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姫路おでんて何やねん?
大正時代以前から屋台の煮込み田楽に甘味噌(白味噌)か、生姜醤油をつけて食べていた。
大東亜戦争の頃より播州地方の特に浜手(大きな秋祭りがある地域)では、関東の濃口醤油に砂糖を多めに入れて甘辛くした出汁のおでん「関東煮」(かんとうだき)が出現したという。具材は濃口醤油で茶色くなるのを「よう染んでいる」と喜んで食べた。
そのまま食べると子供にも人気の甘めのおでんで、生姜醤油をかけると大人も喜ぶ味になった。祭りで集まった時に、酒やビールにも合う味だった。
関東煮もおでんなので、おにぎりにも良く合った。
関東煮が一般的になって、屋台も煮込み田楽に甘味噌というスタイルは廃れた。
2006年、姫路のまちおこしとして「姫路おでん」という名称で、コンビニなどでも売られている透明な出汁の日本中何処にでも有るようなおでんが採用された。
透明になった理由は姫路以外から観光に来る人向けの万人受けする関西風出汁を採用したためらしい。
姫路を名乗らず、普通に(どこにでもある)おでんとして売っても違和感ない。
姫路おでんと名乗るのは、生姜醤油を使っているからだった。
姫路市の浜手、白浜町周辺では昔から生姜が多く栽培されていた。
瀬戸内の塩田発祥地である大塩・的形地区もあり、醤油工場も多かった。
姫路の浜手では、濃口醤油と薄口醤油を料理ごとに見事に使い分けていた。
関東煮は浜手では今でも根強い人気で、姫路おでんは受け入れられない人もいるようだ。それだけ関東煮に愛着があるという証。
姫路おでんを「コンビニのおでんやないか」と低く評価する声もある。
大切な食文化を勝手に変えるなよって声もある。
若い世代は姫路おでんにも慣れているので、「どっちでもいいわ」という感じになってきていて、煮込み田楽に甘味噌が廃れたように、関東煮の食文化も姫路おでんに潰されるのかも知れませんね。
関東煮(煮込んで具材が柔らかくなるので、基本的に串刺ししない)
・大根
・じゃがいも
・平天(丸形)または、たこ天
・ごぼ天
・ちくわ
・板コンニャク(赤:唐辛子入りと普通のコンニャク。三角形)
・ゆで卵
・牛すじ(これは串刺し)
大きな鍋で大量の具材を茶色く染み込むまで煮込む
我が家には寸胴と業務用の大きなコンロが有りました。
牛すじはトロトロになるので、固くなくて子供も食べやすくなる。
私もすじ肉は苦手ですが、関東煮のすじは食べられる。
牛すじが苦手な家庭では、カレー用の牛肉ブロックが使われます。
関西は昭和時代、牛肉文化でした。鶏肉も食べました。
売れない豚肉は半額くらいだったため、豚肉を料理(カレー、肉じゃが、すき焼き)に使うと「安モンの肉入れやがって」と批判された。
今では豚肉もよく食べるようになり、牛肉と同等の値段に格上げされたね。
関東煮に竹輪麩、巾着、魚介類、餅、麺類は入れません。
コンニャクは糸コンではなく、板コンを大きめの三角に切って入れます。
シラタキって何ですか?
平成時代になって、巾着やホルモンも入れるようになったのが変化。
関東煮の出汁は家庭・店による
一例
・濃口醤油(デフォルト)
・砂糖(デフォルト)
・削り節
・酒
・味醂
・水
+隠し味
一升瓶数本に出汁を作っておいて、減ってきたら鍋に注いで、味を変えること無く出汁の量を回復させる。
追い出しを作る時も、ラーメン屋の出汁作りのように野菜や牛すじを使う。
一度煮込んだ関東煮の具材も大きなタッパーに分け入れて、冷蔵庫で保管し、鍋に具が少なくなると追加できるように用意する。
浜手の住民も普段は、関西風出汁や味噌煮込み(土手鍋も)、キムチ鍋といった一般的な鍋料理も食卓に出ます。
鍋物で濃口醤油を使うのは関東煮とすき焼きくらいかな。
関東煮は、すき焼きの出汁よりも甘く薄口です。
色は濃いが関東煮の出汁も飲めます。
店では深い鍋で煮込まれており、底に沈んだ数日前の濃イイ茶色のゆで卵を探すのが楽しみでした。