たかが洗濯、されど洗濯。下着で揉める我が家の攻防
夫婦とは、時に些細な出来事が深い海峡を生み出し、その隔たりに阻まれて、相手の思いや優しさが届かなくなることがあるものです。
中国人の夫と結婚してから気がつけば5年以上が経過しました。結婚してすぐに直面した嫁姑問題という試練もなんとか乗り越え(たと信じる)、今ではある程度落ち着いた日常を送っています。
しかし、結婚当初は荒れた日々を過ごしていました。互いの文化や価値観の違いが顕著に現れるたび、些細なことが嵐の種となったのです。
その中でも、記憶に残るエピソードとして「下着洗濯事件」があります。
この小さな事件は、国際結婚の典型的な「文化の違い」…とまではいかないものの、互いの価値観の食い違いが露呈した一例でした。それに対して私たちがどのように対処したか、という点についてもここで触れておきます。
洗濯を巡る攻防
発端はシンプルでした。
夫の主張はこうです。
「下着は外着と一緒に洗うのは不潔に感じる。別々に洗いたい。」
(…..おやおや、義両親から何か ”アドバイス” があった模様 )
一方、私の反論は次のもの。
「私はあまり気にならない。でも、分けるなら白い服と色物を分けて洗いたい。」
どうやらお互いに今の洗濯の仕方に不満を持っているようです。
さて、両者の主張を合わせるとどうなるでしょう。単純化すると、1回で済む洗濯が、白物、色物、下着…と3回に分けられる計算になります。共働きの私たちにとって、この解決策は全くもって現実的ではありません。
話し合いは平行線。お互いの意見はなかなか変わりませんでした。
そこで、こういった状況の際に我が家ではどう対処するでしょうか。
我が家で意識している(というか私だけが勝手に意識している)擦り合わせの作法をご紹介します。
擦り合わせの作法
1.お互い何に対して不安/不満なのかを聞く
まずは感情を交えず、相手が何に不満や不安を感じているのかを傾聴します。理由を掘り下げる中で意外な共感点が見つかることもあり、「分かってもらえた」と感じる瞬間が、解決への糸口となる場合もあります。そのためには、相手の思考回路を聞くことも多いです(客観的に何があってそれに対して自分はどう感じたのかの流れ)。ここでは、物事のみに焦点を当て、相手や自分自身を責める表現にならないように注意します。
2.今決めるべきことかを判断する
今すぐ答えを出せる内容か、それとももっと将来的に長い時間軸で検討すべきことかを判断します。今答えが出ない問題には、その問題から距離を置き、不必要な話し合いやストレスを避けることも大事です。ケセラセラ・行雲流水・なんくるないさー精神です。
3.互いの妥協ラインを探る
どこまでなら譲歩できるか、そのラインを探り、それを言語化する。文化の違いが議論をより複雑にしているのはのは間違いありません。文化的な違いが背景に強く出ている場合でも、議論を文化論に引き上げず、実用的な妥協点を模索することが多いです。
この件の場合、私の妥協できないラインは、洗濯の仕方どうこうより、これ以上洗濯で私の家事負担が増えることでした。なぜなら、洗濯は私の苦手な家事ランキング1位なのです。。。ホント二ニガテ。
4.他に採用できるアプローチがないか探る
この点はとてもわかりやすいです。お金で解決できるものか、または他人や専門家のサポートを借りられるか、などできるだけ解決に向けた選択肢を増やす作業です。我が家では、独身時代から使っているクラシックな縦型洗濯機をまだ愛用中です。「ドラム式洗濯機を買おうよ!」と夫に提案してみたものの、あえなく却下。その理由は、ドラム式洗濯機が別件で決めた「目標達成後のご褒美」として設定されているからでした。物を大切に使いたいという思いもあるので、この点については私も同意しました。
5.方向性の仮決定または我が家のルールを決める
無理に結論を出さず、試験的な案を採用する柔軟さも尊重します。またはお互いが納得の上で家庭のルールを決められる場合は、それを作ったりもします。
6.話し合いができそうにないなら一旦保留。また日を改めて会話する
もちろん議論がうまく進まないこともあります。感情的になった場合や議論が泥沼化しそうなときは、話し合いを中断し、日を改めます。
そうして夫婦間で話し合い、私たちの夫婦なりの解決方法を探り見つけます。文章であればサラッと書けてしまいますが、結婚当初だったこともあり、この話題だけで実は何時間も話し合いました。消耗した体力と時間は相当なのもでした。(こんな下着の洗い方一つで、嘘だろ、、と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。)
最終的に、この話し合いで、以下の着地点に落ち着きました。
家事の中で洗濯担当は夫に一任(私は別の家事を引き受ける)
そして洗濯の仕方は夫に任せる 。下着も分けて洗ってもらってOK。ただしおしゃれ着洗いや手洗いものもは個別で私が実施
この方針に問題があれば、その時に再検討
そしてしばらくこの運用を続けることにしました。
それから数か月後、議論の発端となった下着の洗濯は結局どうなったかと言えば…..
結局、夫により洗濯物はすべて一緒に洗われています。
下着と外着を分けて洗いたいという夫の主張はどこへ消えたのでしょうか。
とはいえ、家庭の平和が保たれているので私としては問題なしです。
このことはきっと夫も忘れている件だと思うので、あえて聞くこともしません。
こうした小さな調整と適応の積み重ねが、我が家の夫婦の関係にとっては大切なようです。
(おしまい)
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