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Laboの男76
Labの男76
「今日この後空いてる?万次郎」
「毎日空いてますよ」
「ちょっと赤ちょうちんに寄ってかない?」
「あぁ〜
いいですねぇ。映画館近くの
いつもの居酒屋ですよね?」
「ルナ先生とかマコちゃんも誘います?」
「別にいいっちゃいいんだけど
いや、話しが脱線しそうだから
今日は2人だけでいいかな」
素行不明の生態、生真面目な人でなし
玄白からの誘い。
ちょっと何があるか楽しみな万次郎
のれんをくぐると
そこはいつもの雰囲気
どうでもいい話をくだらなく語り合う
変わり映えしないナイスな空間がそこにある。
ありふれたその変わらぬ佇まいから
万次郎は「おかえり」を言ってもらえた気がした。
まるで帰国したての留学生のように
以前の感覚が思い起こされる。
それまでの何の変哲もない日々。
年齢を重ねるれば
それは、かけがえのない日々とも言うらしい。
エビス薬品工業と関わるようになってからは
退屈からはかけ離れたアップダウンの激しい日々。
奇妙な出来事の連続は記憶に強烈に残るが
掴みどころがない。
まるで映画を観たような感覚
実感があまりにも伴わない。
1stミッションでの尾行
薬品流出の大事故から始まり
気化した薬品吸引による群衆の凶暴化
本宮町を巻き込む大暴動に発展
素知らぬ組織が暗躍している実情
実在してはならない神経ガス兵器
失敗の報復としてビルまるごと爆破
尾行対象のとんでもない能力
身をもって知った数々の奇妙な経験。
なんだったら
映画の方が話の筋が通ってるかもしれない。
フィクションといえど
事実をお手本にして作られているのがよく分かる。
どれをとっても誰も信用してくれないだろう?
そりゃ〜なにかと麻痺してくるはずだ。
居酒屋のアットホームな空気を吸うと
大学生活での何か面白いことが転がってないかと
退屈していたのが
ひどく昔のことのように思えてくる。
エージェント万次郎は知っている。
世界では人知れず
とんでもない事が繰り広げられているのだ。
なに言わずとも2人はカウンター席に座った。
背中を丸め座椅子を前に引き寄せながら
玄白
「万次郎は日本酒でいいよね?」
「うっすっ」
「折行って話しておこうと思ってね
めまぐるしく状況は変わって来ててさ。
だから改めて
現在のエビス薬品工業の事を色々と。
まだエージェントになって
日も浅いから情報過多で大変だろうけど
万次郎がきてから
大きく流れが変わって来てるんだよ」
「なんスか?やばい話ですか?」
「万次郎も知っておいた方がいいと思ってね」
玄白先生の講義を聞く体勢になる万次郎
居酒屋の大将 「ほい!おまっとさん!」
先にきた、とっくりを手に取り
万次郎のおちょこに酒をそそぐ玄白
次にきたビールジョッキに手をかけ
目の前にクイッと乾杯ジェスチャー
2人は、くいっと飲む。
「あぁ〜っ、しみるねぇ。
万次郎をしっかり実験している場合では
なくなって、うかうかしてたら
首切られちゃうくらいよ。
だいぶ雲行きが怪しくなってきてる」
「えっ!えぇ〜〜〜
ただでさえみんなエージェント兼
実験体モルモットなのに
みんな首なしイワノフになっちゃう!?」
「いやいゃ、物理的な話じゃ〜なくて
職を失う方ね。
以前みたいに適当にのらりくらりとは
いかなくなって来てる。
まぁ〜言わんとしてることはわかるよ。
骨の髄まで吸い尽くされて捨てられる
ってのはありうるから」
「少なくとも役に立ってる間は
大丈夫だろうけど上層部だけで何かと
運営できるようになっちゃうと
分かんないけどね」
ジョッキを振り上げ一気に飲む。
ゴクッ ゴキッ ゴン かぁはぁ〜
「おやっさん!ビールもう一杯もらえる」
「あいよぉ!」 ゴン 「はいどうぞっ」
ジョッキを引き寄せてひと口
すると落ち着いて話し出した。
あれだよね
クリスタルマンって超絶兵器ってことは言ってた?
