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小さな会社ができるマーケティングの全体最適について考えてみた


1.はじめに

こんにちは!クロスコムの本田です。

今回は『小さな会社ができるマーケティングの全体最適』について、自分の考えをアウトプットします。具体的な手法は次回の記事でお伝えしますので、概念的な話として読んでいただけると嬉しいです。

2.【WHAT】全体最適は、継続購入までの導線全体を最適化すること

図1 部分最適と全体最適の範囲の違い

マーケティングの全体最適というと少し難しく聞こえるかもしれませんが、自分なりに解釈すると、少ない予算で最大の売上を生み出すために、認知~継続購入(リピート)の導線全体を最適化することだと考えています。


この『全体最適』の対照的な言葉として『部分最適』が挙げられますが、それぞれの意を辞書で調べると、以下のように明文化されています。

全体最適
経営学用語で、システムや組織(特に企業)の全体が最適化された状態であることを意味する語。一部のみが最適化されていることを指す「部分最適」と対比される語であり、システムや組織の理想像として挙げられることが多い。

部分最適
経営学用語で、システムや組織(特に企業)の一部のみが最適化された状態であることを意味する語。局所最適とも言う。一部(例えば、企業では部署レベル)では最適化されていても、全体としては最適化されていない場合や、かえって負の影響が大きくなる場合もあるとして、一般的には部分最適ではなく全体最適を目指すべきだと考えられることが多い。

実用日本語表現辞典より

なんとなく違いがイメージできると思います。組織全体が最適化されているか、組織の一部のみが最適化されているか、です。


小さな会社がよく展開しているマーケティング活動で例えると、"広告⇒ランディングページ"が導線の全体であり、その中で最適化が完結している状態(=部分最適)と、"広告~購入~継続購入"が導線の全体であり、全体が最適化されている状態(=全体最適)の違いだと、言い換えることができると思います。


もう少し具体的に考えてみます。

3.【POINT】マーケティングは、リードを増やすことだけではない

図2 購入の方程式

3-1.消費者の購入心理は、接触媒体が違えど常につながっている

小さな会社でよく展開しているマーケティング活動では、広告運用担当、インサイドセールス担当、営業担当、カスタマーサクセス担当と、担当者が分業した販売体制をとっています。企業によっては、インサイドセールスと営業を兼任するケースもありますが、広告運用部門とセールス部門においては、分業しているケースがほとんどです。


この分業体制のメリットは、各々の業務にリソースを集中できるので、業務を効率化できることです。その際に注意すべき点は、各部署の担当業務はあくまでマーケティング全体の一部分であることと、認知~購入までの導線全体を把握し役割を理解しておくことです。なぜならマーケティングの最終目的は継続的に売上を作ることであり、リード数を増やすことがゴールではないからです。


図2の通り購入数を方程式にしても、リード数は重要な構成要素であることは分かりますが、商談化率・成約率が上がらなければ購入につながりません。そしてその商談化率・成約率の数値は、広告で獲得したリードの質にも関わってきます。これは、広告⇒ランディングページ⇒商談と接触媒体が違えど、消費者の購入心理は常につながっているからです。

3-2.部分最適の前に、全体最適を。


しかし企業がマーケティングの知見に乏しかったり、そもそもリードの母数自体が少ない状況だと、この導線全体を把握せず、とにかくリード数を増やす『部分最適』に注力することも少なくないと感じています。部分最適で売上が最大化できているのであれば否定しませんが、実際は売上目標を達成できず、頭を悩ましているのが大半ではないでしょうか。


各担当者がマーケティング業務を分業して、それぞれの戦術を最適化したとしても、その最適化が導線全体の最適の一部分として実行できているかは要確認です。消費者の視点でいうと、認知~購入の接触媒体において企業から一貫性ある情報を受け取っているか(情報の整合性に違和感がないか)?を意識し、実務に落とし込まなければなりません。


その『一貫性ある情報』を企業が発信するために、導線全体の最適化を設計する必要があるというわけです。


4.【WILL】全体最適は、予算のムダづかいをなくし、生産性を上げる

図3 全体最適されていないファネルと全体最適されたファネル

4-1.短期利益が捻出できる

この記事で『導線全体を最適化する』という言葉を何度か使っていますが、そもそも導線全体が最適化されていると、どうなるのか?これを表したのが図3です。


メリットはいくつかありますが、まず広告予算のムダづかいがなくなります。注)正確には「ムダづかいが少なくなる」が実体に近しい表現だと思いますが、施策の分析データを改善に充てる発想で考えると、ムダではないと捉えられるので、ここでは「ムダづかいがなくなる」と言い切ります。


部分最適に陥っていたマーケティング活動も「継続購入してくれる見込み客を集めるために、どの施策を打てばいいか」という、導線全体を俯瞰した状態で逆算した部分最適を行うことができれば、消費する広告予算の配分も制作する広告クリエイティブも変わってきます。


つまり購入見込みの高いリードに集中して予算を投下できるので、見込みの低いリードへの広告費が軽減できる上、同等の売上金額を生み出すことができるというわけです。全体最適だけで広告費が軽減できるので、結果的に利益もすぐに捻出できます。小さな会社からすれば、短期利益は喉から手が出るほど欲しいですよね。

4-2.組織全体の生産性が上がる


そしてその広告効果は、商談化率・成約率を底上げする波及効果をもたらします。つまり、組織全体の生産性が上がるというわけです。


見込みの低いリードを営業部門へ引き渡していても、広告予算は掛かるわ、営業の時間コストも掛かるわで、組織全体として無駄なコストが発生し、全体的に生産性が下がってしまいます。


