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【ホンのシネマ】『侍タイムスリッパー』で“今”の幸せを噛み締める

すでに観てから1ヶ月ほどたってしまっていますが、『侍タイムスリッパー』を今更ご紹介です。
たまたまその日、radikoのタイムフリーで聴いていた東野幸治の「ホンモノラジオ」で紹介されていて(正しくは、リスナーの方からの投稿で)知り、その日のうちに観てきました!
改めて思いましたが、私のエンタメ情報は東野幸治氏と佐久間宣行氏でできている・・・。(助かっています)


▶︎アイデア次第で低予算でも良い作品はできている

さて、まずは実際に観に行って正解だったことをお伝えしたい!
観に行っていない方、迷っている方は映画館で上映している間に観てほしい。

かなり低予算のインディーズ映画と聞いていますが、確かにエンドロールでは監督始め、何役も掛け持ちして頑張っている方の名前が多数お見かけします。
だからと言ってそこまでチープには感じられず(もちろん、ある程度のチープさはありますが)、キャストの方はじめ、裏方の方の工夫や単純にスタッフ個人個人のマンパワーでのりきった作品なんだろうなあと思いました。

ちなみに主役の山口馬木也さんは、インディーズ作品であるこちらの映画に出演した理由は、“脚本が良かったから”とのこと。
おそらく、ギャラもそこまで高くなく、しかもインディーズ作品ということはヒットする可能性も低い。
それでもプロの役者さんが「出たい」と思える脚本とは一体どういったものなのでしょうか?


▶︎ケーキひとつで今の幸せが証明される

実際に、作品を観てみて私なり思ったこととは・・・。

ストーリーはというと、幕末のお侍さんが雷で現在の時代劇撮影所にタイムスリップしてしまって、“切られ役”として活躍するお話。(もちろんこんな単純ではありませんが)

とにかく、タイムスリップした先が時代劇の撮影所なんて、まずその設定が素晴らしい。
だって、袴にちょんまげの役者さんなんて、そこらじゅうにいるんです。
そこに本物が紛れ込んでしまっても、「あいつ、実際にちょんまげしているなんてマジで気合い入ってるな」で済んでしまうんですよ。
オフィス街にタイムスリップしてしまったら、それこそかなりの変態じゃないですか。

戸惑っている主人公・新左衛門もしれっと現在に馴染んでいくのも、この設定があるからこそ。
現代にタイムスリップしてきた新左衛門がお世話になるお寺で初めてテレビを見て、かなり感情移入しているシーンが好き。
ケーキに感動しているところが特に。
ケーキを一口食べてそのおいしさに感動し、この美味しいものを現代では一般的に買うことができてみんなが食べることができていると知って、「こんないい世の中になって・・・」と泣くところがジーンときました。

会津藩士だった新左衛門は、登場シーンでは藩命で長州藩士を討つところから始まっていたのですが、おそらく末端の藩士。
それでも純粋に、この世の中を良くしようと思って活動していたと思われます。
それがまさかのタイムスリップしてしまって、幕府が倒されてしまった。
でも、苦しんでいた庶民はもういなくて、こんなに美味しいケーキとやらも庶民の手に入る生活になっている。
本当に日本は豊かになったんだなあ。
そう思って涙する新左衛門を見て、もう好きになるしかないでしょう。

当たり前のように今ケーキを食べている私ですが、ひいおじいちゃんくらいの時代には(いやもっと最近の第二次世界大戦の頃だってですが)、食うや食わずの生活があったわけです。
単純に昔の人が今の文明にびっくりして、それを面白おかしく表現するだけの脚本だったら、ここまでのヒットはなかったでしょう。
なんだか私はこの一言で、「ああ、この脚本は良い。主人公はただ現代にやってきた過去の人ではなく、より良い未来を思い描いた愛すべきキャラクターだ」と受け入れることができたのでした。
ほんの一瞬、コミカルなシーンの間に入っていましたがいちばん心温まり、記憶に残ったシーンです。


▶︎時代劇や斬られ役へのリスペクトと愛情

作品全体を通じて、時代劇へのリスペクトと強い愛情を感じました。
すでに斜陽産業になっていることは、時代劇にかかわす全ての人が口にしています。
全盛期にはすごい数の撮影が行われていた撮影所は今はそこまでの仕事もなく、今更【斬られ役】になりたいという新左衛門に苦言を呈する人も出てきます。

【斬られ役】という言葉を聞いたのは、もうかなり昔のこと。
確か、テレビのワンコーナーで紹介されていた程度のことだけど、とても有名な斬られ役の福本清三さんの紹介でなんとなく頭に残っていました。
その頃でももう、仕事としての【斬られ役】はもうかなり減ってきているということはおっしゃられていたように思うけど、それから10年以上経つ今では、テレビで時代劇を見ることはさらに減ってきています。
そりゃ【斬られ役】の仕事も減っているのでしょう。

それでも、今後時代劇を見たいと思ったし、時代小説も読みたい、そう思わせてくれた作品でした。

『侍タイムトリッパー』公式サイト



▶︎読み返してみたい時代小説とタイムスリップもの

『侍タイムスリッパー』を観た後、もちろん時代劇も見たくはなったけれども、とにかく時代小説を読みたくなった。
新しい作品に出会いたい気持ちもあるが、昔読んでいた本を読み返したい。

⚫︎『剣客商売』シリーズ 池波正太郎 著

主演の山口馬木也さんが、ドラマシリーズで息子の秋山大治郎役で出演されていた原作本。
池波正太郎先生の文章はとても読みやすく、とにかく食事が美味しそう。
印象深いのは7巻の「決闘・高田の馬場」。
初めて東京の高田馬場駅に降り立った私は、(ここであの乱闘が・・・!)と興奮してしまったのを覚えている。
東京はいまだに時代小説の地名が残っている場所もあって胸が高鳴る。


⚫︎『壬生義士伝』浅田次郎 著

昔、夢中になって読んだ本。
電車の中で通勤中に読んで泣いてしまった。
この頃、幕末モノを色々読み漁ったけど、1番心に響いた。
南部、桜、雫石、おもさげながんす・・・などなどのキーワードがいまだに思い出される。

『南部盛岡は日の本一の美しい国にでござりやんす。西に岩手山、南には早池峰山。城下を流れる中津川は桜の馬場の下で北上川に合わさって、まさに、まさに絵に描いたような美しき国にござりやんす。』

『壬生義士伝』浅田次郎 著

ことあるごとに吉村先生は地元についてこう自慢していた。
自分の故郷をこのように表現できるのはなんとも羨ましい。
いつか行ってみたいと思えるセリフでした。


⚫︎『どこかで誰かが見ていてくれる 日本一の斬られ役・福本清三 』福本 清三/小田 豊二 著

斬られ役といえばこの人・福本清三さん。
興味はあったものの本は読んだことがなかったのでこの機会にチェック。
中古でしかなさそうだけど、手に入ったらぜひ読んでみたい。


●吉川英治 電子全集5 Kindle版 吉川英治 (著), 日本文学電子全集編集委員会 (編集)

Kindle Unlimitedで何かないかな〜と探していたら、吉川英治全集を発見!
5巻は宮本武蔵です。実は読んだことないので、これを機にチャレンジしたい。


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