世界情勢を一気に変えてしまうぐらい強烈な。
うん?あぁ〜そこまでは話してなかったか。
彼を研究するだけで恐ろしいほどの
恩恵があってオーバーテクノロジーを
兵器方面へと発展、開発できちゃう。
人類にとって未知の情報とは
いくらでも流用のきく便利な物を作れるのと
同時に
それは恐ろしい数の兵器を多方面に展開でき
恐ろしい金額の収益が生まれる。
軍事方面へはいくらでも扉は開かれていて
わかりやすく研究費がおりる。
手短なところだと
ある固有の周波数を秘密裏に放出
一定量の波をあるエリアに当て続ける。
例えば
極端に治安の悪いエリアだったら犯罪率が減少。
波は建物も透過して進む。
継続的に波を受けていた民衆単位の価値観を
ガラリと変えることのできる技術。
【短期間での思想の改変】だね。
その気になれば
人類を強引に従わせることが
簡単にできちゃうテクノロジー。
さらにエリアを脳に置き換えると
脳の局所に周波を当てることで天才を人為的に
作れてしまったりと
成人状態からの途中改変可能だ。
それもそれほど難しくもない。
今、話したのは
決して公にしてはいけない兵器では無い方
なんだったら公に流用されてる。
玄白がそっち方面には
全然興味が無いのは分かるよね。
でもね、どうも
そうは言ってられなくなって来た。
この間の人事移動だとか
クリスタルマンの引越しがあったでしょ。
それはただのお引越しじゃなくて
本格的に上層部が研究に乗り出してきたって
事なんだよね。
少なくともエビス薬品工業が
日本を取りにきてるスケールの話。
上層部主導でコントロールする為の布石
人事異動なわけだった。
「それじゃ〜
明智Laboの存続は厳しい?」
「今まで通りのぬるい感じには
いかないだろうね。
結構な貢献してるから利用価値はある
とは思われてるだろうけど」
「万次郎は知らない昔話だと
クリスタルマンがウチにきたのも
来栖さんがロシアを撃退したからで、
エビス薬品工業が独占的に
クリスタルマンをget出来たわけよね」
「その息がかかった部下が明智 小五郎。
その明智が連れて来たのがボク杉田 玄白。
明智はその後釜のロシアンスパイを
返り討ちにしている。だから
上層部には一目置かれてるだろう。
それで玄白はというと
鉱石化している元ニンゲン、
クリスタルマンが生きていたことだとか
凄まじい情報宇宙の所有者で
彼の身体に付着しているクリスタルが
外付けハードディスクみたいなものだと
突き止めたのもボク」
「人類の叡智
半鉱石のクリスタルマンから
自然精製されるグリーンクリスタル。
もちろん
マコちゃんがいて言語学的アプローチが
あったからこそクリスタル解析が
爆発的に進んだんだけど」
「世界では周知の事実だったんだろうけど
クリスタルマンのことに関しては
日本は後進国だったんだよね」
「当時、日本もエビス薬品も
クリスタルマンの存在
重要性すら分かってなくて
他国では非常に重要機密扱いだから
知る人ぞ知る感じだったんだ」
「何か理由があったんですか?」
「日本だけゴマメだったんだよ。
カウントされてなかった
仲間外れみたいなものだね」
「想像しやすい身近な例えなら
UFOとか宇宙人扱いくらいの極秘事項ね。
勿論、来栖さんは知ってたみたいけど
初めは半信半疑だったって言ってたけどね」
「ちょいちょい!サラッと言ってますけど
宇宙人っているんですか?」
「え〜っと何だっけ?あのTVシリーズ観てた?
う〜んと、ほらっ
モルダーとスカリーが出てくるの?
