【超初心者向け!】蛍光分子の吸光スペクトルと蛍光スペクトルの見かた
蛍光色素をネットで検索していると、
こういうグラフが必ず出てくる。
このふたつの山は、
左が吸光スペクトル
右が蛍光スペクトル
といって、蛍光色素の特性を表すグラフだ。
でも慣れてないと、
このグラフが何を意味してるか、
ぜんっぜん分かんないと思う。
そこで今回は、主に生物学を学ぶ人向けに、このグラフの意味と使い方について、ゆっくりと説明してみたいと思う。
分かりにくさの正体
このグラフの何が分かりにくいって、
左の山と、右の山で、
縦軸の「意味」が違うのだ!
この、違うっていうのは、
「縦軸は「体重」だけど、左右の山でスケール(目盛)が違う」
とか、そういうことじゃない。
つまり、たとえば、
左の山の目盛はキログラム
右の山の目盛はトン
とか、そういうことじゃない。
縦軸の意味が違う。
つまり、たとえば、
左の山の縦軸は体重
右の山の縦軸は身長
を示してます!
とか、そういうことだ。
分かりにくいにもほどがある。
(専門的には、こういうのを左右の山の「次元」が違う、といったりする。)
普通、こういうグラフを描く時は、左右に違う軸を描いて、縦軸の意味が違うことを示すものなんだけど、
吸光/蛍光スペクトルの場合は、
「もうみんな分かってるよね?」
ってことで、そういう軸が描かれていない。
なので、慣れない人には本当に分かりづらいグラフになっていると思う。
このグラフの意味
さて、
それじゃこの左右の山が実際には何を意味しているかというと、
左が吸光スペクトル
右が蛍光スペクトル
を表している。
つまり、
[左の山]
蛍光分子に、
いろんな波長の光を当てて、
それぞれの波長で光がどれぐらい吸収されたか?(吸光度)を測ったグラフ。
山が高いほど、光がたくさん吸収されることを意味している。
[右の山]
蛍光分子に、
ある波長の光(励起光)を当てて、
出てくる光(蛍光)の強さをいろんな波長で測ったグラフ。
山が高いほど、強い蛍光が出ることを意味している。
実にややこしい・・・
むしろ、このグラフをどう使うのかを考えた方が、分かりやすいかもしれない。
このグラフの使い方
このグラフは、
「うちのラボにある機械で、この蛍光分子が測れるのか?」
「測れるにしても、どんな設定で測ればいいのか?」
を判断するのに使う。
まず、吸光スペクトル。
蛍光分子は、
励起光を吸収して、
そのエネルギーを変換して、
蛍光として放出する。
ということは、なるべく山の高いところの波長で励起してあげると、たくさんのエネルギーを吸収できるので、明るく光るのだ。
そして蛍光分子はなるべく明るく光ってくれたほうが、実験がやりやすい。
例えば、吸光スペクトルと、青、緑、赤のレーザーの関係がこうなっていたとする。
そして、あなたのラボの装置(フローサイトメーターとか、顕微鏡とか…)に、青いレーザーしかないとすると・・・
上のグラフを見ると、
この蛍光分子は、
青い光をあまり吸収しない。
つまり、
この蛍光分子は、
青い光ではあまり強くは励起されない。
なので、
「こりゃ、ほとんど光らないだろう」
「測れそうにないな…」
と分かる。
または、ラボの装置に青、緑、赤の3種類のレーザーがあると、どれを使えばいいか迷うことになる。
そういう時に吸光スペクトルを見ると、山のピークに近いのは緑だから、
「緑レーザーがよさそう…」
と分かるんだな。
次に、蛍光スペクトルを見てみよう。
蛍光を測定する装置には、検出器の前に「フィルター」っていうパーツが入ってる。
フィルターは、特定の波長の光しか通さない。
検出器の前にフィルターを置くことで、測りたい蛍光以外の余計な光が検出器に入らないようにしてるんだ。
今、あなたのラボの装置に、
A: 510 ~ 550 nm
B: 600 ~ 640 nm
C: 660 ~ 700nm
(nm: ナノメートル)
の3種類のフィルターがあって、蛍光スペクトルとの関係がこうなっていたとする。
どのフィルターを使うべきだろうか?
この場合、蛍光の山のピークに一番近いのはBだから、
「Bのフィルターがよさそう…」
と分かるわけだ。
吸光スペクトル、蛍光スペクトルのグラフは、こんなふうに使う。
それでもグラフの意味は分かっておこう!
どうだろう?
グラフの使い方は、そんなに難しくないと思う。
でも今回は、
「蛍光色素を1種類しか使わない場合」
しか考えていない。
今どきの実験では、蛍光色素を5種類、10種類使うこともあるし、なんと20種類とか使うこともある!
そんな超難解なケースを考える時、グラフの意味もちゃんと理解しておかないと、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
一度は「意味」も分かっておいた方がいいと思う。