CRMツールではなくスプシで顧客情報を管理することの弊害を考えた
こんにちは!クロスコムの本田です。
今回は、CRMツールではなくスプレッドシートで顧客管理することの弊害を考察していきます。
タイトル名から「スプシで顧客管理=悪」の印象を受けた方もいるかもしれませんが、悪とは一切思っておりません。顧客リスト数が少なかったり、スピード優先で顧客情報を共有したいときなど、スプシで管理する方が圧倒的に労力が少ない局面は多分にあります。※詳細や該当事例は他のネット記事で紹介されていますので、本記事では割愛いたします。
今回は自分の身近な事例として、CRMツールで顧客管理した方が良いとは分かっているも、何か理由があって結局スプシやExcelで管理している方を前提に書いていますので、その前提でお読みいただけると幸いです。
1.CRMツールを活用しない理由とは?
最近では、中小企業界隈でもデジタル化への取り組みが進む中、CRM市場はどんどん拡大しています。私の周りでも、すでにCRMツールを導入している企業を見ることが増えてきました。しかし活用状況を聞いていると、「導入してからほぼノータッチ」「導入したけどどう進めればいいか分からない」といった初期段階で躓いているケースも同時に見ることが多いです。
なぜなのか?自分の原体験も含め、思いつくことを列挙していきます。
①CRMより使い慣れたツールの方が取り扱いが楽だから
Excelやスプレッドシートが該当します。表計算ツールとして簡単に顧客情報を行単位で放り込むことができます。
特にスプレッドシートは、クラウド上でリアルタイムにメンバー間で共有できるので、簡単に立ち上げられるかつ、他の業務でも活用しているから使い慣れているという点から、どのメンバーも楽に使えることが要因だと考えられそうです。
②CRMツールと基幹システムとの連携がうまくいかないから
財務管理や会計業務などに使用する基幹システム(ERPなど)が、CRMツールと連携できないもしくは部分連携が限界で、想定通りに連携完結ができないことも考えられます。
CRMは、顧客属性や購買履歴、Webトラッキングなどの顧客情報を一元管理する目的で導入する一方で、基幹システムは、企業のシステム環境を統合するために財務や会計、在庫などの管理を1つのシステムですべて統合を目的に導入します。
CRMと基幹システムを連携することで、タイムリーな購入履歴の確認や顧客への最適なレコメンド配信のフロー構築など、顧客体験向上につながるシステム基盤を構築することができます。しかし、CRMと基幹システムの連携には、コストと工数がかかる上、システムツール次第で一部しか連携できないケースもあるため、想定通りにいかず躓いたままの状態もあるようです。
③CRM導入による費用対効果の説明が難しいから
今でこそ、以前より低価格なCRMツールも販売されているので、CRM活用に対して取り組みやすくなったように感じます。しかし、企業として導入する以上、ツール導入による目的と費用対効果を明確にする必要があります。
目的は説明できると思いますが、費用対効果の説明が難しく、売上や利益やコストといった財務指標を細かく算出するのは、少し骨が折れる作業と私は考えています。
ただ「顧客情報に関する部署間のコミュニケーションコストが減った」「顧客へ自動的にレコメンド配信をできるようになった」など行動面で説明はできるので、その観点で経営層が納得できるか次第だと思います。
④関与者全員でCRMツールに情報を更新しないから
CRM導入による顧客管理には、運用責任者やシステム責任者を配置する必要があります。なぜなら、メンバー間で情報の入力規則が統一されない、またシステム内の仕様を勝手に編集してしまうリスクを回避するためです。
だからと言って、責任者1人で運用するのではなく、関与者全員でCRMツールを活用しなければ顧客情報をリアルタイムで正しくアップデートすることができません。関与者全員で取り決めたルールに則り、全員が顧客ステータスを適切にアップデートする必要があります。
しかし、「更新し忘れてしまった」「面倒で後回しにしている」「毎回都度更新するのが面倒だ」といったように、アップデートし忘れてしまった結果、CRMツールとして機能を果たさなくなるケースも往々にしてあります。
このように、関与者が「更新作業が面倒だ」という認識をもってしまうことが、CRMツールを活用しない理由になっているように感じます。
2.スプレッドシート管理で起こる弊害とは?