そうだ!エックスFileだっ」
「大好物ですけど?」
「あれ、ほとんど ホントだからね」
「マジっすかっ!?」
「世界各地に怪しい研究施設はたくさんあって
UMA【ユーマ】だとかの未確認生物は
あちこちにある研究施設から脱走の末
実験体が逃げ出したまま野生化したりが
大まかな概要だね。
そもそも実験体は大半が短命なんだけど
レアケースで生き延びて奇跡的に交配して
ひっそりと暮らしてたりと色々とあるんだよ。
だからドラマシリーズX Fileでは
事件が起きてFBIが捜査するってなってるけど
本当の冒頭部分はあまり語られてないんだ。
ストーリーでは途中から始まって
真相は闇の中パターンで終わる」
「事実を知らせないで捜査させるのは
よくある事なんだよ」
「ジェイソン楠木の件みたいにですか?」
「そうそう、元々真相を知っていて利用したり
利用されてたりと色々と思惑が
入り組んでるんだけど
組織として知っておきたいことなら
捜査させといて真実まで突き止めれたのなら
上層部としてはラッキーだし
あまり知られたくないところまで
食い込んできたのなら
そこからは別の部隊に任せればいい。
だからモルダーとスカリーは
いつまで経っても未解決のまま分からない。
とてつもなく可哀想な捜査官なんだよ」
「あんなに真実を追い求めてるのに
それはやるせないですね」
「もっと器用な
デキル人材だったら上層部から
お声がかかるんだろうけど
そこまではいかない。
以前までは好きなシリーズだったけど
どこへにも行き着けない彼らを観てると
ちょっと気の毒に思っちゃうんだよね」
「それじゃ〜宇宙人はいるんですね」
「それはそうだよ。
何だったら
人類は宇宙人がイジったから
出来上がったんだよね。
X Fileでは描いてなかったけど」
「うそだぁ〜」
「ふふふっ、だから厳密に言うと僕らも
宇宙人なんだよ。
それってエイリアンからすると
人類もギャラクシーの一員で
宇宙人って呼べるって事じゃなくて
我々はハイブリットなんだよ。
世代交配を繰り返して原初の頃からは
だいぶ薄まってはきてると思うんだけど」
「だから色んな意味で
まだ到達していない領域は沢山あって
覚醒したりは序の口で
お茶の子さいさいだと思うんだよね」
「宇宙人とのあいの子がニンゲンで
もっと凄いことできるのにって
思ってたんスねぇ!
なるほどです」
しばらくの間をおき
中指で黒縁メガネを上げるも
ぶっ 肩が震えだしたまらず吹き出す玄白
「だっはははははっ
大体はそこで素直に納得しないんだよ。
なんで平然と飲み込めるんだよ。
やっぱり万次郎はおもしろいねぇ〜」
「ちょっとした下地がすでにあって
オカルト系は大好物なんですよ。
段々と何でもアリなんだって
分かってきましたよ。
これはっ今日来て良かったですよ!
ワクワクが止まりません」
おちょこで日本酒をクイっとやる万次郎
ジョッキを飲み干しもう1杯頼む玄白
少し興奮してるのかピッチが早い。
「話を戻すと
だから今回のジェイソン楠木案件は
様子見で明智Laboが試された訳よね。
どこまでできるんだ?ってさ」
「玄白が今ウッディーとコチョこちょ
パソコンいじって喋ってるでしょ?
あれ上層部がやってる
クリスタルマンの実験を盗聴してるのね」
「えっ!それバレないんですか?
殺されません?」
「多分、泳がせてるんだと思うんだよね。
それまではウッディーが交渉人として
クリスタルマンと対話してたんだけど
彼は誠実だから上層部の言うことを聞かない
人格者だったから
このLaboに送られて来たんだよ」
「ウッディーがすごいのは
どこからでも
地下8階から最上階の8階距離を関係なく
クリスタルマンにアプローチできるんだよ!
スゴイでしょ?
ぼくらのヒトを読むことができる能力の
拡張版、テレパシーだよね。
木の彼いわく高度な瞑想なんだって。
瞑想状態での会話ができれば簡単らしい。
だからボクらも考えてばかりいないで
瞑想は続けた方がいいみたいだね」
首をカッ切っるジェスチャーをして
そこから上を指さす。
「いまイワノフが
クリスタルマン担当になってるのよ。
厳密には首から上だけね」
「えっ!生首だけ?あぁ!
