
夏の日の不思議な体験(小学生の時に書いた物語)
夏休みのある日、小学生だった僕は、2階の自分の部屋で昼下がりの時間を過ごしていた。
窓から差し込む眩しい日差しと、ミーンミーンと鳴き続けるセミの声。壊れたクーラーの代わりに、頼りない扇風機が生ぬるい風を送っている。
蒸し暑さに耐えかねて、ぼんやりと天井を見つめていた僕は、いつの間にかうとうとしていた。
「なりー!ごはんよー!」
階下から母さんの声が聞こえてきて、ハッと目を覚ました。
けれど、何かがおかしい。
声を出そうとしても出ないし、体がやけに軽い。
目を凝らして周囲を見回していると、足元がやたらと速く動いているのに気づいた。
「なんだこれ?」と思った瞬間、鏡に映った自分の姿を見て凍りついた。
茶色い体に無数の細い足。
僕は、ゴキブリになっていたのだ。
「なり?どこに行ったの?」
母さんが階段を上がってくる音が聞こえた。
床が揺れるように感じるのは、僕が小さくなったからだろう。
巨大な影が部屋に入ってきた。
「あら、ゴキブリ!」母さんの目が僕に向けられた瞬間、冷や汗がどっと噴き出した。
「ちょ、ちょっと待って!僕だよ!」
と心の中で叫ぶも、もちろん母さんには通じない。
次の瞬間、母さんはスリッパを手に僕を追いかけ回し始めた。
「やめて!やめてくれ!」
必死に逃げ回る僕。しかし、スリッパの一撃が僕に命中し、意識が途切れた。
目を覚ますと、僕は畳の上に寝転んでいた。
窓からは相変わらず眩しい日差しが差し込み、セミの鳴き声が響いている。
「夢だったのか?」額の汗を拭いながら階下に降りると、母さんが話しかけてきた。
「さっき大変だったのよ。2階でゴキブリが出て、スリッパで叩きつぶしたの。」
「え?」
僕は目を見開いた。
2階で寝ていたはずの僕が、ゴキブリとして追い回された夢。
いや、本当に夢だったのか?
頭が混乱した。
あの夏の日の体験が、いまだに頭に残っているのが不思議で仕方がない。
上記内容は、20年前、小学生だった僕が原稿用紙5枚以上に書き上げた物語です。
記憶の中の断片を頼りに、今こうして再び書き起こす日が来るとは思わなかったです。
最後までつたない物語をお読み、いただきありがとうございます。