ここまで、CRMツールを利用しない理由をいくつか列挙しました。システムとの連携絡みや、費用対効果の説明などさまざまな理由が挙げられますが、それ以前に、慣れないCRMツールに精神的ハードルを感じてしまうところに、活用が進まない根本的な原因がありそうです。
ではここからは、CRMツールを活用せずスプレッドシートで顧客管理していることによる弊害について、なるべく客観的な事実に基づいて考察していきます。
①個人情報保護法への対応が不十分
まず一番に気を付けたいことが、情報管理の面です。個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)は、2005年に施行されてから3年ごとに見直されることが決まっていますが、この個人情報保護法の改正内容が、事業活動に大きく影響を与えています。
それぞれ該当する規則と詳細については、以下の記事で紹介していますが、この記事では管理対策が不十分であることの要点だけかいつまんでお伝えします。
まぁスプレッドシートがそもそも表計算ソフトなので、情報管理に完全対策できている仕様ではないことを踏まえると、そりゃそうだよなという印象です。
②各部署の顧客へのアプローチ情報が閉鎖的になる
セミナーや資料請求をした見込み客へのフォローメールは、例えば営業部署の担当メンバーがフォローしているでしょう。しかし、見込み客を獲得したマーケティング部署は『獲得した見込み客Aは受注につながったのか?集客施策における仮説はあっていたのか?』と、顧客の動向が気になります。
営業部署へ毎回確認するのは手間なので、会社で管理しているスプシで確認すると、セミナー参加or資料請求からステータスが変わっていないことが発覚しました。しかも、スプシでの顧客ステータス管理も、セミナー参加or資料請求⇒商談とざっくりしている(=解像度が低い)ため、商談までの行動履歴や営業のメール配信タイミング、本文の内容が確認できません。
これでは、組織全体としての各部署のアプローチが見えず、顧客の行動履歴やステータスを適切に理解することが難しいでしょう。
一方、CRMツール経由でメールの送信内容や、テレアポの日時、商談記録などを行うと、リアルタイムで顧客1人1人へのアプローチ情報が見える化されるので、関与者全員が共通理解を持つことができます。
③緻密なデータ分析ができない
最近のCRMツールには、BI(ビジネスインテリジェンス)機能やアナリティクス機能が搭載されています。これは、CRMツール内に蓄積された顧客の属性情報や行動履歴、購買履歴などのデータを基に、さまざまな切り口で分析することができます。
一方でスプシは、GoogleのBIツールであるLooker Studioとの連携ができるので、スコアカードや時系列グラフ、表テーブルなどの作成が可能です。
しかし、複数のスプシデータを統合する手間や、そもそも基幹システムとのデータ連携ができないなど、どうしてもデータの分析に制限がかかります。これでは「分析目的が達成できない」「かなり時間と労力がかかる」ので、スプシでのデータ分析は推奨できません。
④コミュニケーションコストが増える
また、スプシでいくら顧客情報を管理していても、もっと細やかな情報を確認したいときに、結局は担当部署へ確認することありませんか?「この顧客、セミナー参加後から商談に至っていないけどなんで?」「なんで商談で失注したの?」などなど。
結局、コミュニケーションコストが増えている現象を何度も目の当たりにしてきましたが、なぜこんなことが起こるのか?これは個人的な見解ですが、「そもそも顧客情報を管理するという面倒な作業を少しでも楽したいから簡易的にしか更新していない」という意識が原らだと考えます。
この「楽したい意識」がある内は、雑な管理になり、かえってコミュニケーションコストが増えるでしょう。また、楽したいが故に適当に作成してしまった記録も、別の部署のメンバーから詳細を突っ込まれて、追加の質問や議論が勃発してしまうでしょう。これでは本末転倒です。
3.特にデータ利活用の面でCRMツールに大きく軍配が上がる
他にもいくつか列挙できますが、それは他の方の優良記事にお任せするとして、私が考えるスプシで顧客情報を管理することの弊害は以上とします。
セキュリティ対策の面でも、スプレッドシートでの顧客情報管理は不十分であることをお伝えしました。しかし私が強く感じていることは、データ利活用の面で特にスプシでの管理は非常に勿体ないということで。
昨今、ビジネスを加速させていく上でデータの重要性は日々増しています。それは、テクノロジーの進化により爆発的に情報量が増えたこと、また顧客の行動変容が著しくなったことで、経験・勘による意思決定が難しくなっているからです。
だからこそ、客観的な事実をもとにビジネスで意思決定するためには、手持ちのデータをいかに利活用できるかが重要になります。ただ活用するのではなく、ビジネスに生かすために利活用することが必要です。
このデータ利活用の点で、スプレッドシートは残念ながら効率が悪く、分析作業におけるアウトプットはかなり制限されるでしょう。その点では、CRMツールに軍配が上がると私は考えています。
では、最後に本記事のおさらいをして終わりにします。
以上です、最後までお付き合いいただきありがとうございました!