左手
私が子供の頃の話です。
私の実家でまだ家族全員が過ごしていた頃。
虫の鳴き声が聴こえる夏の昼間。
私は姉と遊んでいた。
二人で遊んでいる中で押入れに入って遊ぶことになった。
押入れの在る部屋は、居間から左側に仏間、右側にはキッチン。仏間の左側に和室がありその部屋に押入れがあった。
私と姉は押入れに入り二人で話をしていた。
内側から開けられるように少し隙間を空けておいた。
暫くすると少し開けておいた筈の襖が閉まった。
押入れの中は暗闇に包まれ、幼かった私は内側から開けられなく慌てた。
恐らく母親が中に私達二人が居るとは知らずに閉めたのかもしれない。
私と姉は母親を大声で呼び叫んだ。
声に気付いた母親が襖を開ける。
『こんなところで何してるの?』と笑いながら言われた。
慌てて押入れから出ようとし身を乗り出した先に仏間にある仏壇の部屋が目に入る。
仏壇の下には小さな小物を収納する場所が在るのだが、そこから小さな左手が出ていた。
白く血色の感じられない左手。
幼い私は解らずに母親に訪ねた。母親は暫くして小さな数珠を私の左手に付けた。
何かあると良くないから暫く付けてなさいと。
この現象は忘れた頃にまたやってくる。