胸熱く息苦しいほどの“劇場版DoctorX”
「私、失敗しないので」。この名台詞で知られ、米倉涼子さん演じる孤高の女性外科医が主人公の医療ドラマ「DoctorX」の劇場版が2024年12月6日から公開され、生と死をめぐる倫理にも踏み込んだ超絶骨太なストーリーに圧倒されてきました。
大好きDoctorX!
大門未知子が登場したのは2012年。以来、木曜夜9時の時間帯に7シリーズにわたり放送されてきました。
西部劇を思わせる一匹狼的な口笛のメロディと、「彼女の武器だ!」という独特のナレーションで冒頭から惹きつけたあと、“シュルルルルッ”“シュルルルルッ”とタイトルが入ってくる極めてカッコいいスタイルに私は夢中になったのです。
そして、大門未知子じゃない医師が執刀していた手術が「危ない!やばい!失敗する!」となったとき、手術室のドアがぶわっ!と開(ひら)き、口笛の旋律とともに美知子が登場すると、来ることはわかっているけどそれだけで感動して涙を流したものです。(水戸黄門的に毎回40分ごろだったかと思います)
医療技術だけでなく組織にも焦点を当てて
ドラマの面白さは、特定の病院にも医局にも属さず、自身の技術を武器に活躍するフリーランスの外科医の高度最先端医療をめぐるリアルさだけではありません。病院長を頂点とする(時には会長?)大学病院組織の権力争い(白い巨塔)や医局の縦割りに割を食ってしまう患者の姿に同情し、医局の壁の間でもがく医療従事者たちの、滑稽でありながら情けなくもある姿にやや共感し、イラつき、さらに改心する姿に胸がすく思いを感じてきました。
「息苦しいほど」の劇場版
その集大成ともいえる劇場版に私は駆け付けました。以下、ネタバレ無しですので込み入った内容はお伝えできませんが、放送されている予告編に沿った形で主に3つにまとめますと。
・美知子の師匠、神原晶さんは倒れ、美知子が泣きすがるほどの容態に。
・今回1人二役の染谷将太さんが“シリーズ史上最大の敵”として登場し、
まさかの事態に!
・手術をめぐる現場「医師免許はく奪されるぞ」「これは殺人行為だ」
というセリフが意味する医療行為とは。
「生と死をめぐる倫理」にも大きく踏み込んだダブーともいえる最後の手術シーンは怒涛の展開で、本当に息苦しさを覚えるほど圧倒されました。見ごたえあります。
さようなら西田敏行さん
今回、大門美知子はドラマよりも、涙をこらえる表情、怒りを爆発するシーンが多く、ユニークなシーンはあまり印象に残ってないのですが(あるんですけど、ほかに圧倒されて)、だからこそ西田敏行さんの滑稽なやりとりとピリッと冷静な独り言が作品全体を引き締めたように思います。西田さん演じる蛭間重勝院長は、院内だけでなく、夜の酒場、神原紹介所の麻雀にも登場し、そのセリフ回しで物語の方向性をきっちりと定めていました。西田さん、お疲れさまでした。
木曜夜を救ってくれてありがとう
劇場版DoctorXにたどり着くまで、この7シーズンは、私が前職のメディア在籍時代に地方局のデスクとして奮闘、葛藤していた時期とちょうど重なります。繁忙の徳島時代、寒さの盛岡時代、コロナ禍の松山時代。それぞれの職場では、ワークライフバランスの一環として、木曜日夜9時前後になると「きょうはDoctorXの放送だからみんな帰るよ~」と呼び掛けていました。すぐに帰れていたかどうか記憶が定かではありませんが。
そして、ついに卒業を決意したことし、2024年の締めに、劇場版が上映されたことには、何か背中を押されたような胸の高まりを感じています。
ありがとう。
さらば大門美知子。さらばDoctorX。さらばあの日の木曜夜9時よ!
(銀河鉄道999のおしまい風に)