しかし全体最適を設計した上で、広告で集客した見込みの高いリードを営業部門へ少しでも多く引き渡しできれば、少ない商談数で成約数を増やすことができ、結果的に成約率を底上げできます。まさにこの部署間の連携性が『導線全体が最適化された状態』を表しているともいえるでしょう。


5.【HOW】消費者の心理変容を可視化する

図5 クー・マーケティング・カンパニー代表取締役 音部大輔氏のモデルをもとに
自社が少しカスタマイズしたフレーム

では、この全体最適をマーケティング活動でどのように実現するのか?それは消費者のパーセプションフロー(=認識変容)を設計することです。

※このパーセプションフローは、元P&G/クー・マーケティング・カンパニー代表取締役 音部大輔さんの『The Art of Marketing マーケティング技法』に解説されていた独自のマーケティングモデルの名称です。
 個人的にはマーケティングの全体最適をとても上手く言語化し図示されていたので、参考にさせてもらいました。
 あとkindle unlimitedで無料で読めます。すごくないですか、、?


5-1.消費者心理に対する認識が、関与者間でズレていないか?

マーケティング活動の関与者全員でMTGを行うとき、活動成果や課題列挙、ネクストアクションについて議論することがあると思います。またそのMTGでは、議題や各々の発言についてファシリテーターが議事録を作成する、もしくは議事録を作成せずに、営業担当もしくは広告担当の作成レポートをブリーフィングする機会があると思います。


そのようなMTGでよく目にする光景が、営業担当・広告担当それぞれの課題列挙についてヒアリングはするも、消費者がどの接触媒体でどんな情報を受け取り、どう認識し、どう行動したかなど、消費者の心理変容をコトバで可視化していないことです。


あえて私が可視化にこだわるのは、プロジェクトが進むにつれて関与者間で認識に齟齬が起こってしまうリスクを回避するためです。あと個人的には、可視化すると消費者の心理変容が時系列でイメージしやすいので、消費者へ感情移入しやすいという理由もあります。

5-2.表面上の発言や分析数値だけでは、本質的な課題が特定できない

営業部門は実際にリードと対話しているため、リード本人に直接ヒアリングができます。しかし、リードが企業側に本音で感想や意見を話してくれるとも限りません。「思った以上にデザインがダサいな、、」「良い機能なんだけど、自社の課題を完璧には解決しなさそう、、」などのネガティブな要素があった場合、営業担当を目の前に気を遣って伝えにくい感情が働くからです。


一方で、広告・ランディングページでは消費者からすれば企業側の顔が見えない状態なので、素直に興味を持ったポイントを"Webページ上の行動"で把握できます。しかしその行動は、広告のクリック率や、ページ滞在時間、コンバージョン率などの定量的な指標数値からしか分析できず、消費者の顔色や反応を直接確認することができません。


これでは、現行数値の改善を行う際にどこに本質的な課題があるのかを特定することが難しいです。だからこそパーセプションフローを設計することで、仮説立てした消費者の心理変容を可視化し、狙ったリードが獲得できているかを営業部門と広告部門間で答え合わせするんです。

5-3.消費者のパーセプションフローを設計する

このパーセプションフローの設計方法については次回の記事で具体的に書きますが、少しだけお伝えすると、図5のように認知~継続購入の導線全体を自社のビジネスモデルにあわせて埋めていき、ペルソナごとに複数のパターンを作成していきます


あとはMTGで活動結果と照らしわせながら、パーセプション通りに営業部門へリードを引き渡せているか、広告・ランディングページのコンテンツが狙ったパーセプションを誘発できているかを、関与者全員がいる場で確認しましょう。


しかしこのパーセプションフロー通りに営業部門へリードを引き渡しできた答え合わせができたとしても、成約に至らないことも多々あります。なぜなら、競合企業や消費者側の事情など、外的要因が阻害している可能性があるからです。


一方で、消費者課題の設定自体がそもそも間違っていたのか、自社商品では消費者課題を解決できないのか
など、内的要因が目標達成を阻害している可能性があります。なのでパーセプションフローに明確な疑問がなければ、視点を変えて他の原因を探らなければなりません。

6.全体最適のマーケティング活動を当たり前にしたい

以上が、小さな会社ができるマーケティングの全体最適についてでした。

実際に、今私たちが支援している企業様のマーケティング活動でも、関与者がいる場でこのパーセプションフローを活用しています。今は『広告運用⇒ランディングページ⇒インサイドセールス⇒商談⇒成約』の導線1本で構成されている案件が多いので、ご紹介している手順で実務に活用できてはいます。


しかしプロジェクト規模次第で、オウンドメディアやSNSなど消費者との接点媒体が増えると、消費者の思考と行動が推測しづらくなり簡単に活用できないとも感じています。そんな大規模案件になったときにこのパーセプションフローをどう発展させられるかは、これからの自社の課題です。

しかし私はこれまで、広告運用も、LP制作も、MA運用も、SEO対策も、あらゆるマーケティング活動に戦略設計から実行まで、いただいた依頼は断らず支援してきました。それは、私は最適化できているのに、別の接点媒体が最適化できておらず、売上が改善されていない状態に納得できなかったことも理由ですが、それ以上に、私に知見がないから支援できない状態がもっと嫌だったからです。


マーケティング活動において分業体制が当たり前になっている時代だからこそ、全体導線を最適化するには、私自身が身を以て各部署の実務を経験し、最適化できるスキルセットを持ち合わせておくべきだと考えています。これはエゴではなく、クライアントの目標達成を他人に100%依存しないようにするためです。


ということで、これからも全体最適のマーケティングが当たり前になるよう、現場で日々鍛錬を積み発信していきます。


以上、最後までお付き合いありがとうございました。

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