もしかしてマンガみたいな話
生体コンピュータとしてですか!」
「そうなのよ。で、
首を切っても残された
イワノフボディが死なないから
おそらく研究しろって意味もかねて
邪魔になるから明智Labo送り。
ナゾに彼、クビとは別に
意志を持っちゃってるから
色々と研究最中に
邪魔したんじゃないかな」
「クリスタルマンの表現だと
頭には愛国心が残って稼働していて
首から下には鉄の意志が残って
稼働しているらしい。
原理は全く分かんないんだけど
玄白的にはしっくりくる」
「イワノフとは話せるんですか?」
「イワノフヘッドの方は安定してないから
今はアプローチしない方がいいって
ウッディーが言ってたけど
イワノフボディーの方は
鉄の意志のおかげなのか
素晴らしく安定していてびっくりするくらい」
「イワノフの発言の方なんだけどね
う〜ん、何となくは分かるんだけど
殆ど木人ウッディー介して
補足してもらわないとキビシイよね。
彼の思ってることは察することが
できるんだけど、玄白単独でだと
相手の発言の機微をくみ取るまではいかないな。
母国語が違うってことは考え方だとか
文化スタイルが異なるってことはだから
微妙に発想が変わってくるからね」
「ヘッドレスイワノフは意外と
まともなんだよね。
ウッディーも非常に常識人なんだよね。
エゲツない道徳無視な実験には
命令にも従わないし聞く耳も持たない。
だから上層部が扱いにくいから2人とも
ウチのLabo送りになったのかな?
ついでにルナ先生も監視役のお役免除で
我がラボ入りに」
「それじゃ〜見た目がモンスターな2人の方が
明智Laboではまともな常識人で
それ以外の方々のモンスター度合が
際立っちゃいますね」
「だっはははは
よく分かってるじゃない万次郎!
でもアナタ、まるで自分は普通だ風に
話してるけど万次郎もなかなかだからね!」
「なに言ってるんですかっ
いたいけな大学生捕まえて」
「ほんとに分かってないな〜
普通にボクの話を面白がって聞いてる時点で
クレイジーに決まってるじゃないか」
「だっははははっは」×2
それじゃ〜万次郎が知らない
ボクのプライベートな話していくね。
これからの明智Laboの身の振り方を話すのに
ボクの師匠の事を言っておかないといけなくてね。
カーリーヘアーをもふもふと触りながら
3杯目のジョッキを飲み干し4杯目を頼む。
新たなジョッキには手をつけず
さっきとは違って
真剣な顔をして話し出した。
玄白には師匠がいて名は霞目 権三
大変お世話になったらしい。
実験中の不慮の事故から大量殺戮
自身ではコントロールの効かない
不老不死の細胞を宿すこととなり
アンコントローラブルな細胞に蝕まれている。
【貪欲なアギト】と名づけられた
近づく生命を全て喰らい尽くす細胞
霞目博士は実験体オブジェクトとして
監禁されておりと知る人ぞ知る組織
「保管保全財団」により隔離幽閉されている。
隔離された場所で
事実上の本体、霞目博士は研究を続けてはいるが
【貪欲なアギト】キマイラ細胞に生かされている。
不老不死の研究では費用がいくらでも出る案件だが
すでに15人は跡形もなく食べられてしまい
霞目 権三と一体化してしまっている。
15名のうち5名は保管保全財団関係者で
新たな研究に失敗、食べられてしまっている。
現在、研究はケースクローズされている。
霞目博士以外は。
実年齢は100歳近い超高齢のはずだが
キマイラ細胞のおかげで
玄白よりも若い見た目になっている。
そう、丁度15人喰らうと実年齢の1/3位に
なる計算だね。
生き物に反応する貪欲なキマイラ細胞は
プラスチックで隔離するとおとなしくなること
だけが現在判明している。
「かれこれ
50年ほど前から霞目博士は超有名人。
博士の業績は風化しちゃってる感があるけど。
それは博士が失踪した事になってるから。
一般には知られてない
近年のキマイラ細胞暴走事件
実験の失敗で大惨事になったことは
裏業界では有名。
不老不死はお金になる」
居酒屋カウンターにポッケから
フィルムケースを取り出して コン
万次郎の目の前におく。
何も考えずに手に取り
フタを開けようとする万次郎。
その手をサッと握りしめる玄白。
万次郎 「あのぉ〜ボクはストレートで
そっちのけはないですけど」
「いやいゃ、フタ開けたら大惨事になって
ここにいるみんな死んじゃうから」
しばらく間があって
フィルムケースから手を離す万次郎。
「こわっ!何でここにあるんですか!」
「もしかして、キマイラ持ってたんですか!
