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Laboの男41

 Labの男41

 グィィィィーーーーン
 ゴゴゴゴゴゴ ガッシャーン ガッチャンコ
 ブーン プシュー プシュー
メタリックのトビラがスライドして中から
デカイ四角が左右に2体三角形の鉱石を支え
行く先を木人が先導している。
鉱石化したあぐらをかいた男
クリスタルマンの両膝を
ずんぐりむっくりロボが抱えてエレベーターから
ドィン ドィン ドィンドィン出てきた。
8階研究ルームまではしばらく距離がある。
まだ、マイッチingをしでかしてない
マコと玄白
「マコちゃん、操作ほんとに初めて?
 上手すぎるよ。何かの経験あるの?」

 「まったく初めてよ。彼をどこかにぶつけないか
  気がきじゃないけど」

ツリーマンこと
ウッディーが率先してナビをしてくれている。
 「オーライ、オーライそっちは、ぜんぜん
  ちょっと、まったく、たぶん、ゼッタイ
  大丈夫でぇ〜す」

玄白「だっははは、どっちなのよ!ははっ」

ロボ2人組は、ウッディーの言葉よりも
ジェスチャーを頼りに動いている。
ぶつかりセンサー扱いだ。

マコ
 「彼、声のトーンって
  言葉じゃなくても分かりやすいわ。
  なんだろう?
  感情があまり乗ってないのに
  あったか身があるのよね。
  言ってることはおぼつかないのに
  ナゾの安定感があるのよね」

ドィン ドィンドィン玄白
「声色だけだと、屈託がなくて
 シンプルな感じ、しか分かんないな。
 マコちゃん的にはウソがないって感じでしょ」

マコ
 「そうそう!イタズラ心だとか企みがないのよ。
  信用ができるタイプね。研究者として」

クリスタルマン研究は
彼自身の機嫌に大きく左右される。
明智Laboに研究が任せられているのも
メンバーがクリスタルさんに
気に入られている要因が大きい。
機嫌を損ねてしまうと
大いなる叡智へのキップは絶たれ
ちっともアクセスさせてもらえなくなる。
エビス薬品工業のオーバーテクノロジーも
クリスタルフィールドを間借りして初めて
テクノロジーを使いこなせる為
カレの扱いは会社の運営にも
大いに関わってくる。
なので比較的穏やかに運営出来ていたのも
明智Laboの功績は非常に大きい。
そこに来ての、ツリーマンの登場。
何かの始まりを告げている。

今のLaboは、あわただしく
あまり明智は構ってもらえそうにない。
みんなで朝食でもと思っていた明智

 「仕方ないな〜、マグリットの女
  周辺を探りに行くか」

手がかりはないものの
何かしらかを
しでかすつもりである所まではこぎ着けた。
もらったデーターを参照すると
スナックの前に立っていた男の素性は
鉄道会社を取り仕切っている
製薬会社の重役 王立院 三郎【おうりついん】
あたらさまに由緒ある家の苗字だ。
苗字と比べるとシンプル過ぎる名前。
コレは政治家を輩出する御家柄だと
後継人にするつもりで
シンプルな名前をつける事はよくある。
苗字で血統を表し名前で何番目の御子息なのかが
一目瞭然、有権者に覚えてもらうためでもある。
が、おそらく三郎はそれほど日の目も浴びず
あくまで、御家を盛り立てるため
製薬会社のエライさんの娘と
政略結婚させられたクチだろう。
で、愛人にスナックを経営させているんだろうと
着地しそうなんだが
あまりにも絵が明確に描け過ぎで
いかにもな感じが逆に信憑性に欠ける
気がしてくるが
まぁいい。

 「Laboは、しばらく立て込みそうだから
  そいじゃ〜玄白、マコちゃん
  引き続き調査に行ってくるよ」

マコ
「今度こそ、お土産待ってるからね〜」

 「分かったよ」
二本指を立てて指を前方へ振る アディオス明智
 ウィーーン
ロボで手を振る玄白

 「ちょっと玄白ぅ落としたらどうするのよ!」

「大丈夫だよ、反対のアームで持ってるから」

  「明智さん、会えてうれしかったですよ
   またドウぞ今後ともヨロシク
   おねぇゲェたてまつりすヨォ」

背中で声を聞く明智は、
「いいコンビだなっ」と、つぶやき立ち去る。


あの街に着いたものの
メガロゴールデン街がオープンするまでは
まだまだ時間がある。
さて、どおしたものか
ほっつき歩いてても何にも思いつかない明智

 「どうする、パチンコでもしちゃう?」

違和感に気がつく明智
一見街並みに溶け込んでいそうだが
遠巻きからでも分かる
少しカタギじゃない雰囲気を放つ
細身のブーツの男に目がいく。
よく見るとブーツは使い込まれているが
丁寧にケアされているのが分かる。
別に怪しい動きは無いんだが
後ろ姿に、見覚えがある。

 「ん?あれは、たしか」

サイドの髪が鋭角に刈り上がっている
見た目は丸坊主だがちょうど頭に髪の毛が
乗っかってるイメージの髪型。
緑のアーミーコートを羽織り
黒の無骨なブーツにズボンはイン。

