最近のオトン

 マイホームから離れて、実家でオトンの世話をしながら生活を始めて、色々な環境の変化と無意識のうちに溜まっていたストレスで、僕はパニック障害を再発してしまいました。

 そして1ヶ月ちょっと休んだ職場からは、耳障りの良い言葉を並べられて試用期間での退職を促され、現在は新しい職場で、7月8日からひとまずはパートとして週4日ペースのシフトでの日勤フルタイムで働いています。今のところは特に問題無く、多少のブランクは感じるものの少しずつ職場にも慣れてきて、何より体調も安定していますので、このまま体調が回復していけば、面接の時の条件通り正社員として雇用してもらえそうですし、何より体調が整ってきているので、僕もそれを望んでいます。
ただ、今日の定期受診でも主治医に「ぼちぼちいきましょう。」と言われ、僕自身も今はそう思います。焦らず無理せず、何よりこれから先長く安定して働いていければ良いなと思います。


 ただ、施設を転々として、働き出してすぐに辞める事になった有料老人ホームも、今働いているユニット型の特養も、どちらも働いてみて共通して感じるのは、極論施設介護は、どこの業態も施設も似たようなものだなという事で、ちょっとした施設の雰囲気や、介護観、人間関係、その辺りは働き出さないと分かりませんし、その上で続くか続かないかはほんまにそれは働いてみないと分からないという事でした。


 そして僕は、直近退職した施設も、今の施設に対しても特に、何か「これはあかん!」と思うほどのものは無くて、細かい「あっ、この施設はそういうやり方なんや〜。」という違いを感じる事があるぐらいで、人間関係としてもどちらもぼちぼち良好で、単純にプライベートでの大きな環境の変化。父親の世話が思っていたより大変やったり、娘に会えない寂しさや、妻と離婚の話し合いをしたりといった事でのストレスで体調を崩していき、パニック障害が再発してしまったのだと思っています。


 それで、今後の為に仕事を休んでいる期間にケアプランを見直して、出来る限り僕の負担を減らすようにしました。

 「そんな些細な事もストレスなん?」と思われるかもしれませんけど、うちの父親はADLはほぼ自立。自宅で脱水症状で倒れて死にかけるまでは、一応は一人暮らしが出来ていましたし、病院でのリハビリを経て退院する時には「介護認定の更新で下手をすれば要支援が出るかどうかも怪しいです。」とまで言われていたので、僕は当初「家で一緒に生活しても、手はかからんやろし、まぁ大丈夫やろ。」とかなり楽観視していました。


 そんなオトンは、実家に戻ってすぐにお酒を朝から飲む生活になり、アルコール依存症で、セルフネグレクトのような状態になりました。トイレには自分で行けますが、お酒を飲む以外に何もしなかったのです。自分の書類の管理も、買い物も、当然朝と晩の食事の用意も全て僕がやるという生活が続いていました。
 あげく酔っ払って家で転倒して頭から血を流して救急車を呼んで病院にいったり、自分で選んで買った弁当の千切りキャベツを勢いよく食べて誤嚥したので、また救急車で病院に連れて行くと、幸い何も無く帰されたので、その事で僕に「なんで病院ばっかり行かなあかんのや!!」とオトンは怒ってきたりもしました。認知機能も認知症を疑われる程に一気に低下しました。
そんなオトンを見ていて、情け無いやら腹立たしいやら、それが多分僕にとって想定の範囲外に大きなストレスで、パニック障害のトリガーになってしまったのでしょう。

 そして、仕事を休む事になってしまって色々と変えた事があります。

 まず週2回通っていたリハビリデイサービスを週3回にしてもらい、僕が休みの時、仕事の時を問わずオトンが家にいない状況を増やし、施設で見守りしてもらい、尚且つリハビリの頻度も増やしてもらい、オトンのADLの維持向上と僕のレスパイトケアを目的にそうしてもらいました。
これは効果バッチリで、オトンは目に見えて歩行も安定してきまし。それに、最近ではデイでのコミュニケーションも楽しんでいるような事を僕に話してきてくれるようになりましたし、お酒を飲めない時間を作る事にも成功しました。それで、最近は飲酒量も少し減りました。
あと、シフトの休みとオトンのデイサービスの日が重なると、1人でのんびり出来るのは、
ほんまに嬉しい時間です。

