本がくれた、かけがえのないひととき
子供の頃、家のリビングには小さな本棚がありました。その本棚には、家族の誰かが手にした本が少しずつ増えていき、気づけば棚がいっぱいになることもありました。絵本、古典文学、そして冒険小説など、バラエティ豊かなその本棚は、私にとっていつもワクワクする場所でした。
一冊の本との出会いが特に印象に残っています。それは、祖母が誕生日にくれた分厚い本でした。内容は民話や伝説をまとめたもので、ページをめくるたびに異国の物語や昔の日本の風景が目に浮かぶようでした。祖母は、「この本を読むと、知らない場所に冒険に行けるんだよ」と教えてくれました。読み進めるうちに、現実とは違う新しい世界が広がり、私はページの中で様々な物語を旅するような感覚になったのを覚えています。
ある冬の日、学校から帰ると、祖母がストーブを囲むようにしてリビングでその本を開いていました。「今日はどこに行こうか?」と祖母が笑顔で言うと、私はその隣に座り、一緒に物語のページをめくりました。古い日本の民話や、空想の異国の冒険。祖母と交わした会話やそのとき感じた温もりが、今でも心の中に残っています。
その本は今、私の本棚にあります。時折開くと、文字の間に祖母との会話や笑顔が蘇り、まるでまた一緒にあの時のひとときを過ごしているような気持ちになります。本は時を越えて、私たちにかけがえのない思い出や温もりを届けてくれる、大切な宝物だと感じます。
どんなに時が経っても、あの本のページを開けば、子供の頃の私と祖母が、そこで物語に夢中になっている姿が見えるようです。本がくれる小さな冒険は、これからもずっと、私の心の中で輝き続けることでしょう。
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