肩をたたく明智
  「銀さんっ何やってるんですか?」

眼光鋭く振り返るとすぐに綻ぶ表情
 「おおおぅ!橘じゃねぇ〜かっ
  元気にしてっか!」

  「今日はビジネスですか?
   相変わらずお洒落ですね。
   大胆なのに上品なんだよなぁ。
   決まってます銀さん!」

照れ隠しか、ツルツルの側頭部に触れつつ
 「おおっ!そうか?お前だけだよ
  そんな事言ってくれるの橘ちゃ〜ん」

  「銀さんはいつでもオシャレですよ。
   アーミーコートに白のズボンは
   なかなか履く勇気はないですよ。
   ブーツインだし!」

 「ありがとな!で、何してんのよ
  こんなところで橘はさ?」

  「銀さん時間あります?喫茶店にでも
   行きましょうよ」

 「おう、いいぜ、オレの方はちょっと
  下調べに来ただけだからよ」


 いいか、橘
 弾丸には、なにも込める必要はない。
 引き金を引くにも覚悟は必要ない。
 そこには結果が転がっているだけだ。
 後腐れなく仕事を済ませることだけを考えろ。
 どう感じてもどう生きても反則はない。
 覚えておけよ〜橘ぁ〜
 ミッションをどうこなそうと
 失敗ってのは無い。
 あるものでなんとかするだけだ。
 卑怯と言われようと生きた者勝ちだ
 リカバーさえ出来れば後はどうとでもなる。


戦慄の来栖に鍛えられていた時代
主に銃火器の扱いを教わった
 栗木 銀時【くりき ぎんとき】通称 銀さん
ある意味、
明智の生き方に多大な影響を与えた人物である。
彼の影響で物事をクヨクヨ考えず
シンプルにデザインされた
考えを持つようになった。
後悔の先には何も生まれず
失恋真っ最中の橘時代に最も世話になった。

「オンナなんて星の数ほど居るんだからよォ〜
 次にナニが来るのか気楽に
 楽しみにしてるくらいが丁度いいんだぜ〜」

生きていれば何とかなるmindを植え付けたのが
銀さんなのだ。

ウェイトレスが目の前に置いた
コーヒーカップを手に取り一口飲むと
矢継ぎ早に銀さん
 「どうもこの辺りで
  きな臭い事になりそうなんだよな。
  橘もそれで動いてるんだろ?」

  「まだ、そこまでは
   シッポをつかめてないんですけどね。
   どおやら、大勢の人を巻き込んで
   ナニか起こそうと
   してるみたいなんですよね」

 「おう、そこまで分かってんだな!
  橘は、感がいいからな。
  オレの方は相変わらず
  武器商人をやってるから
  そっち方面の情報は早い。
  最新の兵器が動きそうだぞ。
  自衛隊の幹部に知り合いが居るんだけど
  この兵器を街中に運ぶ計画があるらしい。
  この時点でおかしいだろ?」

 「DEW  指向性エネルギー兵器って
  橘 聞いたことがあるか?
  SFモノでは定番の兵器だな」

directed -energy weaponの略称
ダイレクトエナジーウェポンは
目標に対して指向性エネルギーを
直接の照射攻撃を行い
目標物を破壊したり機能を停止させる兵器。
ロケット弾 ミサイル 砲弾などの
飛翔体に頼らず攻撃を行う。
対物用 対人用とあり
実戦投入は、世の中の設定上は
未だ研究開発段階だとされている。

 「民間には、まだ実戦にはほど遠いと
  いわれているがそんな訳ないわな」

何十年も前から活躍している。
映画などでは可視化されているが
実際は目には見えない事が多い。
知らないうちに照射されていて
知らないうちに死んでいるような兵器だ。

 「電磁波エネルギーだと
  レーザー波 レーザー光 ビーム状マイクロ波 
  だとかの電気を大量に消費するタイプの奴」

 「光子力以外の素粒子エネルギー
  荷電粒子 電子ビーム 陽子ビーム
  重粒子ビーム 音波エネルギー
  色々種類は、あんだけど
  電波兵器、高エネルギー電波兵器HERF
  電子レンジと同じ原理で作動するヤツが
  オレは、怪しいと踏んでいる」

 「オレが知ってる話だと自衛隊はアメリカ軍と
  繋がりが深いからこの兵器辺りが怪しいな」


2007年1月25日 アメリカ陸軍
460m離れた人の体温を約54℃に上げることが
できたと公に発表、確認できている。
アクティブ・ディナイアル・システム装置
特定の部位に収束させることによって
高出力の電磁波を当てて電子機器を焼損
無力化するというエクスキューズが付いてくる。
その気になればって話だ。

アクティブ・ディナイアル・システムは
ミリ波を供給源として目標の皮膚の水分を加熱
無力化するほどの痛みを引き起こすことが可能。
実際、暴徒鎮圧の用途ですでに使用されている。
激しい痛みをもたらすが
永続的な損傷をもたらさないよう配慮されている
とは言うものの
眼球に対して回復出来ないほどの
損傷を引き起こす事が分かっている。

 「分かっている?
  オレから言わせれば、なんで分かったんだ?
  ってことだわな。
  すでに実戦導入されていて
  実際の実験結果だろ?てなことだ。
  データ上では感を演出してるのが
  こざかしくないか?」

マイクロ波での暴露することでの
副作用はまだ分かってない事がある。

 「どさくさに紛れて、
  この兵器をかっぱらってやろうか
  ってのがオレの計画なんだけどな。
  公にされてないモノだから
  盗んでも公では裁かれないグレーな訳よ」

 「この辺りにターミナル駅があるだろ?
  遮るモノが無いところが重宝するからな。
  配置するなら俺だったら
  その周辺にするだろうから
  嗅ぎ回ってたんだよ。
  兵器自体はオレが知っている頃からは
  小型化されてるだろうけど
  準備段階でも痕跡は残るはずなんだよ」

明智は、いよいよ大事件は起こるべきにして
起こされる可能性が高いことを実感する。

 「銀さんっ その鉄道会社の大元が
  製薬会社ってのは知ってます?」

コーヒーを一気に飲みほしてカップを置く銀さん
 「こりゃ〜兵器は稼働しそうだな」

こめかみをトントン明智
 「ある噂があるんですよっ銀さん
  大型製薬施設を
  建てる計画があるんですが……」

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