 そして、リハビリデイサービスの無い日は、オトンの生存確認も兼ねて訪問介護の利用も、継続しています。当初はオトンの食べたいものを作ってもらうように、必要な材料等があれば、ヘルパーさんにメモを残してもらい、僕が買っておくという方針でしたが、ワガママなオトンが、毎日昼だけ味噌汁を飲んで、残りは捨てるか僕が飲むかという日々が続き、ムカついたので、その事をヘルパーさんに相談し、ヘルパーさんも、毎日来るたびに残っている味噌汁を見ていてそれは分かっていてくれたみたいで、そこから色々試していって、今ではほぼ毎回オトンと一緒に近所のコンビニまで一緒に買い物に行ってもらって好きなものを買ってもらっています。
おかげで、オトンの食事に関しては僕は一切何も心配する必要も無くなりましたし、歩行の安定してきたオトンは、自分1人でも近所のコンビニに自分の食べ物を買いに行くようになってくれました。
 完全にアルコール依存症のオトンに「俺はオトンには好きなもの食べて飲んで死んで欲しいと思って一緒に帰って来たけど、悪いけどそんなに飲むなら俺はもう2度と酒は買って来ぉへんからな。」と言ったのもキッカケになったのかなとも思います。オトンは腹立つ事にちゃんとお酒も欠かさず毎日飲めるように自分で買ってきています。

 そして、デイサービスの準備やオトンの洗濯物の取り込みも、ヘルパーさんにお願いしました。これも任せた事でかなり気が楽になりました。
 作業自体はそこまで労力は要しないのですが、僕がオトンの荷物を用意したり、洗濯物を畳んでいる横で、介護ベッドに寝そべるか、酒を飲んでテレビで阪神戦を見て選手にヤジを言っているオトンを見て「これぐらい自分でやってや?出来るやろ?」と言った時「俺は別にデイサービスなんか行きたくないし、何も持って行かんでも気になれへんから、そんなん用意せんでえぇんや。」と言われてから、その作業をするのがイライラして仕方無くなっていたのです。


 そうしたケアプランの変更に加えて、オトンの生活も最近は少しずつ変わってきました。

 毎日の飲酒量が減った事で、認知機能も多少改善してきましたし、何より自分で色々やってみようとしてくれるようにはなりました。
 ゴミ捨てぐらいならやってくれるようにまでなってくれました。ただ、燃えるゴミとプラスチックゴミの違いがよく分かっていなかったりはします。

 あとは、目に見えて体調も良くなってきていて、最近では寝てばかりでは無くなり、当初家に帰って来てすぐに、オトンのリハビリになればと思って買ったものの、すぐに飽きて放置されていたスーパーファミコンで、昔よくやっていた麻雀のゲームを楽しんでいるのをよく見るようになりました。
それを見た時になんか懐かしいオトンの姿を見れた気がして凄く嬉しかったです。

 僕は僕で職場も変わり、オトンのケアプランの内容も変わり、何よりオトン自身が少し変わってくれたおかげで、前に比べてかなり気を楽に持って生活出来るようになりました。

 ちなみに、オトンが最近家で麻雀ゲームをやるようになったキッカケは、リハビリデイサービスで麻雀をやって負けたからだというのを僕は知っています。
負けず嫌いなオトンは、その人にリベンジする為と、麻雀の面白さを思い出したのでしょう。
僕は麻雀は全く分かりませんが、脳への刺激にもなるし、右手の麻痺のリハビリにもなると思って、麻雀ゲームを楽しんでるオトンを見ると、スーパーファミコンをわざわざ買っておいて良かったと思いました。

 ちなみにその時に、僕は僕でついでに昔欲しかったけど買えなかった『がんばれゴエモン』を買いましたが、僕は僕でそれはすぐに飽きてしまい放置したままです。苦笑

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