基礎学力が無い大学生は90年代後半から存在していた〜②学力低下の理由〜
前回の記事では、90年代後半に問題となった基礎基礎学力が無い大学生の実態を述べた。
基礎学力といっても、数学力を指すが、驚くほど低かった。私立だと入試科目で課されてないとはいえ、中学生・高校1年生レベルもままならないとは拍子抜けしてしまった。
基礎であるため、高校卒業しているのなら、文系・理系関係なく答えられるのが当然である。
参考資料「分数ができない大学生」では、
大学の先生方は、90年代前半に入ってから、
学生の数学力が落ちたと、口を揃えて述べていた。
90年代にかけて、数学力が下がった理由は2点から説明できると考えている。
①:80年代後半における大学定員の増加に伴う大学進学率の上昇
②:80年代半ば〜90年代前半の私立大学人気
まず、①について
大切な前提として、80年代後半からは18歳人口(以下、人口)が増加した。
下記図の通り、74年〜85年(昭和49年〜60年)までの11年間は、人口と大学進学率はほぼ横ばい。
そして、86年から92年にかけて人口が増えたため、大学の定員を増やして、進学率を85年以前の25%程度から下がらないようにキープした。
バブル世代や団塊ジュニア世代が受験する頃。
ところが、93年から人口が減っているにも関わらず、定員の数は変わっていない。どころか、99年までの6年間で約10%増えている。なお、国立大学は18歳人口の増減に合わせて、定員を調整している。
1度定員増加に味をしめた大学は、定員を元に戻さなかった。おそらく、文部省(当時)に抗議したのでしょう。
いうまでもなく、元通りにすると売上が落ちる。大卒者の質を維持するよりも、大卒者の数を増やした。
結果、大学進学率は上昇して、85年以前だったら、大学に入学できない層も進学するようになった。90年代後半だと進学率は40%に届く水準。
続いて、②について
80年代中盤までは国立大学が人気だった。学費が非常に安かった(現在の価値で年20万円程)からである。
しかし、国立と私立の学費の差が小さくなったため、5教科全て勉強してまで、国立へ進学するメリットが薄れた。
私立が人気になり始める。加えて、バブル景気が始まり、私立大学でも就職実績が向上する。(一時的であったが)
このような流れで、英・国・社会(数学は選択)を受験する私立文系専願の受験生が増える。
余談です。
88年より、慶應大学の経済・商・法学部でも、数学入試が必須でなくなる。法は廃止。経済と商は選択制となるが、現在でも数学受験の入学者が多い。当時、慶應は早稲田より人気がなかった。
人気を上げるために、偏差値上昇に着目して、数学必須を辞めたのだ。
数学を受験科目から外すことで、母集団のレベルが下がり、見かけの偏差値が上がるからである。
当時、偏差値の仕組みを理解していない人が多かった思われるので、偏差値の高さがもたらすイメージアップに成功したのだ。
こうして、基礎的な数学すら怪しい大学生が増えていった。
正直、学生は何も悪くないんですよね。
基礎学力が無いにも関わらず、大学に入れてしまう状況が悪い。
大卒者の質の維持を図らず、学校の人気に拘る私立大学が全ての元凶。
私立だからといって、金儲け中心の考えとなってはいけない。
あくまでも教育機関。
大学の存在意義とは、研究と社会に役立つ人材を育成すること。
10年後は90年代のように、18歳人口が激減する。18年後には75万人です。
私立大学の売上維持のために、再び大学進学率を伸ばして、同じ轍を踏まないように、文科省は大学(文系・学際系の学部)への規制を徹底していただきたい。