それだったら触らなかったですよ!
もぉ〜どうかしてますよ玄白さん!」
「実際にモノがあった方がわかりやすいでしょ?
人喰い細胞って想像できないじゃない?」
「この黒のフィルムケースだったら
中身が見えないじゃないですかっ!」
「あっそう?だって今の万次郎だったら
このケースの中にいる生命の息吹が
感じとれるんじゃないの?」
確かに今ならこの生命の波長を感じる事ができる。
「この大きさからだと
波長のサイズ感がおかしいですね。
生命の波動が強すぎませんか?
大型動物以上の力強さですよ」
「成長したねぇ、万次郎。
ほんのひと欠片の細胞でこの力強さ
真実味が増しただろう?
だから持ってきたんだよ」
「いやいゃ危険はかえりみないんですか?
やっぱりクレイジー過ぎますよ玄白さん!
だってここでなくてもっ!」
「それマコちゃんにも言われたよ。はははっ
あんたっバカなの!って」
玄白が【それほど真剣なんだ】ってのは
あまり伝わらず
死の恐怖でぶっ飛んでしまう事は
あまり、よく分かっていない。
玄白の気を引いたのは
ケースのフタをなんの躊躇もなく開けようと
後先考えずに行動できてしまう万次郎だ。
クリスタルパウダーを投薬以降
彼の真っ直ぐさは浮き彫りとなって
明らかに異質だ。
改めて目の当たりにした玄白は
その若さこそが何かを切り開いていくんだなと
感じるのであった。
ジョッキを振り上げビールを流し込むタイミングで
万次郎もおちょこの半分ほど酒をふくむ。
玄白はまだまだ興味津々の万次郎の顔を見て
うれしそうに話を続ける。
「明智Labo存続に向けて
要は資金が必要なんだよ」
だからこのキマイラ細胞を売ろうと思っててね。
首なしイワノフの研究でしょ
木人ウッディー自体の研究
それで遠隔からのクリスタルマン研究
不老不死のキマイラ細胞研究と
色々と入り用になってくる。
明智Laboの設備強化も必要でしょ?
しっかり研究するにはやっぱり
必要なのは資金なんだけどぉ
エビス薬品からの援助は期待はできない。
ボクの覚醒研究では
支援はあまり得れないだろうからね。
それに援助を得れたとしても
上層部からの口出しが入るだろうから
圧力を受けて今まで通り好きに
研究は進めなくなるだろうからね。
「どうせ分かりやすい軍事方面への
研究をしろって
圧力をかけられるだけなんだから」
黒のフィルムケースを触りながら
縦に立てて
「栗木 ブラザーズに頼んで
諸外国に売ってもらおうかと思ってるんだ」
「そんなに高値で売れるんですか?」
「不老不死はどの国でも欲しがるよ。
それでなくても商売はなんとでもなる
金のなる木なんだよ。
来栖さんと知り合いだから
仕事に関してはシビアだろうし
金さんと銀さんに任せれば
世界情勢に詳しくて武器兵器の観点
あとは世界の裏事情に詳しいから
期待できるんじゃないかな」
「そんなにニーズがあるんだったら
玄白さんが直接売れば
もっと儲けれるんじゃないんですか?」
「それ相応のやばいブツはルートが
限られてくるんだよ。そう簡単にはいかない。
やっぱりぼくには商才がないし、繋がりもない。
ヤバイ組合関係は栗木 ブラザーズ
金さん銀さんが群を抜いて頼れる。
それに信用できるからね」
世の中は上手く住み分けができているんだよ。
「そんなにお金になるんですか?」
「そうねぇ〜安く見積もって
数十億にはなるんじゃない?
