれるでしょ〜から
普段はあんなにほっこりしてるのに
いざって時には
こんなに激しくなるなんてぇ〜っ
てな事になるんだろうね」
「さすが玄白さん発想の角度が鋭いですね」
七三分を触りながら明智
「なるほど〜、万次郎は
ぼくとは違うタイプの
マダムkillerなんだな
この変態野郎〜っ!」 だっははははは×2
「このように僕は要望に応える系男子なんです」
「いやいゃ〜ただの相手のリアクションで
興奮する系男子なだけだろっ!」
だっははははっは×3
「ナニ盛り上がってるのよ!あぁ〜っ!
万次郎っ!こんなのしたことあるのぉ!
ちょっとそれは激しすぎじゃない?
その〜ぉ、それはどんな感じなのよ!」
「ちょっとぉ!万次郎が童顔テクニシャンだった
とは、想像できなかったわぁ〜」
さっきとはうって変わって大盛り上がりだ。
無自覚に周りを巻き込む吸引力に
何故かツッコミたくなるカワイらしさ。
末恐ろしい男だ。
あとを顧みないタフボーイ
万次郎という男のポテンシャル。
「フッフフフッフッ」
煙をはき出す明智は眠っている万次郎を
眺めながらウィスキーをクイッと飲み干す。
「おもしろくなって来たゼ!
万次郎をフッてくれた彼女に感謝だな。
さて、これからは忙しくなりそうだ」
そういゃ〜玄白、不死の細胞を売りさばきたいって
恐ろしいこと言ってたけどアイツ本気なのか?
まぁ〜玄白に限った話
冗談を言うタイプではないからなぁ
何かしら考えあっての事だろう。
金さんに連絡して聞いてみないとな。
そろそろコレっていう様な成果をあげないと
今以上に、はじっこに
追いやられるだろうからな。
意外にイワノフに怒りが湧かなかったのは
自分でも驚いてる明智であった。
つぎ直したウィスキーをクイッ。
「でも、アレはもう別物の
クリーチャーみたいなものだからな〜
カタキ感も薄れるよね」
「だってイワノフかわいそ過ぎない?
合体ロボじゃ〜ないんだからさぁ」
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