『苦しかったときの話をしようか』から考える、キャリア戦略の要諦
本の紹介者:江草 嘉和 https://note.com/yoshikazuegusa
こんな人に読んで欲しい!
・ キャリアについて、じっくり整理して考えられていない
・ 仕事の何をどう頑張ればいいのかわからない
・ 家族や周りの人と、キャリアに関する本質的な話をしたい
USJの再建で有名な森岡さんの本です。『苦しかったときの話をしようか』というタイトルなのです、森岡さんの自伝が綴られているのかなと思ったのですが、苦労話が綴られているのかなと思っていましたが、1章から4章はキャリア形成の戦略、マーケティング論が書かれており、左脳的にまずは理解・整理した後、5章以降の超ドロドロした話で、右脳にもがっちり響く、という構成でした。父親から、就職活動をする子どもへのメッセージ、という体裁ですが、30代後半の私にも十分に響く、活用できる内容でした。
私が本書から読み取ったメッセージは、大きく以下3つです。
①世の中の仕組みを考え理解し、戦略的にキャリアを考え、自分の貴重な資源を、リターンの高いところに集中させる。
②戦略を立案・実行するうえでは、目的(人生をどうしたいか)をおさえつづけること。そのために外(外部環境)→内(Self-awareness)よりは、内→外、の流れを意識する。
③スキルを中心にキャリアを組み立てることが、これからの時代で活躍できる機会が増える。
①世の中の仕組みを考え理解し、戦略的にキャリアを考え、自分の貴重な資源を、リターンの高いところに集中させる
自分が就職活動をするとき、戦略などあっただろうか。。。過去を変えられないし、後悔しているわけではないが、一つの事実として、今と同じくらいの戦略んじ関する知識が当時もあれば、その後の時間をもっと有効に使えたと思う。そして、その知識は、長年時間をかけないと得られないものではなく、チャンスときっかけさえあれば、当時でも入手し、理解できたものと思う。そうした知識を、自分の子供に伝えよう、という本書の趣旨には共感する。
具体例として、本書では年収の決定要因は以下としている。
「スキルの価値」、「業界の構造」、「そこでの成功度合い」
仮に年収を高めたいと思ったら、この構造を理解して、価値の高いスキルを磨き、年収が高い業界で働くことが最も戦略的=実現可能性が高まる。
目の前のことを精一杯頑張ることは大切だが、そこにマクロ視点からの戦略がなければ、残念な結果に終わるリスクも高いだろう。頑張ったけどうまくいかなかった場合は、精神論的な慰めを行う前に、分析、戦略立案という知的努力を怠らなかったかという問いかけをすべきだ。
本書で、自分でコントロールできる変数は以下3点としている。戦略的な頑張りどころは、ここだ。
①己の特徴の理解、②それを磨く努力、③環境の選択
こどもが仕事につくまえに、家庭や学校でこういうキャリア論を学べる機会を作りたいと思った。
②戦略を立案・実行するうえでは、目的(人生をどうしたいか)をおさえつづけること。
我々は外部の声に左右されやすい。周りからも評価されたいし、自分と周囲を比較してしまう。外部からの情報を必死に入手しようとする。
でも、戦略の基本となるのは、外部よりも、自分の内側の声だ。なぜならばキャリア戦略の目的は、自己実現(自分の望む人生を歩むこと)であり、
その答えは内側にしかない。
自分もそうだが、これができないと、手段が目的化してしまう。良い会社に入る、出世する、起業する。これらは全て手段でしかないのに、内なる声に耳を傾けないと、そこを目的化してしまい、頑張らなくてもいいことを頑張ってしまう。
「君が自分自身のことをよく知らないことだと気づけば、解決への扉が開くだろう。問題の本質は外ではなく、君の内側にあるのだ。やりたいことが見つからないのは、自分の中に「軸」がないからだ。」
そして、目的に向けた戦略を実行するときも、「内なる声」が鍵となる。なぜなら、戦略の要諦は他者との差別化。それには自分を知るしかない。
自分自身を知る努力を続けていこうと思った。
③スキルを中心にキャリアを組み立てることが、これからの時代で活躍できる機会が増える。
私も執筆に参加した『全員転職時代のポータブルスキル大全』のメッセージにも通じるものがあった。この会社で働き続けても、マーケットで通じるスキルが身につかない。そう思ったから私は転職した。
スキルは仕事上の多くの悩みを解消してくれるのではないか。圧倒的なスキルが自分にあれば、変な人間関係で悩むことも減るかもしれない。自立できる人には、それを支えるスキルがあると思う。スキルがないと自立できないので、会社や人間関係に依存せざるを得ない。スキルを獲得するコストと、会社や人間関係に依存するコスト、どちらが大きいかは人それぞれだと思うが、リスクは後者のほうが圧倒的に高いと思う。
最後に、、、
人生をよりよくするための、示唆に富んだ内容だった。こういう内容が、学校や会社で当たり前のように議論できる環境ができれば、一人ひとりの幸福度は高まるし、日本全体の競争力も上がるのではないか。
家庭での子どもとの会話、仕事でのクライアントへの提案にも、取り入れていきたいと思う。