売った値の半分を栗木 ブラザーズにもらって
もらおうかなぁって思ってるよ」
「えらいことになってますねぇ。
規模が兵器扱いなんですね」
「なんてったって支配層の人種なら
ナゾに不老不死を欲しがるでしょ?
対外的なそれっぽい理由なら
宇宙開発〜兵器〜美容からとオールマイティ
なんとでもできるから」
「玄白さん自身がLaboを作ろうって
思ったことないんですか?
その気になったら
やれそうじゃないですか?」
「それはねぇ〜エビス薬品工業ほどの
研究対象が集まってくる所が
他に無いからだよ。
それにボクにとっても覚悟が必要だったんだ。
不老不死研究にちゃんと向き合う
時間と仲間ができたからね。
ぼくの言ってることをちゃんと
分かってくれる人が後押ししてくれたんだ」
「明智さんですね」
「彼は僕にとってかけがえのない戦友で
ちゃんとおかしな事を言っていたら
全力で否定してくれる。
たとえ自分に不都合になろうとも
僕を研究者扱いしないんだよ。
利用されない関係性は
なかなか作ろうとしても上手くいかない。
マイチingマコちゃんもなんだかんだ言って
僕のことを本当に想ってくれてる。
いけないルナ先生は野望はあっても
一貫してちゃんとヒトを人間あつかいで
生きてるでしょ?
木人のウッディーと首なしイワノフは
僕よりも遥かに人格者だし大丈夫」
「それに万次郎は僕がやろうと思っている
事を単純に【おもしろい】って
感じてくれてるだろう?
まぁ〜これからの展開次第で
皆んなどうなるか分かんないけど
カタチは違えど
ここまでバカ真っ直ぐな人達が
集まってくれたのには縁という
宇宙がやれと言っている
様にしか思えないんだよ」
「今回、万次郎に話したかったのは
もちろん急激な状況変化が予想されるから
予備知識を教えようと決めたんだけど
それ以上に
ぼくの決意表明を聞いてもらおうと
いうのが本心なんだ」
明智Laboはナニがあっても潰させない
「そして皆んなでワイワイ生きていくんだ」
だから万次郎は、僕たちに気を使わずに
想うように行動したらいいよ。
外側からの動機づけには何の意味もない。
内側から湧き上がる情熱こそ
直感を生み本質を貫く。
僕はキミに期待してるんじゃなくて
君ならどう動くのかが楽しみなんだ。
どんなバックグラウンドがヒトにあるかなんて
関係ない。いまをどう真剣に生きるかが
その人自身をカタチ作ってく。
だから正しい正しくないなんて
くだらな過ぎるよ。
キミがどう感じどう動きたいかだけだ。
そこには後悔なんて存在しないし
後悔は行動に正解を求めるから生まれる。
もっと自分を信用してやれだ。
万次郎は玄白の情熱という波動を受け取って
鼻血が出そうなほど大興奮している。
サラッと話してはいるが
【このヒト、、本気に思ってる、、、
こんなにボクみたいな若僧に
真っ向勝負で話してくれてるなんて
感無量で鼻血と涙が同時にこぼれそうだ】
サッと思考が漏れてしまう万次郎の心意気を
受信する玄白は満面の笑みを携え
無言で両手を伸ばし抱きしめる。
その情熱は直にお互いをインパルスし
理解を超えた感動を生み
力強く抱きしめ合うのであった。
居酒屋の大将
「何言ってんだか分かんないけど
カップルだったのか〜」
新たな誤解を生み出す
情熱ヘクトパスカルなのだった。